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サーフィンエクスタシーと裏切られる正義

ネオン・アビス上空、高度二百メートル。

酸性雨を切り裂きながら、スラムの空中モノレール軌道上を「轟音」と「火花」が爆走していた。


「ヒャッハー! 最高だぜこのアトラクション! 腹の底から快感が込み上げてきやがる!!」


ルーニー・ヴァレンタインは、先刻腹部から生えた『直結チェーンソー』の刃を、モノレールの電磁軌道にガッチリと食い込ませていた。

刃が高速回転し、軌道の装甲板を削り飛ばしながら推進力を生み出す。物理法則も安全基準もガン無視の、狂気の『チェーンソー・サーフィン』だ。


「だがちょっとやべぇな……どう考えても物語の展開が早過ぎる! さっき作者も『想定のプロットより早く進みすぎて執筆のストックがやばい』って焦りながらアソコを掻きむしってやがったぞ! この爆速ジェットコースターは、お前らの時間稼ぎってわけか!?」


『マスター、作者の醜態を暴露するのは読者の没入感を削ぐのでやめてください。それに、腹部への凄まじい振動と摩擦熱で、あなたの内臓が文字通り煮えくり返りそうです』


「うるせえ! 俺のはらわたは今、最高のエクスタシーを感じてんだよ!これが究極のスカ〇ロプレイってやつなのか?!スピード違反の切符は後ろの白バイのお姉ちゃんに切ってもらいな!」


ルーニーが肩越しに振り返ると、背後から美しい流線型の最新鋭ポリスホバーバイクが猛スピードで迫っていた。


搭乗しているのは、アイスブルーの髪を逆立て、怒りのあまり顔を真っ赤にしたコーポレート・エンフォーサーの美少女、フィオーラだ。

彼女の純白の装甲から、プシュー! プシュー! と凄まじい勢いでピンク色の排熱蒸気が吹き出している。


「逃がすか、この歩く公然わいせつ物があぁぁっ!! 貴様の存在そのものがスラムの景観をさらに汚している! ここでスクラップにして、リサイクル業者のゴミ袋に叩き込んでやる!」


フィオーラがバイクから身を乗り出し、散弾銃ショットガンの銃口を向ける。


「おいおいお嬢ちゃん! そんなに血相変えて俺を追い回すなんて、さてはさっきの工場で見た俺のピ―――――(じしゅきせい)の魅力が忘れられねえのか!? そんなに欲しいなら、ホテル代くらい奢ってくれよ!」


「だっ、誰が貴様のような汚らしいガラクタの……! ひ、卑猥なことを叫ぶなっ! 死ね!!」


ズドォォォォン!!


激昂したフィオーラが放った散弾が、ルーニーの頭を掠めて前方のネオン看板を粉々に吹き飛ばす。


『警告。マスターの最低なセクハラのせいで、対象のヘイト値が限界突破しています。ちなみに彼女が今無駄撃ちした弾、一発でスラムの住人の生涯年収が消し飛んでいます。それにこんな序盤から無駄な爆破描写ばかりしていると、将来アニメ化された時に現場の作画カロリーがパンクして、後半は万策尽きて総集編を挟むハメになりますよ。メディアミックス展開を見据えたエコな立ち回りを推奨します』


「ハッ! 警察様の税金無駄遣いには反吐が出るぜ! 俺の低予算な手斧ちゃんを見習えってんだ!」


ルーニーが下品に笑い飛ばした、その瞬間だった。


―――ピーガガガガッ!!


突然、フィオーラのホバーバイクのコンソールが不吉な赤色に明滅した。

上空の分厚いスモッグを突き破り、無数の『黒い影』が降下してくる。


「……! 応援部隊!? いや、あれは協定企業の無人戦闘ドローン……? なぜこんな下層に……」


フィオーラは目を丸くした。

ドローン部隊はルーニーを囲むように展開したが、その銃口の「半分」は、なんと警察官であるフィオーラにも向けられていたのだ。


無機質な機械音声が、酸性雨の空に響き渡る。


『……ターゲット確認。不法侵入者ルーニー・ヴァレンタイン。および、第4セクター機密プロジェクトを目撃したコーポレート・エンフォーサー、フィオーラ・レインズ。両名ヲ、当社ノ「不適切ナ不良債権」ト認定』


「な、なに……っ!?」


『コレヨリ、機密保持コンプライアンス規定ニ基ヅキ、両名ノ【廃棄処分】ヲ実行スル』


ガトリング砲のモーターが回転する音が、フィオーラの鼓膜を打った。


「ば、馬鹿な……っ! 私は警察よ!? 治安維持のために、あなたたち大企業とは協力関係にあるはず……! なぜ私が処分に……!」


彼女けいさつが信じていた『正義の企業』は、違法な解体工場を見た彼女を生かしておく気はなかった。圧倒的な火力が、絶望で硬直するフィオーラに向けられる。


「あぶねえっ!!」


ダダダダダダダダダダダアァァァンッ!!


