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第九話 傀儡

!と?の間に空白を入れる技を覚えました!

 ノアと別れた後、エリオは、二階へ来ていた。エリオたちは、第三部隊所属であるが、無線で救助要請が入ったからだ。



「さっきの無線、相当焦ってたけど大丈夫かなぁ?」


先頭を走っていた男が、不意にそう問うてきた。


「大丈夫じゃなさそうだから、走って向かってるんだろ? 放送もないなんて、普通じゃねぇ」


「だねぇ、それに僕らを頼ってくるなんて、相当ヤバイやつが来たのかねぇ?」


 エリオは、第三部隊に所属しながら、防衛隊特殊部隊、守護の壁(バスティオン)にも所属していた。

 守護の壁は、二班まであり、それぞれ五人で構成される少人数の部隊だ。



 

「アレか?」


 そこには、防衛隊精鋭部隊、疾風の刃(ゼファー)が、一人の女子生徒に対して交戦していた。


「アレかなぁ? 女の子一人囲んでさぁ、遂に頭のネジが吹っ飛んじゃったのかなぁ?」


 精鋭部隊、疾風の刃は、守護の壁同様に、五人づつの部隊だ。でも何故か、今は三人しかいない…


「やあやあ! ゼファーのみんなぁ! 女の子囲んで何やってんのぉ?」


「やっと来たな… 魔女だ! 一般生徒に紛れ込んでいやがった! もう何人かやられた! 早く援護を頼む!」


 先程まで、ヘラヘラしていたリーダーは、状況を把握したのか、隊員に向け、肉体強化魔法を掛けた。

 続き、エリオも魔女に対して、拘束魔法を掛けようとした。

 だが魔法陣から出た光は、魔女の身体に触れると、バラバラと散ってしまった。


「駄目だエリオ! コイツに対して魔法は効かない!」


「は!? そういう事は、先に言え!ルーク!」


「すまん! 守護の壁は、俺らに向けて、強化魔法を掛けてくれ!」


「はいはい、了解!」


 エリオ達は、疾風の刃の面々に向けて、強化魔法をこれでもかというほど掛けた。速度強化、剣術強化、武具強化、etc. 


「ありがとう!」


 支援を受けたルークは、魔女に肉薄する。白銀の直剣を魔女の喉元へ突きつける。

 だが、その切っ先は、魔女の首をするりと通り抜けてしまった。まるで、霧でも切っているようだ。

 態勢を立て直すと、ルークは自身のリーダーに問う。


「効いてますか? これ?」


「…………効いてなさそうだな……でも効いてても、効いてなくても、コイツを撃退しない限り、私らの明日は無いだろうな!」


そう、疾風の刃のリーダーが言ったとき。

 魔女の口角が三日月のように弧を描いた。魔女の周りに、黒い霧が立ち込める。


「!? お前ら、吸い込むな!毒かもしれない!」


魔女は、霧と共に姿を消した。


「気をつけろ! どこから来るか分からんぞ!」



 静かだ、朝凪のように、何の気配も感じない。だが、皆、首筋を伝う汗の感覚さえ邪魔に思うほどに、気を張り詰めていた。



『アハッ! ザンネンでした!』



 何処からか声がした。否、その声は、エリオの右腕からだと皆が気づく。エリオの腕には、先程の黒霧が蛇のように巻きついていた。

 そのことに、エリオ自身も腕に痛みが走るまで気付くことができなかった。


「イッテェ゙!!? な…んだコレ!」


 エリオの腕は、まるで縁筆を、三百ほど使った負荷を右腕に集中させたような変異の仕方をしていた。

 エリオの右腕は、怪獣のように肥大化しており、皮膚が内側の圧力に耐えられず、裂け始めている。


 腕から黒水が垂れ始めた頃、やっとエリオの腕から霧が取れる。


 そしてまた魔女が姿を現した。だが、先程までとは、明らかに様子が違う。

 先程まで少女だった魔女が、明らかに成長している。


(成長した? エリオの腕に、縁筆を使った時と同じような症状が出てるな……厄介だ)


 そんな事を思いながら、ルークは、姿を現した魔女に斬り掛かっていた。

 

「おい!ルーク! 突っ走り過ぎるなよ!」


 疾風の刃(ゼファー)のリーダー、セシリアがルークに続き魔女に向かって斬りかかるが、何処を斬ってもスカッスカッとすり抜けてしまう。


「わぁ、こんなにこんなに攻撃が当たらないなんてぇ。あとは、掃除機で吸い取るぐらいでしか倒せないかなぁ?」


 守護の壁(バスティオン)のリーダー、オスカーがそんな冗談を言ってきた。

 名案かもしれない……ルークは、そんなオスカーの突拍子もない冗談に一縷の望み見いだしていた。

 この霧状の魔女が気流によって動くかは、分からないがやってみる価値はあるだろう。そう考えたルークは、守護の壁の面々に、風魔法の定義拡大と転換をして描いて見てほしいとお願いした。


「ムズいこと言うなよルーク! 左手で転換した陣描けってか!?」


 ルークはそんなエリオに、フッと笑いかけ「お前なら出来るだろ?」と言ってのけた。

 エリオは、「わかったよ!やりゃあ良いんだろ!?」と転換拡風魔法陣を描く。


 しばらくすると、守護の壁の各々が描いた魔法陣が一つの大きな魔法陣になり周囲の空気を吸い込んでいく。


 一瞬、魔女の下腹部が少しブレたように見えた。


(……そこか)


 これは、ついこの間、錬成学で禁忌錬成の一つとして小耳に挟んだ程度の知識。


 自身の魂の一部を使い、妖精やら魔物やらを、魂と無理やり結合させることで出来る『分身体』

 そいつは、身体がエーテルで出来ているため、霧のように見えることもあるという。


 分身体の核は下腹部にある。確かに、先ほどから下腹部への攻撃は、当たっているように見えて、その実、浅い。明らかに他の部位より浅く当たるように避けている。


(そこが、お前の急所か!)


 ルークが狙いを定め、魔女の腹部へ、剣を滑らせる。


─グチュ─


 肉が潰れるような、小さな音がした。そして、手応えもあった。

 魔女は、陽炎のようにゆらゆらと揺らぎ、跡形もなく消え去った。

 そこに残ったのは二つになった肉片だけだった。

8/19 修正を加えました!

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