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8話 初クエスト

 

 武器や道具などを揃えた翌朝。早速、簡単なクエストを受けてみることにした。


 ちなみにあの後は、手頃な宿泊費の宿屋に泊まった。この宿屋は、事前に宿泊費を払っておけば、長期間滞在可能とのことだった。そのため、とりあえずおよそ5ヵ月分の宿泊費を支払った。


 生活が落ち着いたら、ちゃんと自分の家を探そう。


「さて、ギルドに行ってみるか」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 ギルドに着いた俺は、早速掲示板へ向かい、クエストを探すことにした。


「どれにするかなぁ」


 現在の俺の冒険者ランクはGランク。そのため、Fランクまでのクエストしか選べない。当然ながら高ランクのクエストほど達成報酬は大きい。俺としては普通に生活できる分が稼げればよいので、なるべく安全で、ある程度稼げるクエストを探すことにした。


「あ、ヨミヤさんおはようございます。早速クエスト探しですか?」


 どのクエストにするか悩んでいると、背後から声をかけられた。


「あ、受付のお姉さん。おはようございます。仰る通りクエスト探しですね」


「最初は悩んじゃいますよね~」


「そうですね、まさに今悩んでました。……というか受付にいなくていいんですか?」


「いや~今日は冒険者少なくて暇なので大丈夫です」


 緩いなオイ。


「それにしてもヨミヤさん。もう武器や服を揃えたんですね~。やる気満々じゃないですか」


「まぁ生活が懸かっていますので。………………お、これなんかいいな」


 お姉さんからやる気を過大評価してもらいながらクエストを探していると、ちょうど良さそうなクエストを見つけた。


「ポーション材料の薬草入手か」


 報酬額は入手した薬草の種類と量に左右されるみたいだけど、これなら命の危険も少なそうだ。


「あ、それにしますか? でしたらこのままあちらの窓口で受け付けますよ~」


「じゃあ、お願いします」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「こちらがポーションの材料になる薬草の種類が記載された資料です。入手した薬草はこちらの袋に入れてギルドに提出してくださいね」


「ありがとうございます」


 こういった資料を貸し出してくれるのは非常にありがたい。


「薬草が生えているのはリグル森林です。森林の奥に行くほど危険な魔獣が生息していますが、結界が展開されているので、安心してください」


「…………誤って結界内に入ってしまった場合は?」


「結界内に入るには、事前に申請が必要になります。Cランク以上しか申請できないので注意してください。申請無しや申請許可が下りなかった場合は、結界に自動的にはじかれて中には入れないので大丈夫ですよ!」


「なるほど、それなら良かったです」


 その条件ならば「気づかないうちに結界内に入ってしまった」などというポカは避けられそうだ。


「あ、ただし、先日Cランクの魔獣が結界外に出現したとの報告がありました。現在原因調査中で結界に問題がないことは確認されてますが、一応ご注意してくださいね」


 恐らくホーン・ボアのことだろうか。なんかカイルさんが奴のことを「Cランクの魔獣」とか言ってた気がする。現時点では原因不明というのは少し怖いなぁ。見つけたらすぐに逃げよう。


「了解しました……気を付けます」


「注意事項はこんなところですね。それでは、ヨミヤさん。頑張ってくださいね!」


 お姉さんは笑顔でそう言って送り出してくれた。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 というわけで、やってきましたリグル森林。


 俺は早速、薬草採集を開始した。


「う~ん、この辺にはあんまり無さそうだなぁ」


 貰った資料を見ながら探してみるが、今のところ対象の薬草は見つからない。


「もう少し奥に行ってみるか……」


 とりあえずもう少し森の奥の方を探すことにした。奥に行くほど、危険な魔獣が生息しているとのことだったので、気を付けながら進もう。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 森の中を歩くこと約10分。


「おお!あったあった。結構生えてるな」


 やはり奥に来て正解だったようだ。クエスト対象の薬草が辺り一面に生えていた。薬草回収用に貸してもらった資料を確認すると、この辺りに生えている薬草の説明の横に星が一つ書かれている。どうやらこの星は薬草の希少度を表しているようである。ちなみにこの資料の中では、星3つが最大評価である。


