11話 パーティー
「いやぁ、すっかり夜になっちまったな」
あの後、激痛と格闘しながらも大蛇を完食したが、時間を使い過ぎて、森を出るころには空に月が輝いていた。
しかし、今日は大豊作だった。
現在俺は袋いっぱいに星3つ評価の薬草を詰めている。間違いなく過去最高の報酬が期待できるだろう。それに加えて、美味い魔獣が存在することも確認できた。討伐するのは苦労するだろうが、あの味を無料で味わえるなら頑張れる。
そういうわけで、今日の俺は上機嫌だった。
それが顔に出ていたのだろう。
「お、タイガ。クエスト帰りか?上機嫌じゃねぇか?」
ギルドに入ってすぐ、小太りの男に声をかけられた。
「よっす、マスト。いやぁ今日は薬草が大収穫だったんでね」
この男の名はマスト。小太りで俺よりも背の低いおじさんである。彼も冒険者であり、ランクはD。俺なんかよりも遥かに上の人間なのだ。
冒険者になってから、ほぼ毎日ギルドに通っていたこともあって、冒険者の中にも顔なじみが何人かできた。マストもその一人である。
「また薬草狩りかよ。そろそろお前も魔獣討伐系のクエスト増やしていいんじゃねぇのか?」
「いやいや、俺はこれくらいがピッタリだから」
ちなみにマストのほうが明らかに何歳も年上だが、彼の気の良さもあって普通にタメ口で話している。本人もそっちのほうが良いって言ってたのでね。
「ま、お前がそれでいいならいいけどよ」
やれやれ、といった感じで彼は苦笑しながら首を左右に振りながらそう呟いた。
「んじゃ、俺はクエスト完了に行ってくるんで」
「おう、じゃあな」
その後、俺は報告のために、受付に向かっていた。
「よお、タイガ」
その途中、今度は背後から俺を呼ぶ声がした。
ここ最近で聞き慣れた声に俺は溜息を吐いた。面倒な奴に捕まってしまった。
「なんか用かよ、リアス」
振り返るとそこには槍を携えた赤髪の男がこちらをニヤつきながら見ていた。
こいつの名はリアス。俺と同い年ながら、すでにCランクという高レベルの冒険者である。このギルドに訪れる冒険者の中でも上位の実力者である。
「また薬草狩りか?相変わらずシケたことしてんなお前は」
リアスは嫌味たらしく、見下すようにそう言った。
「そりゃそうだろ。俺はGランク冒険者。このくらいが身の丈に合ってんだよ」
俺はそう返す。
別にここで挑発を返して喧嘩などするつもりなどない。
どうせ勝てないというのあるが、それ以前にこのリアスという男……
「いや何言ってんだよ。お前は絶対やればできる奴だろ。すぐ上位ランクになれるって」
実は普通に良い奴なのである。
言い方や表現が見下してたりバカにしている印象があるせいで、最初はかなり嫌なやつだと思っていた。しかし、何度かやり取りするうちにそれが勘違いであることに気づいた。
「無茶言うなよ。俺はお前みたいに上に行くほどの才能は無いよ」
「いや、お前は確実にBランク以上の冒険者になれるね。俺が保証する」
何故か毎回俺に対する過大評価が凄いんだよなコイツ。
評価してもらえるのはありがたいが、俺の何を見てそこまで断言できるんだろうか。
「はいはいそこまでにしなよ。タイガが困ってるでしょ」
俺がどう返すか困っていると、リアスの背後から声が聞こえた。
「う…、ノール」
リアスが顔を顰めて振り返った。
「ゴメンねタイガ、うちのバカがまた迷惑かけたみたいで」
そのリアスの背後から、ツインテールの女の子が片目を瞑りそう言いながら、歩いてきた。
彼女はノール。リアスとは同じパーティーで、『魔導士』らしい。
俺に絡んできたリアスは、大体最後には彼女に回収される形になる。ようするに、リアスのブレーキ役を担っているということだ。
「いや大丈夫だよ。だいぶ慣れてきたし」
「だよな!ほらみろノール、タイガは分かっ……痛っ!」
調子の良いことを言おうとしたリアスはノールにチョップを食らった。
「はいはい、じゃあ私たちも帰るわよ。ダンプ、こいつをよろしく」
「は~~い」
ノールの背後から大柄な男が、間延びした声で返事をしながら現れた。
彼もリアスのパーティーメンバーである。ここにもう一人、弓使いの少年を加えた4人が彼らのパーティーである。
ダンプはヒョイと軽くリアスを持ち上げて、肩で担いだ。
「あ、おい!降ろせダンプ!俺はまだ…」
「じゃあねタイガ~~」
「聞けよ!!!」
「またねタイガ」
賑やかに去っていくリアスたちに手を振りながら見送り、俺はふと考えた。
「パーティーかぁ。それもいいな…」
しかし、すぐに首を左右に振って今しがたの考えを頭から消す。
俺の目的は冒険では無いのだ。俺みたいな奴とパーティーを組むメリットなんか無いからな。
「っと、早く完了報告して帰るか」
クエストの完了報告がまだ終わっていないことを思い出し、俺は再び受付に向けて歩き出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あ、ヨミヤさんお疲れ様です!クエストの完了報告ですか?」
いつもの如く、受付のお姉さんが元気に対応してくれた。この人はいつも元気だなぁ。
「はい。お姉さんもお疲れ様です。これが今回の収穫です」
俺は薬草でパンパンの袋をお姉さんに差し出した。
「今回も大量ですね~。じゃあ中身を確認して報酬を……!」
袋の中身をチラリと確認したお姉さんが硬直した。
「あの、ヨミヤさん。これ全部ご自身で採集したんですか??ほとんど最高クラスの薬草なんですけど…」
「あ、はい…まぁ一応」
「凄いです…!よくこんなに大量に見つけましたね」
「なんか穴場みたいな場所を見つけまして」
大蛇のことを言おうと思ったが、特に討伐対象でも無いので、黙っておくことにした。
「穴場ですか…あの森の結界外にそんな場所があったとは」
「薬草を血眼で探す冒険者なんて俺くらいなもんでしょう?だから他の冒険者が見つけられなかった場所を発見できたんじゃないですかね」
「うーむ。なるほど…」
あまり納得できていないご様子だ。
「……あ!すいません、報酬がまだでしたね。後ろで確認してきます」
しかし、すぐに自身の仕事を思い出したようだ。
「今回の報酬、間違いなく凄い額になりますよ。期待しててください!」
そう言って奥の部屋へ小走りで消えていった。
その後、お姉さんが持ってきた今回の報酬額は、なんと500万Gであった。
俺は思わずガッツポーズをした。




