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第55話 このネタで暫く『マネージャー』を揶揄えそうだな

「という事でこちら、スカウトした百山さんです」


「ももも百山あいりです! 秋田がら詐欺さ引っかがって出でぎましだ! よろしくおねがいするす!」


「どういうことなの???」



 ホログライブさんでの仕事が終わり、数時間後。スカウトしたてほやほやの女の子を連れて事務所に戻ると、出来る女上司像にマッチするコーヒーの飲み方を研究していたアキコさんがハテナマークを浮かべてそう尋ねてくる。


 彼女の視線は、初めて顔を合わせたギターケースを背負った東北訛の女の子、百山さんに向けられている。まぁ事前にそろそろ新人のスカウトをしたいって言っていたとはいえ、なんの報告もなくいきなり当人を連れてきたんだ。アキコさんがぽかーんとするのも頷ける。


 ただこれには説明しづらい、結構深いわけがあるんだよなぁ。しかし社長に求められたなら説明しないわけにはいかない。百山さんの恥になる部分もあるため許可を貰い、一つ一つ、順を追ってアキコさんに彼女をスカウトした経緯をお話しした。


 まず、ホログライブさんでの仕事を終えた俺は一度ホログライブさんの事務所に戻る事になった。ここからスタートが良いだろう。理由は機材セッティングの時に鞄を置いて作業してたんだが、帰る時にこの鞄を忘れてしまったからだ。イタリアンレストランで解散した後にまたホログライブさんの所に戻るのはちょっと恥ずかしかったが、鞄を置いていくわけにもいかないからね。


 そしてホログライブさんの事務所前にたどり着いた俺は、事務所前に積み上げられた段ボールと、それを背景にビルの警備員さんに怒られている百山さんと蜂合う事になったわけだ。ビルの警備員さん、激おこだったな。まぁビル前に引っ越しの荷物積み上げられたらそら怒るか。



「ええと。つまり、この子はホログライブさんの関係者って事?」


「そう思い込んでた可哀そうな新手の上京型詐欺被害者です」


「えぇ……」



 俺の言葉にやっぱり意味が分からない、とアキコさんが首をかしげる。まぁ、言いたい事は分かるというかどこに住んでてもネットで繋がってるこのご時世にまだ詐欺で騙される子が居るなんて、と思ったのだが話を聞くとこれがまた結構えげつない手口だった。


 百山さんは去年高校を卒業した後、大学に進学せずに農家を営む両親の手伝いをしていたのだが、学生の頃から趣味で配信を行っており、Vタレにも強い興味を持っていた。何度かホログライブさんやハチジクジさんのようなVタレ企業の面接も受けた事があるらしいのだが、どうしても訛を隠せなくて毎回落ちてしまっていたらしい。


 そんな百山さんが何故上京してきているのかというと、ホログライブさんの名刺を持った人物が直接会いに来て、スカウトされたのだそうだ。しかも、実際に居る人の名刺で、その人はその時期に秋田に出張していたという事実もあるそうだ。



「ええと、つまり、それは、本物じゃないの?」


「本物じゃないから詐欺なんですよ。ご本人が本社に居たので俺もご一緒して会ってきましたけど、百山さんをスカウトに来た人とは全然別人だったそうですよ」


「ごめん。私の理解を超えるわ。簡潔に説明できる?」


「憶測が混じりますけど、ホログライブさんの営業の名刺を持った人が地方で配信をしてる子に粉かけてお金を巻き上げてるみたいですね。彼女も衣食住の初期投資だと200万ほど。彼女も事前にホログライブさんの方に事実確認の連絡を取ってたんですが、その連絡を確認した担当さんもその人物は居ますとしか答えてくれなかったらしくて」


「…………」


 俺の言葉を聞いて、アキコさんは斜め上に視線を向け、口を開けて現実逃避を始めた。これは「アキコちゃんよくわかんなーい」という時の表情だな。大体10秒ほど現実から逃げた後、アキコさんはくいっと手に持っていた冷めたコーヒーを飲み干して、ダンッとテーブルの上にカップを置く。



「詐欺じゃない!」


「詐欺って言ってるじゃないですか」


「え、これ警察に連絡した方が良いんじゃない? というかホログライブさんはどうする気なのこれ」


「警察にはホログライブさんの方から連絡入れてます。営業さんの行動予定まで知ってるっぽいからその線で調査を進めるらしいですよ」


「……それ、内部犯行の可能性があるってこと? それだと、大事じゃない」


「もしくはハッキングかなにかで情報を抜かれてるかですが、まぁその恐れもあるんで向こうは今、大変なことになってます。それで、彼女なんですが」



 アキコさんが状況を認識した所で、話を元の位置に戻す。俺とアキコさんの会話を黙って聞いていた百山さんも気が気じゃなさそうだったから、そろそろ安心させてあげたいというのもある。まぁアキコさんならスカウト云々がなくても数日はうちのマンションに。場合によってはみきちゃんみたいにスタッフとして雇用してくれるかもしれない。



「詐欺被害者とはいえ彼女とホログライブさんとの間にはなんの契約もないわけで、彼女は被害者って立場だけで宙ぶらりんな状態になってるんですよ」


「ああ、そう。そうなるわね。うちで面倒見ましょう」


「話早すぎません???」


「? だって、一也くんがスカウトしたいって思ったんでしょ? スタッフとしてじゃなくてVタレとして。なら間違いないでしょ」



 どう攻めるか迷っていた所で真っすぐストレートで殴り返された。気分としてはそんな感じだろうか。話が速すぎて百山さんもついていけてないみたいだが、慣れている分いち早く正気に戻った俺はペコリとアキコさんに頭を下げる。うちのワンマン社長は一度決めた事はよほどの理由が無ければ覆さない。この時点で少なくとも、百山さんが路頭に迷う事は無くなった。



「それじゃ彼女の荷物を2階の空き部屋入れちゃいますね」


「ええ。あ、そういえばあそこ暫く掃除してないかも」


「なら、暇してるスタッフ一同で顔合わせがてら掃除しちゃいましょうか」



 まだ展開に追いつけてない百山さんを尻目に、俺とアキコさんとの間で着々と彼女の受け入れの準備が進んでいく。これがVVVって会社だから慣れてくれ。たぶん今後ずっとこの調子だから。


 これでこれから業務提携という形で付き合っていくホログライブさんに貸しを作る事が出来るし、百山さんという人材をゲットする事も出来る。一石二鳥ってのはこう言う事を言うんだな。


 特に、百山さんは。素晴らしい、としか言えないほどに、最高の結果だと言える。ギターケースを持った後ろ姿を見た瞬間、普段はレンタルしてても滅多に表に出てこない『マネージャー』が思わず出てきて、警備員さんに謝る声を聴いた途端に体の操作権を奪い取りやがったくらいには、彼女は逸材だと言える。


 まぁ、『鬼畜クマ野郎』の気持ちも良く分かる。彼女、『電脳歌姫ろっくんろー』の相棒に立ち振る舞いがよく似てるんだよな。『マネージャー』は彼女との二人三脚で頂点へ立った。その相棒の面影がある彼女を、放っておけなかったんだろう。このネタで暫く『マネージャー』を揶揄えそうだな。



山里一也(男)25歳



視聴履歴

『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)

『煉獄列島』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)

『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』(料金30000円)

『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『天災科学者』(料金:ひなちゃん家のご飯)

『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『未来を知る者』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)

『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『もう一人の俺』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)

『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生』(料金:組織)

『魂羽織』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『至高の人形師』(料金:人形作成・開発費)


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