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11話の続きです

ホーム切れ端と黄色の危険信号を意味する点字との間をあたかも海辺の塀をはだしで歩く少女のように大きく闊歩する。

差し伸べられる手が届くまでいつまでも「シャトルウォーク」する。


時刻午後10:57

何往復したのだろうか、僕の心は激しく動悸を覚えていた。息は上がっていない。

だがこの刻を境に激しく今度は心臓が激しく動悸を覚える。

もう誰も僕のことを気にかけてくれないと思っていたが

命拾いした。

一度自殺を志願した者が不覚にもそう思ってしまった。


ともあれ本来の目的は達成した。

月さんが僕の重力を約1/6にして引っ張り上げてくれた。


一度引っ張り上げてもらって、ホームにあるキャスター付きの黒い椅子に腰を掛けて息をつこうと試みる。が、息の仕方を忘れた。なぜなら重力が戻り急激に重くのしかかる。


宇宙飛行士の宇宙から戻ってきたときのように、45日間のリハビリプログラムが必要になりそうなほどに。

重力のように重くのしかかっていたのは言葉だった。

重く、意味の分別がし難い。


「ラブだよ」

どうゆう意味なのだ。僕の時刻は午後10:57で止まっている。

反対に心音という秒針は刻一刻と体に響いている。

初めて言われた。どう返信するべきなのか。どう解釈すべきなのか。


三日三晩寝ても覚めても、真意を探し求め単身アマゾンの奥地に向かった。

何処に居ようが月明かりが僕を逃してはくれない。


3日かけたが何も見つからず、真意は秘宝へと変異した。

だが成果物はあった。自分のhidden gemを発見したのだ。

「僕は月さんのことが好きなのだ。」

とても大事な、何カラットなのかとかはわからないけど、真贋は必要ない。

彼女がもし同じ思いであるのなら、この上ない。


だから僕は月さんの言い方をオマージュしながら自分の気持ちを伝えた。


「おれも、おれのほうがらぶだね」


僕の気持ちにささやかな宝石を添えて返信した。

それから3日間月さんからも同様に返事がなかった。

もしかしたら僕の「真意」を発見して返答に時間を要しているのかもしれないとウキウキした、逆に気づき嫌われてしまったのではないかとシクシク。

そんな落ち着かない3日間であった。


ようやく月さんから返事が来た。

最近中華街に行ったらしい。約束とは何だったのか。

告白も約束もすべてはぐらかされた。素直にそう感じてしまった。

しかし脳はダメージを抑制するために、違う理由を当てはめる。

どうやら月さんは中華街の奥地に向かったらしい。


ダメージが半減した脳内の片隅で返信内容を考える。

思うように指が動かないながらも、一緒に行ってはくれないのか尋ねた。

暑いときはいかない、そう返された。‘とき’ということに寒かったらいいのかという少しばかりの光明が差し込むがそうではないのだろう。諦めという暗雲が立ち込める。

そこに月さんが食したのであろう小籠包が送信されてくる。それも3枚も。

どれもおいしいそうなことには違いないのだが、今口にしても何も感じないだろう。

例え肉汁が服に飛び散ろうが。

いつの間にか会話は終わっていた。待望であった久しぶりの会話は臨んだ形では訪れてはくれなかった。

そのまま途方に暮れたまま日付が変わってしまった。


声が聞きたかった。月さんの声が。

優しく月光のように包み込むあの声が。


その日の夜、「おしゃべり」することになった。

その文言に僕は縋りつく。

初夏が終わり本格的な暑さに移り変わる最中に。

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