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第5話 「すまねぇ、もう一晩泊めてくれぇ!」

「ワッハッハッハッ! 酒がうめーなー!」

「メンちゃん、良い飲みっぷりだねぇ!」



 『煉獄列島』をレンタルしてから三日目。初日に大金を手に入れた俺は三日三晩の豪遊を行っている。おっちゃんと酒を飲んだ後はそのまま風俗街に行って風俗を梯子し、意気投合した風俗嬢の家にお持ち帰られをして、起きたら家主の風俗嬢と一緒に昼から酒が飲める店に行き、他の店が開いてくる時間になったらそちらに行って酒を飲み、風俗嬢が仕事に行ったら別の風俗店を回ったり。兎に角飲んで遊びまくった。


 坂東メンチの身体はいくら酒を飲んでも全然酔わず、飲めば飲むだけどんどん酒が入っていく。最初の内はどの店の店員も止めてくるんだが、いくら飲んでもケロリとしている俺を見てやがて俺が飲む姿を楽しむようにすらなっていった。まぁ、こんだけ飲んで現金一括払いだからな。店側としては暴れたりしなければありがたい客だろう。


 今のお店は新鮮な刺身料理を出す居酒屋で、日本酒は料理に合わせて出てくるタイプのお店だ。本来は酒量は抑えめになるんだがどんだけ飲んでも顔色も変えない俺に店主が面白がり、でっかい盃を持ってきてそれに酒をどくどくと流し込んで渡してきた。飲めるかと聞いてきたので当然のように飲み干すと店主は膝を叩いて喜んで俺を褒めたたえる。



「悪いなメンちゃん。これ以上はうちの酒蔵がオケラになっちまう」

「構わねぇよ旦那ぁ。他のお客に美味い飯と酒かっ食らわせてやってくれ! 俺もそろそろ財布が寂しいからよ!」



 とはいえ、お店にも俺の財布にも限界はある。この辺りの良さそうな店は大体回れたし、そろそろ当初の予定を思い出すべきだろう。『まだ飲み足りねぇ』って気持ちはあるが、やる事やってから酒を飲んだ方が気持ちよく酔える筈だ。


 さて、一先ずの金策のつもりが三日も潰れちまったからな。とっとと不動産会社に金を積んで良さげな物件を借りなければ。金があれば保証会社を間に挟むことも出来る筈だし、物によっては即日入居や来週入居ってのも可能だろうし。


 そういえば今は幾ら残ってるんだったかな。さっきの店で50万くらい使ったけど、多分同じくらいは残ってる筈……………………






「すまねぇ、もう一晩泊めてくれぇ!」

「あっきれた! 三日で全財産無くしちゃったんだ!」



 どうにもおかしい事が起きている。一昨日には700万あった財布の中身が、何故か初日と同じ5000円になっているのだ。狐につままれたような表情で初日に宿を貸してくれた風俗嬢、あきこちゃんの家に行き、事情を説明すると彼女は呆れたように笑って一泊する事を許してくれた。


 懐が大きい。おっぱいも大きい。この子はもしかしたら擬人化した女神様なんじゃなかろうか。おっぱいも大きいし。正直今夜は野宿を覚悟してただけに非常にありがたい。


 やっぱり坂東メンチの顔がイケメンだからだろうな。元の俺もそこまで不細工って訳じゃないけど、坂東メンチはそのままモデルやってても問題な誘うなくらい顔立ちが整ってる。まさに格が違うって奴。風俗に来た客から居候にジョブチェンジするなんてのは※ただしイケメンに限るって注釈がつくレベルの裏技だ。ただイケただイケ。


 ただイケのお陰で今夜の宿を確保できたは良いが、金がないのは結局変わりない。どうすっかなぁ。明日は土曜だから地方競馬もやってないし。中央競馬の方で一勝負するか。でも、そうなると移動費もなぁ。



「でもギャンブルでしょ? そんなに儲かるものなの?」

「んー、人によるかなぁ。俺、霊感ってやつ? があるからさ。どの馬が強いとか勝ちそうとか、そういうのがなんとなく分かるんだよね。『趣味で拝み屋もやってんのよ、俺』」

