第十五話 学食
地の文を増やすと、良いって聞いたのでやってみたけど難しいね。
昼時、ノアは、食堂へ来ていた。学園の食堂は、思っていたよりずっと広く、天井は、ドーム型の大きな天窓になっており、荘厳な雰囲気だ。
光の精霊が居るのか、精霊の歌声もどこからともなく聞こえてくる。
カトレアも誘おうと思ったのだが、あいにく彼女は、防衛隊本部に呼び出しをくらったらしく。何かしたのかと聞いたら、「何もしてないわよ!」と眉間にシワを寄せていた。
購買でパンでも買って、教室で食べるという手もあったが、せっかく久しぶりの学園生活だ、気になったものは、片っ端から試したい。それに、防衛隊に入っていると、学食代も免除される。
なかなか太っ腹な制度だなと、ノアは前から感じていた。
(何食べようかな……)
どんなメニューがあるのか、他の生徒が食べている物を見てみる、カレーライスや、ラーメンなど普通のものもあるようだが、中には、顔の二倍はあるのでは、と思うほど大きな肉の塊を、豪快に貪っている生徒や、何かいい香りがするが、見た目はとてもじゃないが、美味しそうとは言い難い、紫色のスープを啜っている生徒もいた。
そんな中ノアは、衝撃の光景を目にする。
「!? なんだあれ……」
そこには、大食い勝負でもしているのか、大量の空の皿が積まれ、次々と厨房から、運ばれてくる大量の料理も一瞬にして、なくなっていき、どんどん皿が積み上がり、今にも崩れそうになっている机があった。
周りには人だかりも出来ている。何人かの生徒は、勝負に賭けているのか、歓声や声援が飛び交っていた。
とても盛り上がっていたので、ノアも気になり、近くまで行ってみることにした。
近くに行くにつれ、肌が焼けると思うほどの熱気に包まれていく。
人だかりを抜け、なぜそれ程までに熱気に包まれていたのか、ノアは、理解した。大食い勝負をしている二人、うち一人は、炎の精霊イフリートであった。
そしてその傍らで、負けじと大量の皿を空にしている青年は、エリオであった。
(エリオ!? それにイフリート……すごい初めてみた……勝負してる…のか?)
ノアは、勝負の邪魔はしまいと声には出さなかったが、とても驚いていた。
そんなノアに一人の男が近づいた。
「…………わぁ! ノアくんだぁ!やっほぉ!」
ノアの背後から音も気配もなく近づき、肩をがっしりと掴むと、大きな声で話しかけてきたその男に、ノアは、腰を抜かしそうになった。
「へうっ!? あっ……えっ、オッ……オスカーさん……」
咄嗟に出たノアの情けない声に、オスカーは、吹き出し、腹がよじれるのでは、と思うほど笑い転げる
「ノアくんが!へうっ!?って! へうっ!?」
オスカーの言葉に、ノアは、顔から火が出るのではないかと思うほどに恥ずかしかった。
そんなノアを見て、オスカーは、「ノアくん大丈夫? イフリートに当てられちゃったぁ?」と、からかっているのか、そうでないのか、心底心配そうにノアを見てきた。
「…………大丈夫です、心配してくれて、ありがとうございます」
ノアは、とりあえず、心配してくれた事に対して、お礼を言っておいた。
そんなノアの反応が思っていたものと違ったのか、オスカーは、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をし「えっ! あ、うん! 大丈夫ならいいんだぁ!大丈夫ならぁ! 良かったぁ!」と、少し戸惑いながらも受け答えをする。
オスカーは、(ノアくん、すごい素直だなぁ…)と、ノアに対するからかい方を、改める必要性を感じていた。
「……そういえばぁ、ノアくんは、何食べるか決めたのぉ?」
それを聞き、ノアはハッとする。自分は、まだ何を食べるか決めていない……
何を食べようか頭を悩ませていると、オスカーが、「もしかしてぇ、まだ決まってない?」とニコニコしながら、尋ねてきた。
「はい……実はまだ、どれも美味しそうで迷ってしまって」
ノアがそう話すと、オスカーは、顔に満開の笑顔を咲かせ、「じゃあさぁ!僕についてきなよぉ! 食堂のおすすめ、教えてあげるよぉ!」と、案内を申し出てくれた。
「良いんですか! お願いします!」
「任せてよぉ!」
ノアとオスカーは、注文カウンターの方へ向かった。
向かう途中、ノアは気になっていたことを、聞いてみた。
「あの……気になってたんですけど……なんでエリオは、炎の精霊と勝負してるんですか?」
オスカーは、「ん〜?」と軽く空を見上げると、ノアに何があったのか、教えてくれた。
◇◇◇
「あー! 腹減った!」
エリオは、授業が終わると直ぐに、食堂へ向かった。魔女に体内のエーテルを、ゴッソリ持っていられたからか、授業中ずっと腹が鳴りっぱなしだったのだ。
ルークには、「魔女の影響で、身体に変化が起こっているんじゃないか? 念の為、医療班に診てもらえ」と言われたが、医療班に向かうより先に、腹の虫をなんとかしたい。そんな思いから、食堂について直ぐ、目についたメニューを頼みまくった。
目の前には、傍から見ると、友達を待っているのかと思うほどの料理の山が出来上がった。
「いただきます!」
エリオは、何から食べようかと料理を見回す。
目についたのは、大皿に山盛りになった唐揚げだった、ここの食堂の唐揚げは、合わせ出汁で味付けがしてある。
噛み付けば、片栗粉で作られた衣はザクザクといい音を立て、中からは、じゅわっと肉汁が溢れ出し、醤油と出汁の香りが口いっぱいに広がる。
エリオは、この食堂の唐揚げが好きだった。何を頼むのか迷ったときは、必ずこれを頼むというくらいには好きだった。
この唐揚げは、味が濃く最後の一口、衣の一欠片まで出汁の味が付いている。だからこそ、腹が減っているときは、この唐揚げを大盛りにし、山盛りの米を、掻っ込むのがエリオの好きな食べ方だ。
エリオは、腹が減っていたのもあって、とても幸せそうな顔をしながら食べていた。それが、イフリートの興味を引く要素の一つとなったのだろう。
気が付くと、エリオの目の前にイフリートが仁王立ちしていた。
「オレにも食わせろ!」
イフリートは、開口一番そう言ってきた。
精霊達は、お祭りごとが好き




