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6話 冒険者

 

ギルド職員になりたくて冒険者ギルドに訪れたら、いつの間にか冒険者になってました。


 おかしいな…こんなはずじゃなかったんだが。まぁでも仕方がない。あくまでギルド職員になれるまでの稼ぎ口だ。切り替えていこう。


「では、こちらに必要事項の記入をお願いします」


 謎の敗北感を感じていると、受付のお姉さんからA4ぐらいの大きさの紙が目の前に差し出された。そこにお姉さんから言われたとおり、登録のための必要事項を記入しようとして、手が止まった。


 目の前の紙に書かれていることがさっぱり分からない。


 そう言えば、この世界の文字が読めないことを完全に忘れていた。かなり深刻な問題なので、早めに覚えなければ。数字の表記だけは変わらなかったので、その点は救いではあるが。


 「どうかされましたか?」


 ペンをとって固まった俺に、お姉さんが不思議そうに問いかけてきた。


 どうしよう。素直に文字が読めないことを伝えた方が良いだろうか。それか、もう異世界から来たことも話してしまおうか…。


 「お兄さん、もしかして…」


 文字が読めないことをどう伝えるか悩んでいると、先にお姉さんが再び口を開いた。


 「【異界徒】だったりしますか?」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 「いかいと……ってなんですか?」


 聞き慣れない言葉だったので、思わず問い返してしまった。


 「あ、すいません。説明しますね。【異界徒】というのは、魔王に対抗するために、女神がこちらとは異なる世界から召喚した方々のことです。要は異世界人のことですね」


 「……異世界人って、この世界では一般的なんですか?」


 「少し前までは珍しくは無かったんですけどね~。今では召喚自体が行われていないので、ほとんど見かけなくなりました」


 この世界では既に異世界からの来訪者の前例が複数あるらしい。これは非常にありがたい。今後、自身の話をする際に下手に異世界から来たことを隠す必要が無くなる。


 「あ、でも気を付けてくださいね。【異界徒】に対して、あまり友好的でない人々もいます。この国ではそういう人は少ないですが、それ以外だと国家単位で【異界徒】を嫌悪している国もあります…」


 「なるほど…まぁ大丈夫ですよ」


 基本この国から出ることないんで、という言葉はここでは飲み込んでおく。


 「そう言えば、登録申請書の記載の話でしたね。【異界徒】の方々は文字が読めないことが多いので、こちらで記入事項の説明をいたしますね!」


 「ありがとうございます、是非お願いします」


 その後、氏名や出身(一応『日本』と書いた)、年齢などを記入した。その後、お姉さんから石板のような物を目の前に差し出された。先ほどの申請書よりは少し小さく、元の世界で言うところのタブレットのような形をしていた。


 「こちらのプレートに掌を当ててください」


 と、お姉さんから促されたので、それに従い石板プレートの表面に右掌を当てた。すると、石板プレートが光り出し、10秒ほどしてからその光は消えた。


 「これで登録完了です! 今の登録をもとに、冒険者カードを作成しますので、少しお待ちください。完了まで待っている間に、冒険者について説明しますね」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 お姉さんからの説明を受け、この世界の『冒険者』について説明を受けた。説明をザっと整理すると…


 『冒険者』とは、冒険者ギルドに集まるクエストをこなす者たちのこと。剣士だろうが、槍兵だろうが、防御専門だろうが、総称して『冒険者』と呼ばれる。ただし、魔法を使いこなす『魔導士』は別枠。


 『冒険者』には『冒険者ランク』が与えられ、Sランク~Gランクまで存在する。Sランクが最上級となり、その者は【勇者】と呼ばれる。歴史上、数えるほどしか存在しない。


 『冒険者ランク』は、Dランクまではクエスト達成実績や魔族・魔獣討伐実績、またはそれに比肩する戦績や功績により自動で昇格する。ただし、Cランク以上への昇格は原則として昇格試験に合格しなければならない。


 討伐対象は主に魔族や魔獣。『討伐ランク』が冒険者と同じくSランク~Gランクまで存在する。魔族や魔獣以外の種族 が人族に敵対し、討伐対象となった場合も、目安としてこのランクが割り当てられる。その場合、『暫定◎ランク』と表現される。


 …etc


  「私からご説明できることは以上となります。何かご不明な点などありますか?」


  「いや十分です。詳しく説明していただきありがとうございました」


 思っていた以上に詳細な説明をしてもらった。中でも気になったのが、『魔族』と『魔獣』。


 『魔獣』とはこの世界の生物が魔力に汚染された成れの果ての姿とのこと。ただし、高濃度の魔力地帯では『魔獣』が自然発生することもあるらしい。また、獣の姿とは限らない。

 

 対して『魔族』とは人間とほとんど見た目が変わらず、言葉も話すことが可能。人族、いわゆる人間とはほとんどが敵対関係にあり、魔王を始めとする上位の個体は戦闘力がかなり高いらしい。


 他にも多くの種族が存在するらしいが、そこはまぁ今後勉強しよう。


  「あ、ちょうど冒険者カードの作成が完了したみたいなので、お渡ししますね!」


 今の説明の間に、冒険者カードとやらが完成したらしく、受付のお姉さんから受け取った。見た目は身分証明書みたいな物である。顔写真もついてるし、免許証とかに似てる。…いやいつ写真とったんだ?


  「さっき石板プレートに掌を置いてもらった際に読み取りを行って、ヨミヤさんの顔の再現や情報を自動的に登録しました。こちらのカードも提示すれば、どの国の冒険者ギルドも基本的には使用可能ですので、失くさないようにしてくださいね?」


 「なるほど…気を付けます」


 さらりと顔写真の疑問も解決した。どういう技術なんだろうか…いや多分魔法だろう。作成された冒険者カードには、顔写真(?)以外にも、氏名や現時点での冒険者ランク(当然、初期のGランク)の記載がある。とりあえず失くさないように気を付けよう。



  こうして諸々の手続きが完了し、俺は正式に『冒険者』となった。


 

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