凄まじい弾幕がフィオーラのホバーバイクをハチの巣に変えた。バイクが爆発し、彼女の小さな身体が空中に放り出される。


「ああ……」


落下するフィオーラの瞳から、光が消えかけていた。

私は、間違っていたのか。

スラムのゴミを掃除することが正義だと信じていたのに、警察である自分すらも、大きな権力(だいきぎょう)にとっては一番の「使い捨てのゴミ」だったなんて。


だが、暗闇に落ちていく彼女の腕を、強引に掴み上げる血まみれの手があった。


「――よそ見してんじゃねえぞ、お嬢ちゃん」


ルーニーだ。

彼は軌道から飛び降り、空中でフィオーラを抱き寄せると、そのままの勢いで眼下にある安ホテルのネオン看板をぶち破り、屋上の貯水槽に盛大に突っ込んだ。


ドッシャアアアアッ!!


「ガハッ……! 痛覚キャンセラー……切れって言ったろ、マリア……!」


『切っています。あなたの身体が既に物理的な限界スクラップ寸前なだけです。作者が面倒くさがったせいで第一話から身体がツギハギのままの設定でここまで来ましたが、さすがに限界ではないですか』


貯水槽の瓦礫の中から、血と汚水に塗れたルーニーが這い出す。左肩に繋いだ散弾銃の腕は半壊し、腹のチェーンソーもひしゃげている。


その横で、フィオーラが呆然と座り込んでいた。

純白だった白磁の装甲はひび割れ、泥水に汚れ、アイスブルーの髪は見る影もない。


「……なぜ……助けたの……」


フィオーラは震える声で呟いた。


「私は、正義たいぎのためと……あなたたちを散々……」


「正義だのコンプラだの、お高く止まって安全な場所から見下してるから、足元を掬われんだよ」


ルーニーは血の混じった唾を吐き捨て、愛用の手斧を拾い上げた。

そして、上空からゆっくりと降下してくるドローン部隊を見上げ、狂気的な笑みを浮かべる。


「勘違いすんなよ。俺はてめえのお涙頂戴のポリスドラマなんざ、これっぽっちも興味がねえ。俺はただ、あの宿で待ってる『極上のネエチャン』とヤるためのツケを回収しなきゃなんねえんだ。こんなとこで、てめえのおこぼれで火あぶりにされるのは御免だってだけだ」


ルーニーは、絶望して座り込むフィオーラの前に立ち、その無骨で傷だらけの背中を向けた。


「いいか、お巡りのお嬢ちゃん。てめえの信じてた飼い主は、てめえの首輪を切り捨てた。なら……今は俺の背中ケツの穴に隠れて、この泥水の下品な味でも噛み締めてな」


空を埋め尽くす大企業の暗殺部隊に対し、ボロボロのガラクタ男が一人、手斧を構えて嗤った。

おいおい、まさかこんな中盤でヒロイン(?)がリストラされるなんて予想外だったか? 大企業×警察のトカゲの尻尾切りなんて、現代社会じゃ日常茶飯事だからな!

労災も降りねえブラック組織には、俺の手斧でお仕置きが必要だ!

「展開が早すぎる」って? だから作中でも言っただろ、こちとら執筆ストックが尽きかけてて必死なんだよ!

アソコ掻きむしりながら必死に書いてんだから、毎話クライマックスのつもりで着いてきな!

もし「この泥臭い展開、最高だぜ!」と思ったら、遠慮なく下にある【♡(応援ボタン)】を俺の「大事なトコロ」にブチ込んでくれ!

トップページの【★評価】や【フォロー】も頼んだぜ!


『……マスター。今回は割とハードボイルドにキメたのに、あとがきで台無しにするのはやめてもらえませんか。企業の追手に殺されるより先に、読者に見捨てられますよ』

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