「いやぁ豊作だな、これは」


 この時点で、回収用袋の半分以上が埋まった。星1つとはいえ、これだけ回収すればそこそこの報酬を期待してもいいのではないか。


「もうちょっとだけ奥に行ってみようかな」


 そう考えて、森林のさらに奥に向かおうとしたとき


「………なんだ?」


 進行方向奥の草むらが揺れ、何かが現れた。


 そいつは豚のような見た目をしていた。だが、体の色が緑色であり、目が真っ赤であり、牙が見えていた。どう見てもただの豚ではない。恐らく魔獣だろう。


「逃げるか……いや、でも」


 受付のお姉さんが言ってた結界にはまだ到達していないので、低ランクの魔獣だろう。冒険者である以上、今後はこのような魔獣との戦闘は避けられない。


 であれば………


「戦いに慣れておく必要があるよなぁ」


 この間のホーン・ボアのような魔獣は無理でも、目の前の魔獣くらいなら勝てるかもしれない。というか、勝てないと今後厳しいだろう。


「よし!やるだけやってみるか」


  こちらが戦闘を決めたのとほぼ同時、目の前の(仮称)魔獣豚がこちらに襲い掛かってきた。


 しかし、速度はそれほどでもない。


 買ったばかりの剣を構え、十分に引き付けてから魔獣豚に対して右上から左下に思いっきり斬りつけた。


 顔を斬りつける形となり、魔獣豚は苦しみながら息絶えた。思ったよりも上手くいった。


 正直あまりいい気分ではない。魔獣とはいえ、動物を殺すのにはやはり抵抗がある。この間のホーン・ボアについては、無我夢中だったので、あまり意識していなかった。


「これに関しては、数をこなして慣れるしかないな」


 溜息をつきながら呟いていると、正面から何やら複数の視線を感じた。


 何だろうかと視線を感じた先をよく見てみると……


「ウソだろ……」


 そこには十数匹の魔獣豚が俺を睨んでいた。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





「ハァ…ハァ…ようやく全部倒せた……」


 結論から言うと、何とか全滅させることができた。


 しかし、当然無傷とはいかず、何か所も身体を噛まれてしまった。牙が深く食い込んだ箇所もあり、めちゃくちゃ痛かった。


「大量にポーション買っといて正解だったな」


 思ってた以上にポーションの回復効果が高いこともあり、現在では身体の傷はほとんど癒えている。さらに少々高価なポーションについては、なんと疲労回復の効果もあった。マジでポーション優秀だな。


 想定外の戦闘だったが、おかげで魔獣を殺すことに抵抗感が無くなった。数こなしたら本当に慣れましたね。


「あ~、今の戦闘で少し腹減ったな」


 傷や疲労はポーションで癒せたが、空腹は流石にどうしようもない。もう少し薬草採集を切り上げるつもりだったので、携帯食の類は持ってきていない。一度街に戻ろうかな。


「いや、待てよ」


 しかし、ここであることを思いついた。


「こいつらって……食べられないのかな」


 目の前には、今しがた激戦を繰り広げた魔獣豚たちの死骸が転がっている。もしもこいつらが食料として食べることができるなら、食費がかなり浮くかもしれない。


「試してみるか」


 もう異世界に染まりつつあるのか、あるいは空腹に多少頭が支配されているのか。日本にいた頃ならこんな考えは浮かばなかっただろう。


 ともあれ、俺はこの討伐した魔獣豚を食べてみることにした。


「ええと、たしか丁度いい魔道具を買ってたはず……お、あった」


 流石に生で食する勇気は無いので、先日購入した「火を発する」魔道具を使用することにした。見た目はかなりデカめのマッチ棒のようであり、マッチでいうところの火が点く楕円の部分にキャップのようなものがついている。これを外すと、自動的に火が点くという仕組みだ。


 というわけで、周辺の木の枝を集め、火を点けた。その後、同じく木の枝で公園にある鉄棒のような物を作り、そこに魔獣豚をぶら下げて、20分ほどじっくり焼いてみた。


「このくらいで良いかな」


 ある程度火が通ったことを確認し、いざ実食。


「いただきます」


 剣で魔獣豚の身体の一部を切り取り、かぶりついた。


「………………………あぁ、まぁ…………うん」


 咀嚼しながら、顔が自然と歪んでしまう。


 美味いか不味いかで言えば、間違いなく不味い。なんというか、これまで味わったことの不味さである。食レポが不可能だ。


 ただ、食べれないというわけではない。ボリュームや歯ごたえもあるし、空腹を満たすことはできるだろう。


 俺はその後、今食べてる魔獣豚と、残りの魔獣豚のうち2匹を追加で食べた。


 食べ終わったあたりで、空が暗くなってきたことに気が付いた。思ったより食事に時間を使ってしまったようだ。


「この辺の薬草をもう少し集めて、今日は終わりにするか」


 奥に進む予定だったが、魔獣豚以上の魔獣が出てくるかもしれない。夜になってしまえば、視界不良となり、より危険性が高くなる。そう考え、袋いっぱいに薬草を詰めてから切り上げることにした。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 ギルドに戻った俺は、受付のお姉さんに成果物を提出し、借りてた資料も返却した。


「お疲れ様でした、ヨミヤさん!こちらが今回のクエストの報酬になります」


 回収した薬草の確認を終えたお姉さんから、3万G(ゴルド)が差し出された。この世界の物価についてはまだよくわかっていないが、あの作業でこれだけ貰えるならありがたい。


「初のクエストはいかがでしたか?」


 報酬を受け取った俺にお姉さんが訪ねてきた。


「薬草の回収だけだったんで難しくなかったですね。あ、なんか豚みたいな魔獣との想定外の戦闘はありましたが…」


「あぁ、それはチャージ・ピッグですね。Fランクの魔獣です」


 なるほど、あれがFランクなのか。あれくらいなら何とかなりそうだな。


「戦闘もあったのならお疲れでしょう?今日はゆっくり休まれてくださいね!」


 相変わらず元気な笑顔でお姉さんがそう言ってくれた。なんというか、この眩しい笑顔を見ると体力が回復する気がする。絶対気のせいだけど。




 想定外の戦闘が発生したせいで精神的な疲労もあるので、お姉さんのいう通り、俺はそのまますぐ宿屋に戻った。


 宿屋に戻った後は、部屋の風呂に入り、少しだけこの世界の言語を勉強して、就寝することにした。


「まぁ、何とか冒険者としてしばらくやっていけそうではあるな」




 こうして俺の異世界生活が本格的に始まった。


 

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