(4/5)ルートを探す
壁面の大型モニターに現在の状況を模した画像が表示される。右端にこのデータセンターのサーバー。左端に攻撃者であるマイダス。左から右に10本以上の長い矢印が向かっている。
小鹿美咲がコンソールで操作すると矢印の先に防護壁が表示される。到達した矢印で防御壁が消えると素早く小鹿美咲が追加する。小鹿美咲は途中からAIによる防御に変えたため、手を動かす事は無くなり画面を注視している。
「あらら、少しヤバいかなぁ〜」と白鳥チーフが画面を見てつぶやく。
「頼みますよ、白鳥さん」法務省側の担当者はもう泣きそうな顔をしている。
「いやぁ、使っているAIの性能差がそのまま戦況にでてますね、ははは」
小鹿美咲が今度は手を動かし先程までとは違う複雑な防御壁の構成を作る。こちらでは全体像が見えているが攻撃者側からは、その防御構造は見えていないはずだ。
その時、また電話がなった。
『ミサキ。何か面白い防御壁を作ったみたいね。でも、こちらが構造を把握出来ないだろうと思ってたら甘いわよ。今、攻略ルートを解析中だからあと5分くらいで終わりよ!!』
大型モニター上の矢印がグネグネと蛇のような動きをして、防御構造の中に少しずつ侵攻していく。
「やばい、やばい、、」
法務省担当者の語彙力が極端に低下している。
子鹿美咲は手を止めている。ただ電話は繋いだままだ。
『あら、ミサキ。もう諦めたの?もう直ぐ終わりかな。サーバーに到達したらデータを流出させる指示をマイダスに与えているから最後は一瞬よ』
「駄目です、駄目です。もうシステムの電源を落とします!」
担当者が叫ぶが、白鳥チーフが担当者に落ちつくよう肩を叩く。
ポンポン。
それと同時に矢印がサーバに到達した。
「あーー」担当者が放心したように声を漏らす。
サーバからデータが全方向に飛び出していくような表示が大型モニターに現れた。担当者が頭抱えて、床に両手をつく。
モニターを見た白鳥チーフが初めて真面目そうな口調で言う
「そう言う事ね。うん、日本のサーバは全く大丈夫だから安心して。だよね、子鹿ちゃん」
「ルートを示す案内板を書き換えた」と小鹿美咲がボソッと言った。
『ウソ、ウソ、ウソ』
繋ぎっぱなしだった電話の向こうから焦った様な声が聞こえ、通話は突然切れた。
「どういう事なんですか?」
担当者はまだ状況がつかめていない。
「相手はサーバに到達するための最適ルートを探して攻撃してたんだけど、その上位にあるルートの案内板を子鹿ちゃんが書き換えてたのね」
「だと、どうなるんですか?」
「子鹿ちゃん、目標地点をどこにしたの?」
「アメリカの内務省のサーバ」
「え?」
担当者はまだ事態をつかめていない。
「マイダスはアメリカの内務省のサーバに到達し、そこのデータを全世界にばら撒いたのね。ははは、僕、もう知らない」
白鳥チーフは一人だけ笑っていた。




