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第46話 ボケとツッコミと可愛いが居れば最強

『おほ~! これは、なんて、えっちぃ!』


『お? おお? 分かるのかお前! うんうん、この曲線がなぁ』


――何やってんだお前ら



 『あきら』と『リリーベル』の人形が完成し、『さやか』含めて3人が俺から独立して動けるようになった。これによって2人分のスケジュール調整が可能になり自分が使える時間が大幅に増える結果となったのだが、新しく人形開発・改良という仕事が増えて結局仕事量自体は変わっていないため俺は相変わらず忙しい。


 ただ、この人形開発・改良は進めれば進めるほど俺の自由になる時間ややれることが増えるから頑張りどころと言える。そのため、現在は毎日人形師である『残夢』と一緒に自室の一部に開発用の機材を置いて素材の吟味をしているのだが、今日はこの人形開発に1人追加で混ざってきた奴がいる。


 我がVVVの技術開発を一手に担う若き天才、『九十九あきら』である。



『いやー、一也くんにはまだ分からないかなぁこの造形美が! うぅん、このプリンっとしたむしゃぶりつきたくなる丸みだねぇ……!』


『極まったフォルムには色気が宿るもんなんだ。人形師の世界じゃ常識だぜぇ』


――そんな常識、知りとうない



 そう言って『あきら』と『残夢』は、『あきら』が持ち込んだとあるアニメに登場するロボットのプラモデルを舐めるような視線で眺めている。人型ですらない四脚のロボットなのだが、こいつらの目線で見ると非常に色気があるんだとか。


 こんな状況になったのは、研究のために『残夢』がこの世界の人形について調べようとしたことに端を発する。人形を開発・改良するために『残夢』は『さやか』のラ○ドールも見ているのだが、自分とは全く異なる情熱を持った職人の技術に『残夢』が触発されたのだ。当然その情報は俺の中でプレミアムレンタル権者間の共有事項となり、そこに『あきら』が食いついた形になる。



『それならロボット! まずはロボットでしょう!』


『ろぼっと? なんだそりゃ』



 『あきら』は近未来のロボット工学が専門の学者だから、こうなるのはまぁ当然だったのかもしれない。『残夢』の世界はSF交じりの和風ファンタジー世界だからロボットと言われてもピンとこなかったらしく、じゃあという事で『あきら』が用意したのが今回持ち込まれた四脚歩行型作業ロボットのプラモデルである。


 この四脚歩行型作業ロボットが登場するアニメはロボットアニメの分類ではかなりリアルよりに近いもので、人型のロボット兵器に乗り込んで戦う近未来の戦争がテーマの作品なのだが、『あきら』は主人公機などではなく作品内で登場する作業用ロボットが大のお気に入りらしい。


 まぁ気に入ってる理由がちょっと設備があれば作れそうだし『あきら』から見てもこのロボットは実用的に見えたからなんだが、兎も角自分のお気に入りのロボットのプラモデルを持ち込んだ『あきら』はこのロボットのお気に入りポイントを力説し、それに興味を持った『残夢』と二人でワイワイとあーでもないこーでもないと騒いでいるわけだ。


 それはまぁ、良いんだけれどね。魂羽織には時間制限があるから、そろそろ『あきら』は強制解除されるしタイマーもなってる筈なんだが全然気づいてないっぽい。人形を作った時の懸念がモロに出てる形だな。『残夢』も夢中になってて全然体の操作権を返してくれないしこっちの声ももう届いてないし。


 うん、早めに人形の改良自体はした方が良いな、これ。今回は俺の部屋だから良いけど、事務所でこれやっちゃったら大変なことになってた……あ、『あきら』が落ちた。






『いやー、失敗しちゃったんだよねー最近! 話しが分かる人がいるとつい! 夢中になっちゃうからさー!』


『君の失敗は割とドギツいのが多いんだから、気を付けろよ?』


「へー。あきらちゃんの失敗ってどんなものがあるの? やっぱり研究とかかしら」


『うーん。夢中になって寝食忘れてぶっ倒れる、という感じかな』


「あ。凄いイメージ通りだわ」



 『あきら』と『リリーベル』が自由になる時間が増えるという事は、VVVとしては配信を増やすチャンスでもある。今までは同時に存在できなかったためあんまり仲が良くないのでは、なんて言葉もあったため、VVVではそれらのマイナスイメージを払しょくするため『あきら』と『リリーベル』、それにお目付け役としてアキコさんも交えた3名で学生組が居ない昼間に雑談配信をすることが多くなった。


 立体投射技術で事務所内全体で配信が出来るため、ソファに座ったり作業用の机に座ったりなんなら仕事をしながらだったりと様々なパターンで配信されるそれらの雑談は、仕事をしながらイヤホンだけで配信を聞いている層に好評らしく結構な同時接続数を稼いでいたりする。コメントも同時接続数に比べてあまり多くないし、毎日やってるからほとんどラジオみたいな使われ方をしてるんだろうな。


 『あきら』と『リリーベル』はVタレになる前からの知り合いという事が周知されているから、話題は『あきら』の過去のやらかしとかそういうのが多い。まぁ、このやらかしは過去というか俺がレンタルを開始した後に実際に起こした出来事や、『九十九あきらは終末世界を諦めない』作中で起こしたことなんかをオブラートに包んで話しているので結構非常識な事がバンバン話題にされるんだが『あきら』ならそっか、くらいのノリで流されている。


 一番真面目に対応してるのがアキコさんかもしれない。毎回「えっ(ドン引き)」とか「はぇ!?」とか言ってて可愛い反応を返してくれるから、ながら聞きしてる連中も今面白い事が話されてると分かってコメントが増えたりしている。


 うん。この3人のトリオは中々良い塩梅かもしれないな。ボケとツッコミと可愛いが居れば最強ってお釈迦様も言ってるし。


 そんな昼間のゆるい配信の中で、そのコメントは流れてきた。



コメ:(英語)九十九あきら博士。博士が提唱した理論に重大な欠陥があると英国の科学誌で取沙汰されていますがご存じですか?(500$)



 投げ銭付きでそう投げ込まれたコメントは、新しい厄介ごとの空気を孕んでいた。



山里一也(男)25歳



視聴履歴

『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)

『煉獄列島』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)

『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』(料金30000円)

『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『天災科学者』(料金:ひなちゃん家のご飯)

『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『未来を知る者』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)

『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『もう一人の俺』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)

『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生』(料金:組織)

『魂羽織』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『至高の人形師』(料金:人形作成・開発費)


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