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7話 買い物

 晴れて(?)冒険者となったので、色々と道具を揃えなければならない。


 ただ、現状では無一文なので、この手元にある『ホーン・ボア』のツノを売って金銭に変えなければならない。


 受付のお姉さんの冒険者についての説明中に、魔獣を倒した際の戦利品やクエスト中に手に入れた道具などを売る場所がギルドの隣にあるらしいので、そこで売ることにした。


 その結果、なんと30万Gゴルドで売れた。


 店の店主からは疑惑の目を向けられました。まぁこんな見た目の奴が倒せるような魔獣じゃないもんな。実際倒してないし。しかし、売れたのには変わりない。露店とかの商品を見た限り、この金額はかなり高額と考えていいだろう。


「よし!まずは、この世界の言語が学べる資料とギルド職員試験勉強用の資料が欲しいな」


 というわけで、最初は書店的な店に入った。


 店員にそれぞれの資料の売り場を訊ね、本棚に並んでいる冊子の中身を吟味した結果、計3冊購入することにした。会計しようと店員のもとへ行く途中、ある分厚い本が目に入った。表紙には魔法陣のようなものが描かれている。


「これは……魔法辞典みたいなものか?」


 中身を確認したところ、表紙に描かれているような魔法陣の絵と、それに関する説明文のような文章が書かれていた。一応、店員に確認したところ、この本は『魔導書』というもので、魔法の取得の際に使用するものらしい。


 せっかく異世界に来たのだから、魔法も是非使ってみたい。ということで、この本も購入することした。


「次は武器が欲しいな」


 書店で本を購入した後は、武器屋を探すことにした。


 武器屋を探すために店前の看板を見ながら街中を歩いていると、それらしい看板の店を見つけたので、早速入ることにした。


「いらっしゃい」


 店の中には客はおらず、店主と思わしきガタイの良いおじさんが一人だけいた。無愛想なのもあるが、見た目がちょっと怖い。


 とりあえず俺は陳列されている武器を見たり、時には持ったりしながら、自分に合う武器がないか探していた。


「ボウズ、冒険者か? ここら辺じゃあんまり見ない顔だな」


 すると、そんな俺の様子を見ておじさんが話かけてきた。


「俺は異界徒なんですよ。この世界や街には先日来たばかりで、冒険者にはついさっきなったばかりです」


 もはや異世界人が普通に存在していることを知ったので、包み隠さずに返答した。


「へぇ、異界徒か。久しぶりに聞いたなぁ」


「この街にはいないんですか?」


「少なくとも俺は見たことないな」


 そういえば、ここ何年かは異界徒が召喚されてないって受付のお姉さんが言ってたな。


「しかし、ボウズ。異界徒にしてはあんまり強そうには見えねぇなぁ」


 おじさんは笑いながら言っているが、そこに嘲りの意図は感じられない。からかうような感じの口調だし、見た目はちょっと怖いが割と良い人なのかもしれない。


「やっぱり異界徒って強いんですかね?」


 少し気になっていたので訊ねてみた。


「魔王への対抗勢力として女神様が召喚したっつう話だし、強いんじゃないのか? なにせ俺は見たことも会ったことも無いから分からんな」


 それも受付のお姉さんが言ってたな……まぁ恐らく強いんだろう。


「なるほど……ところで、俺みたいな初心者におススメの武器ってあります?」


 ひと通り武器を見てみたが、良し悪しが全く分からない。こういう時は、やはり店の人に訊くのが一番である。


「初心者用か。だったらそっちにある武器を見るといい。癖もなくて使いやすいやつが多いからな、ボウズみたいな冒険者なりたての奴には丁度良いと思うぞ」


 おじさんがそう言いながら、入口近くに陳列されてある武器を指さした。


「あそこか、ありがとうございます」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「これを買います」


 おススメの武器をひと通り確認し、俺は剣を選択した。個人的には異世界での鉄板武器だし、何より弓とか槍は使いこなせる気が全くしない。


「あいよ。頑張れよ、ボウズ。それと武器以外の道具を揃えたいなら、3軒隣の店に行くといいぞ。」


「ありがとうございます。ほどほどに頑張ります」


 ありがたい情報を提供してくれたおじさんにお礼を言って、俺は店を出た。次は、早速教えてもらった店に行って、武器以外の道具を見てみることにした。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「かなり種類豊富だったな」