「へー……私も興味あるかも。ね、明日けいばじょう? まで一緒に行かない? 私もやってみたーい♪」



 なんて悩んでいた所に、あきこちゃんからありがたい申し出がくる。まさかのスポンサーゲットだ。当然断る理由はないので承諾し、あきこちゃんといちゃいちゃしながら夜を過ごして次の日の朝、俺たちは電車を乗り継いで府中競馬場へと向かった。


 競馬場に入るのは初めてだとおおはしゃぎするあきこちゃんを宥めたり一緒にはしゃいだりしながら馬券を買い、観客席でジュースを飲みながら観戦することしばし。



「いけー! いけいけピンクちゃん! そこだーぶっ倒せー!」

「倒すのはダメだよあきこちゃん。あ、ピンクスカートが一着確ったな。5-1-9で36倍返し」

「やったー! ピンクちゃんやったよ! って、え? 36倍? 私1万円で馬券かったけど20倍って36万円だよ」

「36万円だな。大分堅い馬券だったからなぁ」

「36万円だよ!? やったーグッチのバック買おっかな!」



 5Rを終えるころには、あきこちゃんは立派な競馬好きギャルへと変貌していた。まぁ、賭けたお金が何倍にもなって帰ってくるのを何度か経験したらそうもなるだろう。


 俺の方も移動費が浮いた分勝負に出せる金が増えたため、堅実に毎レース増やしていって現在手元には120万ほどが入ってきている。未勝利戦は結構おいしい馬券が拾えたりするからな。明らかに他より強いのに5番人気の馬なんてのが居たりするんだ。


 あきこちゃんには霊感だなんだと適当ぶっこいたんだが、坂東メンチが霊能力者なのは間違いないしやたらとギャンブルに強いのももしかしたら霊感的なものが本当にあるからかもしれない。どの馬が強いか本当に分かっちゃうからガンガン的中してるんだよね。


 まぁ、強い馬が必ず勝つって訳でもないから何回かに1回は外れたりもするけど。それがギャンブルの怖い所でもあり楽しい所でもある。とはいえ勝率が高い事には変わりないためとんとん拍子に持ち金を増やしていく。



「本日のメインレースは圧倒的一番人気が存在する銀行レース。倍率1・5倍はすげぇな」

「ねぇ、メンちゃん。これってこのアカガミスキーってのを買えばいいのかな?」

「……本当はそれが良いんだけど、ちょっと面白い馬がいるなぁ」



 圧倒的一番人気はG1も勝利しているアカガミスキーという馬で、実際に遠目から見ても明らかにこいつは強いってのが分かる風格を持っている。だもんで本当ならこいつを軸に3連単と行きたいんだが、今回のレースに関してはもう一頭。ビンビンに霊感に囁いてくる奴がいる。


 見た目は決して強そうに見えない白い馬体の馬。名前はシロノマキバオーという昔に漫画みたいな名前の馬。人気は13番人気で、過去のレースの実績もそれほどない。普通なら帯にも含めない馬なんだが、俺の直感が普通の次のレース、こいつが来ると言っている。


 なら、『ここで直感と心中するのも面白い』だろう。



「アキコちゃん。次、俺の買い目は真似しないで良いからね」

「え……メンちゃん、この馬全然人気ないよ? 大丈夫なの」

「わかんね。でも、ビンビンに感じるんだよねぇ」

「あー、アレだ。霊感が囁いたとかいう奴だよね! じゃあ私も乗っちゃう!」

「えー、責任とれねぇぞ?」

「いいよいいよ! それでも100万円くらい儲かっちゃったし!」



 シロノマキバオーとアカガミスキーを軸にした馬券に有り金を突っ込む。どうせあぶく銭だ。ここで消えるのもまた運命って奴だろ。あ、来年の税金は……まぁ来年の俺が頑張るか。


