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大樹の影には  作者: 稲葉 鈴


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16/23

11-2.納品しに錬金術師のギルドに行こう

 ボドワンの町の錬金術師のギルドの、バルテレミーさんが、僕に依頼がある、という。


 師匠に、ならわかる。けれど駆け出しの僕というのはちょっとびっくりだ。びっくりだけれど、依頼してくれるというのならば受けたいところだ。


 いくらなんでも、無理なことは言わないだろうし。



「この町には、初心者向けのダンジョンがあるのは知ってるな?」

「うん、この間クロード君たちから聞いた」

「そこと、もう一つのダンジョンに挑む冒険者が主体である以上、初級と中級傷薬の水薬がそれなりの数必要なのも分かるな?」

「ああ、そういうこと」

「そういうことだ。月に百ずつお願いできるか」

「塗り薬はいいの?」

「そっちは都度の依頼って形になるな」



 塗り薬は、メイン購買層はおかみさんたちだという。だから冬場の方が売れ行きがいいそうで。



「中級はどういう人たちが買うの?」

「そっちは工房だな。あっちのほれ、レッドフォールロードの方が、色々工房集まってるだろ」

「そうなんだ」



 レッドフォールロードと呼ばれている地区は赤レンガの街並みだ。それ以外は、茶色いレンガを使って家を建てている。


 その赤いレンガのある辺りは、工房街なんだという。



「油が跳ねたとか火傷したとか腕切ったとか、まあ色々使い道はあるな。たっぷり塗って綺麗な布を押し当てて、それでもだめなら教会だ」

「なるほど」



 傷を治したりするのは、教会の司祭様の仕事であるという。ちなみに魔法を使って治す場合もあるけれど、そうじゃなくて医療を使って治す場合もあるという。僕には違いがよく分からないし、バルテレミーさんもうまく説明できないようだった。なのでこの話はここでおしまい。


 だって知りたいのは協会の司祭様のことじゃなくて、中級傷薬の塗り薬のことなので。


 塗り薬はどっちもたっぷりと量があるから、一回買うとしばらく持つ。で、終わりそうになったら買い足す。水薬と違って即効性はないけれど、その代わりお家の戸棚でも長持ちするから、ギルドとしてもあまり在庫を持ちたくないそうだ。


 持ち込むんだけど。この後中級傷薬の塗り薬を。五十個。



「お前は在庫について気にする必要はない。他の町に回すだけだからな」

「あ、そうか」



 錬金術師のギルドが定期便を出している、というのを今聞いたばかりだった。それはそうだ。ボドワンの町で多いなら、他の町に回せばいいのだ。



「あとまあお前は知らんだろうから教えておくと、普通はそんなに一気に作れないのよ。お前さんの使っている手鍋に一日一杯作れればいい方だ」

「そうなの?」

「そうなんだよ。エルフと違って、他の種族はそんなに潤沢に魔力はないんだ」



 粉にした薬草を水と混ぜる時、少しずつ魔力も一緒に溶かして混ぜる。この魔力の量が、僕たちエルフは桁違いなんだという。


 まあ、一回以上人生終えてるわけだから、その上限は上がってるだろうな、と思う。


 師匠ですら、貝から(しん)になって、それからエルフに成っているのだし。僕は木からトレントになって、エルダートレントを経てからのエルフなので、ちゃんと大人になったら、師匠より魔力は強くなるのかもしれない。


 今ふと思っただけで、よく分からないんだけれど。



「あれじゃあ、普通の錬金術師には、月百個とか依頼しない? お鍋とかめちゃくちゃ高価じゃない?」

「よく気が付いたな。そうなんだよ」

「え、バイエの工房でお鍋代とか稼いでから帰るって、結構な日数いることになるんじゃない?」

「まあ一泊二日で稼ぐ金額じゃないわな」



 やらかしたのではないか、とちょっと思うけれど、僕がエルフであることは隠してはいない。隠していないのだから、まあ出来ない方が問題なのかもしれない。


 でも師匠、そういうことを教えておいてくれるべきだったんじゃないだろうか。もしかしたら師匠も知らない可能性あるのか。


 あの師匠だから、忘れてるだけの可能性もあるけど。



「あ、だから、錬金術師の保護」

「まあそういうことだな」

「安心しろ、アルバン」



 こっちの話が聞こえていたのだろう。冒険者ギルドのブレソールさんが話に入ってくる。



「この町でお前に危害を加えるような奴は今の所いないし」

「いまのところ」

「いたとしても古参が全力で止めにかかるから安心していい」



 引退した冒険者は、町のあちこちにいる。ブレソールさんだってそうだ。あと確か、パン屋の親父さんもそうだって聞いた気がする。



「冒険者ってのはな、駆け出しのやんちゃ坊主以外は、錬金術師の偉大さをよく分かってる。命を救われた奴だって少なくない。だから俺たちは、お前たちをちゃんと守るんだよ」

「うん。よろしくお願いします」



 きっとその時冒険者を助けたのは駆け出し錬金術師の僕じゃないけれど、いつか僕が作った傷薬が、未来の英雄を助けるかもしれないわけだ。


 世界はそうやって回っているのだと、おじさん二人が頷いていたので、僕もよく分からないなりに頷いておいた。


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