 武器屋を出た後、おじさんに教えてもらった店に入ってみた。そこには、かなり多くの道具や薬のような物が陳列されていた。店員さんに話を聞きながら色々買ってみた。


 まずは『ポーション』。回復アイテムである。種類によっては上級治癒魔法クラスの回復効果があるらしい。魔法のことはまだ全然分からないが、とりあえず凄いことは分かった。一度、大怪我で死にかけた身なので、多めに買っておくことにした。


 次に『魔道具』。これは、魔法を使えない人でも魔法の恩恵に与れる道具である。俺のような奴でも現時点で簡単に魔法を使えるというわけだ。ただし、消耗品であり使用回数制限があるとのこと。

強力な物ほど、使用回数が少ないらしい。今回は試しに火系統の魔法が使える魔道具を購入した。


「あ~、そういや服も買っておきたいな」


 現在着ている服は、カイルさんから貰ったもの。どちらかと言うと日常生活向けの服のため、出来れば、冒険者向けの戦闘用の服を揃えておきたい。鎧とか着てみたいなぁ……いや動きづらいからやめておこう。


「そうと決まれば、衣料品売ってそうな店を探すか」


 再び、街を散策することにした。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「お、あったあった」


 10分ほど歩いたところ、様々な服が陳列されている店を発見した。一見した感じ、結構な種類の服を売ってそうなので、この店にすることにした。


「いらっしゃ~い。あら?初めて見る子ね」


 早速店内に入ったところ、店員に声をかけられた。口調は女性のような感じだが、見た目は割とガタイの良い男性である。先ほどの武器屋のおじさんに負けていない。こちらの方のほうが見た目が若いが。


「はい、この街には来たばかりの新米冒険者です」


「あら、そうなの。ゆっくり見ていって頂戴ね…ん?」


 俺の顔を見た店員のオネェさん(?)の言葉が途中で止まった。なんか目を見開いて驚いているように見える。なんだろうか、俺の顔に何かついてるのか?


「アナタ…。ちょっと待っていなさい。アナタにぴったりな服があるから!」


「え?ちょっ…」


 突然そう言い場ながら立ち上がり、オネェさんは店の奥の方に消えていった。止める間もなかった。俺にぴったりな服とはなんだろうか。


 2分ほどすると、オネェさんが戻ってきた。


「これよ!」


 若干興奮しながら、オネェさんは持ってきた服をカウンターに置いた。


「これは……着物?」


 それは日本で時々見た着物のようなもの。……いやこれ、昔の武士が着ていたような服では?ご丁寧に草履や足袋まで揃ってるし。


「これは、以前アタシが仕立てた服なんだけどね。結構な自信作なのに中々売れなかったのよ。けれど、アナタを見てビビッと来たわ。この服は間違いなくアナタにぴったりよ!」


 それは要するに在庫処分したいだけでは?


「いやぁ、俺は冒険者用の服を探しに来たので。この服はちょっと動きにくそうというか」


「そこは大丈夫よ!試しに着てみてちょうだい!」


「う、うっす…」


 それとなく断ろうとしたが、完全に勢いに押し負けてしまった。


 そのまま試着室に連行され、一式試着することになった。紹介された服をザっと見てみると、着流しのような感じになるようだ。武士みたいな恰好をするのは少し楽しいが…


「動きづらそうなんだよなぁ」


 どうやって断ろうか考えながら、渡された着用手順を見て、着物を着てみた。


 そして、完全に着用してから、俺は驚愕した。


「え?めちゃくちゃ動きやすいんだけど。なんだこれ」


 見た目はブカブカのように見えるが、全然動きにくくない。いやむしろかなり動きやすい。草履に関しても、大きさピッタリの靴を履いているかのような感覚である。


「当然よ。アタシが仕立てた中でも自信作だからね。…うん、やっぱりアナタに似合ってるわ」


 困惑しながら試着室から出てきた俺に、オネェさんが自信満々にそう言った。似合ってるかどうかは別として、動きやすさについては、俺にぴったりという表現に噓はない。


「その服、お代は不要よ。アナタにあげるわ」


「えぇ!? いやいや流石にそれは」


「構わないわ。自分の仕立てた服が最も似合う人に着てもらうことが重要なの。商売なんて二の次よ」


 カ、カッコいい…。凄まじい職人魂だ。在庫処分を疑っていた数分前の自分の首を、さっき買った剣で叩き斬りたい。


「では…お言葉に甘えて良いですか?」


「ええ。また服関係が必要になったら、いつでもいらっしゃい」


 そう言って、オネェさんは爽やかに見送ってくれた。




 こうして俺は、冒険者としての道具を揃えることを完了した。


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