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第44話 『魂羽織』

 アキコさんへの誤魔化しげふんげふん。事情説明は特に問題なく終わり、1週間ほどの時間を手に入れる事が出来た。視聴者への説明はちょっと早めのお盆休みって感じでいい加減実家に帰って来いと言われた『あきら』に付き合って『リリーベル』も暫くお休みという事になる。



『ほーん。それで、オレの人形が欲しいって事か』


――ああ。俺たちの状況的に、お前の作る魂羽織が一番合うと思ったんだ


『なるほどねぇ』



 休みを勝ち取った俺たちはその足で矢場杉不動産へ赴き、隣県の人里離れた場所にある曰く付きの貸家を紹介してもらった。人形作成にはあまり人が多い場所は好ましくないと思ったからだ。田井中さんには式神作成などの作業用に人目を気にしないですむ場所、と要望を伝えてあるから、それほど勘繰られる事はない筈。多分。


 曰く付き物件の曰くは借りてすぐに『メンチ』に強制解決してもらい、物件の清掃や家具の運び入れなどで準備を整えた後、俺達、というよりは『あきら』と『リリーベル』は休みに入り、その足で隣県の貸家に入る。ここからは時間制限があるから、急ぎめになる。


 運び込んだ家具に腰を下ろし、長時間視聴の為に用意したコーラとポップコーンをテーブルに開ける。さて、久しぶりの趣味の時間だ。


 今回選んだアニメは『魂羽織』。魂を羽織ると書いてたまはおりと読む作品だ。この作品はその名の通り、魂羽織と呼ばれる人形を作る人形師たちが己の作り上げた最高傑作に自身の魂を羽織らせて戦う超能力バトル物だ。魂羽織にはそれぞれの人形師たちの特色が現れており、銃器まみれの魂羽織もあれば全身が刃で出来た魂羽織もあったりする。



『刃じゃねぇよ。あれは全身を刀で作ってるんだ。刃と刀を同じに見るな。それは、アレを作った刃羅ばらの矜持を踏みにじる』


――ん、そうか。すまん



 俺の思考にそう苦言を呈するのはこの『魂羽織』の主人公であり、また主人公が生前に作成した魂羽織でもある『人形残夢』(ひとがた ざんむ)だ。第一話冒頭で『残夢』は他の人形師に襲撃を受けて自身の魂羽織である人形を動かす事も出来ずに生身を失い、自分の魂羽織に魂を羽織らせる事で意識を保つことに成功した。


 『魂羽織』はこの『残夢』が何故自分は襲われたのか、誰が自分を狙ったのかを解き明かしていくのがストーリーの根幹部分にあたり、後半では最初期から『残夢』に味方してくれていた恋人が実は黒幕であったり、自分が殺された理由がその黒幕にとっても予想外な点であったりと中々展開を読ませてくれず最後までハラハラとさせてくれた。うん、中々良い作品だったな。



『当たり前だい。オレが主役を張ったオハナシが面白くねぇわけないだろうが』



 俺の感想にそんな言葉で『残夢』は答え、へん、と小さく鼻で笑う。男勝りで勝気なところが他の人形師とぶつかる事もあるが、魂羽織を作る人形師としては作中でも屈指の才能を持ち、また激しい気質ではあるが基本的にカラっとした性格のためぶつかった相手ともすぐに打ち解ける事が出来る。この性格であれば、割と問題児ばかりのうちのプレミアムレンタル権者たちともうまく付き合う事が出来るだろう。


 惜しいな。ああ、惜しい。これで性別が男だったら、『メンチ』と並んで気安い付き合いが出来たかもしれないのに。



『あぁん。女がオレっつうのに文句があんのかい』


――いいえ。むしろ、ありだと思います



 オレっ子はいついかなる時だって尊重すべき概念だ。後はお胸が大きければ文句がないんだが、残念なことに人形師が作る魂羽織は基本的に自分と異なる性別をベースに作る事になるため『残夢』の身体は男型のものだ。


 いや、これもTSと考えれば良いのか。いや、しかし。



『気色悪ぃ事考えてんじゃねぇよボケ!』


――あ、はい


『しっかし自分が使う以外の魂羽織なんてなぁ。考えた事も無かったが、面白いかもしれねぇな。ただちょっと勝手が違うからよ。何度か試させてもらうぜ?』


――その点は問題ない。材料とかはどういうのを用意すれば良いんだ?


『そうだなぁ……どういう用途で作るかで結構変わってくるんだが、出来るだけ生身に近づけるって事だと生き物の骨や肉は必要だな』


――人を生贄にするのは駄目だからな?


『やるわけねぇだろうが!』






 新しくレンタルした『残夢』と心温まる会話をしたあと、早速俺たちは材料の調達に移った。生ものに近い質感を得るならやはり生ものが良いという事なので最寄りの牧場に赴き、そこの主人と交渉して豚一頭を丸々購入。やはり金。金は全てを解決する。


 まずはこれを元に人形を作る事になるが、もちろんこれだけでは人間一人分にはいろいろと足りてない。人と同じような造りにする方が親和性が上がるため、まずは豚を解体して骨を取り出すことが必要になる。



――人里離れた場所でよかった……


『まぁ、街中じゃこんな事できねぇよなぁ。体格的にはクマが寄ってきてくれたら楽になるんだが』



 『残夢』は魂羽織の武装の一つであるのこぎりを使ってビニールシートの上で豚を解体した後、取り出した骨を器用に削ったり肉に付いていた筋を使って繋げたりして人間の骨組みのようなものを作り始めた。その過程で血の匂いに惹かれたのだろうイタチをサクッとやったりして材料をつぎ足していき、大体1日ほどで人間大の骨組みが完成する。



『この骨子が大事なんだ。外装なんてどうでもいい。魂を受け入れられる器が出来なきゃこいつは魂は羽織れないただの人形になっちまう。逆にここが上手くいけば、この状態でも魂は羽織れる』


――そう言いながらも自信ありそうだな


『当たり前だ。オレが失敗するわきゃねぇだろうが』



 俺の言葉に自信満々な様子で『残夢』は答えた。俺が見ている分にはただ骨組みを作っているだけに見えたんだが、『残夢』曰く骨子を作りながら器の調整も行っており、それはどうやら上手くいったらしい。


 であるならば話は早い。まずはこの状態で誰かが人形に入ってくれれば動作確認は出来るわけだ。


 とはいえ、まぁ。



――早速試してみたい人ー!


『嫌だ!』


『私もさすがにこの状態は嫌かなー!』


――ですよね



 今回、体が欲しいと言っていた『あきら』と『リリーベル』は二人そろってこの丸見えどころか骨まで見えてる体を嫌がり、結局ガワがある程度出来るまで上手く動くかの確認は出来なかった。この二人の態度に『残夢』は不満そうだったが、まぁあんな骨と筋だけの身体には入りたくないわな。



山里一也(男)25歳



視聴履歴

『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)

『煉獄列島』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)

『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』(料金30000円)

『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『天災科学者』(料金:ひなちゃん家のご飯)

『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『未来を知る者』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)

『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『もう一人の俺』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)

『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生』(料金:組織)

『魂羽織』(レンタル期間 1週間)


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