 そんな俺の買い目を見たアキコちゃんは面白がって俺と同じ買い目に持っている半額を突っ込む。ただのロマン馬券になるかもしれないのに躊躇なくぶっ込めるのはギャンブラーの素質があるな。ここまで来てなんだが、もしかしたら俺はギャンブル中毒者を一人作ってしまったのでは。い、いや。今は競馬も大分人気が上がってるし、たまたま興味を持たせただけだ。うん。


 さて、そんな葛藤をしている間にも時間は進み、本日のメインレース。重賞という事もあり会場内のボルテージも高まる中、ほとんど一強で決まりだというレースは予想外の熱狂に包まれる事となる。


「『あっと大外から一気! シロノマキバオーだ! 先頭集団をごぼう抜きにしてシロノマキバオー! 先頭アカガミスキーまであと2馬身、1馬身! 並んだ並んだそして抜き去ったシロノマキバオー強い! 強い! まさかの伏兵シロノマキバオーが先頭で今ゴールイン!!!』」


 ラジオから流れる実況が怒号によってかき消される。人の声で建築物が震えるほどの声、声、声。そのほとんどが怒鳴り声であるのは圧倒的一番人気が二着になった影響だろう。僅かに漏れ聞こえる喜びの声も、恐らく複勝でシロノマキバオーを入れていた奴の声だ。13番人気だからな。俺とアキコちゃんが勝ったせいで若干配当が落ちてるがそれでも結構な配当が来るんだろう。



「来た……来たきたキター! メンちゃん、シロノマキバオー! シロノマキバオーだよ!」

「ああ、やっぱり来た……来たなぁ!」

「え。私110万円かけてたからええと」

「一点掛けじゃないから分散してるんだ……ええと、アキコちゃんの馬券だとこの組み合わせで10万円だから3連単で配当3200倍の3億2000万だね」

「さんおくにせんまん」



 俺の言葉にアキコちゃんの顔から一切の表情が抜け落ちていく。金額の桁が理解の外に行ってしまったのだろう。気持ちはわかる。俺もここまでの高額配当をぶち当てたのは初めてだからな。『そうなるんじゃないかと思っちゃいたがなぁ』。まぁ、腰が抜けそうだよ。一生かけても稼げない金額が俺の手の中にある。その事実にブルりと体が震えるのを感じる。


 呆けたアキコちゃんの手を引きながら払い戻しの窓口に行き、大口専用換金所に券を手渡すと中から「ハァッ!?」という声が聞こえてきて、少しした後。震える声で少々お待ちくださいと中の人から券を渡された。


 そして大体2時間ほど待たされ、もう夕方になるという段階で待合室のような場所に呼び出された俺たちは、「あの。なにか袋のようなものとか、車を用意した方が良いと思うのですが。もしくは、銀行振込など」と言ってくる多分お偉いさんだろうなという職員の言葉に頷き、とりあえず2000万は手渡し。残りは銀行振り込みでという事でアキコちゃんの銀行口座に残りを入れてもらうように頼む。俺が持ってる口座は、山里一也名義のものしかないからな。今手持ちの身分証と名前が違うって言われるのが怖かったんだよ。


 その額、総額12億。日本の競馬史上、最高配当額だそうな。色々と話を聞きたいと言われたのだがアキコちゃんが現世に戻ってこれないため「この状況なんで」と説明し、今日は帰る事に。


「じゅうにおく」

「うん、うん。一晩ゆっくりしようか」

「じゅうにおく」



 壊れたようにそう繰り返すアキコちゃんを小脇に抱えて競馬場の前に居るタクシーに乗り込む。競馬場付近で嫌な目付きの連中がこっちを見ていたから、帰りはこのまま豪勢にタクシー帰りだ。


 うし、『アキコちゃんを家で降ろしたら風俗にでも行くか』。流石に二千万はすぐには溶けんだろ。うん。




――――――――――――――――――――――――――――――

山里一也(男)25歳


視聴履歴

『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(料金10万円)

『煉獄列島』(レンタル期間7日)


10話までは毎日更新。それ以降は不定期です。

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