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第45話 全然仕事減ってないわ

『おぉ~! すごい! すごいよ一也くん!』


『作ったのはオレだっつーの!』


『うん、素晴らしい出来栄えだ。見事な腕前だよ、ザンム』



 魂羽織の作成に入り1週間。休みが終わる最後の日に、ようやく二体の魂羽織が完成した。『九十九あきら』と『リリーベル・リ・ラスティーネ』そっくりな2体の魂羽織は彼女たちの意識を羽織って、まるでそこに二人が生きているかのように本当は『かすが』の分も作りたかったんだが、材料の問題と実作業の時間を考えてこれが精いっぱいだったのだ。


 さて、これだけ時間をかけて作った2体の魂羽織だが、出来栄えはというと『残夢』曰く『微妙』らしい。



『本当なら自衛能力をつけねぇといけないんだが、まぁ、今回は時間もないし材料もなぁ。家畜の骨じゃなくて魔物の骨とかならもっと親和性の高い骨子を作れたんだがよぉ』


――ああ。そういえばお前の世界、バリバリ魔物とか出る感じの世界だったな



 職人気質というべきだろうか。求めていたプレミアムレンタル権者の身体になるという部分は全く問題ないのだが、『残夢』としてはもっと性能を高める事が出来ただろう、という点が非常にお気に召さないらしい。


 ただ、動物の血肉や骨を主材料としている割に全く生臭さを感じないし造形まで本人そっくりに整えられているのは、そっちの知識がない俺から見てもとんでもない技術だと思うんだけどね。



『いんや、その辺は人形師だったら誰でもできる技術だ。どんな素材を使おうと魂の器が作れなきゃ人形師は名乗れねーし、魂の器が作れる技量がありゃ形を整えるのは朝飯前よ』


――その割にお前とか他の人形師が作る人形は物々しい形してないか?


『魂羽織ってなぁ目的に沿った形に整えられてっから魂羽織なんだよ。オレの身体はオレが思い描く最強の男として作ったからこれで良ーんだ』



 どこか自慢気にそう言う『残夢』の身体は、筋肉を模した装甲に複数のギミックを詰め込んでいる戦闘用のボディだ。まぁ、元々そういう目的で作ってるんだから形がイカツいのは当然なんだろう。見た目の割に体の動かし方は人の肉体とほとんど変わらないし、なんなら普段よりも力も器用さも上がってるから動きやすかったりする。お腹も減らないしね。


 初めて人以外の身体をレンタルしたから最初の内はビビったが、人型だからか違和感はすぐに無くなった。まぁ、流石にこの姿で外は出歩けないからレンタルする際は注意が必要だけどな。






『たっだいまー!』


『アキコ、迷惑をかけたな』


「あ、お帰りなさい。ご家族の方、大丈夫だった?」


『ああ、まぁ、問題はないとは言わんが無事片付いたよ』


『リリー、あきら。荷物運ぶぞー』


「あ、メンチくんもお帰りなさい!」



 二人分の魂羽織を用意した所で時間切れになりそうだったため、今回の人形作成はここで終了だ。『あきら』と『リリーベル』のために作られた魂羽織は製作者の『残夢』には微妙扱いをされているが、二人の意識を羽織って数時間動くことが出来る優秀な器だ。これ以上の稼働時間にするにはどうしても素材の問題があるらしい。


 稼働時間として考えると『さやか』のラ○ドールよりちょっと長い程度なんだが、そもそもアレは300万かけて職人が1月かけてじっくり作った作品だからクオリティは非常に高い逸品だ。それに対して豚一頭に匂いに引き寄せられた小動物数体で2体分、しかも1週間で2体作ったんだからタイパ・コスパで考えると圧倒的と言えるし、そもそもここが完成という訳でもない。


 製作者である『残夢』としてはまだまだ改良点はあるが、時間を考えて一先ず基礎を固めた段階らしく、プレミアムレンタル権を取得した後は他の人形の製作と共に徐々に改良を重ねていって完成を目指すそうだ。



『オレにとっても興味深い仕事だからな。オレへの報酬は人形作りで構わねぇぞ! あ、後は材料費とかだな。この世界の素材を色々触ってみてぇ』


――オッケー。こっちとしても願ってもない



 『残夢』との契約は非常にリーズナブルな結果となり、今回の為に借りた貸家は『残夢』の工房として引き続き借り続ける事になった。とはいえ新しい身体を一から作るには2,3日はどうしてもかかるし『かすが』の場合はリモートワークでもそれほど問題がないため、暫くの間はこの世界で用意できる素材の吟味と『あきら』や『リリーベル』の身体の改良が『残夢』の仕事になるだろう。



『親和性が高けりゃもっと長く体の中に居続けられるはずだ。まぁ、色々素材を試してみるよ』



 出来れば一日丸ごと継続して体を操れるようになれば楽なんだが、それは『残夢』曰く非常に難しいらしい。親和性と彼女は何度も口にしているが、この親和性が低いと魂羽織を動かす際にエネルギーが外に漏れ出て稼働時間が短くなってしまうのだという。このエネルギーが完全に無くなったら魂羽織は解除され、人形から意識が剥ぎ取られて俺の身体に戻ってしまうそうだ。


 人前でそんな事にならないようにタイマー的な物が付いているが、夢中になったら我を忘れてしまう『あきら』には注意が必要である。



「とはいえ……大分スケジュールが楽になるなぁ、これ」



 『残夢』の加入により、『あきら』と『リリーベル』の配信は本人たちに任せられるようになり、これによって俺のスケジュールは随分と楽になった。まぁ人形に意識を羽織らせるって手間は増えたが、それだって数分の作業だ。


 新しい作業として『残夢』による魂羽織の改良というものが入ったが、これに関してはタイミングが自分で選べる上に改良が進めば進むほど『あきら』と『リリーベル』の稼働時間が長くなる可能性が高いのだ。進めば進むほどスケジュールが楽になるんだから最初さえ我慢すれば良い話である。


 つまりこれからの俺は朝夕は『かすが』の仕事をこなし、週2で『あきら』として機材の調整と開発を行い、週1くらいで『メンチ』としてアキコさんのストレス発散に付き合い、余った時間で『残夢』として魂羽織の改良に勤しみ、たまに『リリーベル』として脂ぎったおっさんどもに靴にキスをされる日々となるわけだな。うん。


 速く魂羽織を改良しよう。全然仕事減ってないわ。



山里一也(男)25歳



視聴履歴

『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)

『煉獄列島』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)

『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』(料金30000円)

『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『天災科学者』(料金:ひなちゃん家のご飯)

『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『未来を知る者』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)

『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『もう一人の俺』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)

『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生』(料金:組織)

『魂羽織』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『至高の人形師』を取得しました(料金:人形作成・開発費)


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