コンプラ遵守の解体工場と腹部直結チェーンソー
ネオン・アビスの第三区画。通称『リサイクル・セクター』。
違法な臓器売買とジャンクパーツの取引で潤うこの泥沼の奥深くで、ルーニー・ヴァレンタインは血とヘドロに塗れたブーツを鳴らしていた。
「おいマリア。さっきの情報屋、俺が手斧で指を一本落としただけで全部ゲロっちまいやがったぜ……。最近の悪党は、根性が足りねえな」
『マスターの尋問手法は、昭和の刑事ドラマ以下です。それに、読者のタイムパフォーマンスを考慮し、あなたの地道なドブ板捜査の描写を大幅にカットした作者の英断に感謝すべきです。三行でボス部屋に直行できるなど、現代ウェブ小説の特権ですよ』
「メタなマジレスすんな! 俺のハードボイルドな探偵パートを返せ!」
脳内の管理AIと軽口を叩きながら、ルーニーは錆びついたシャッターを蹴り破った。
そこは、非合法な解体工場。
「……だから言っているだろう! 摘出したアンドロイドの人工血液は『燃えるゴミ』、生体パーツは『バイオハザード指定廃棄物』だ! 分別ルールも守れない奴に、SDGsを掲げる我が『ネオ・ヒポクラテス解体社』で働く資格はない!」
工場のど真ん中で、白衣を着た男が部下に怒鳴り散らしていた。
男の全身は、メス、レーザーカッター、小型骨鋸など、無数の医療器具で禍々しく改造されている。
狂気の闇医者、リッパー・ドクだ。
工場の壁には『無災害記録0日』『ハラスメントのない明るい解体現場』という狂ったスローガンが高々と掲げられている。
「おいおい、ヤクザな商売のくせにコンプラ意識が高くて涙が出るぜ」
ルーニーが鼻で笑いながら踏み込むと、闇医者の複数の義眼がギョロリとこちらを睨んだ。
「……下品なスクラップめ。何の用だ? 当院は完全予約制で、お前のような低所得者向けの保険は適用外だ」
「俺の『極上のオンナ』のパーツがここに流れてきたって聞いてな。クレーム対応、頼めるか?」
言葉が終わるより早く、ルーニーは手斧を振り被り、跳躍した。
だが、闇医者の反応速度は異常だった。AIアシストによる完璧な軌道計算。
「不法侵入者は『事業系一般廃棄物』として処理する!」
シュガァァンッ! と、闇医者の背中から伸びた多関節の医療用アームが、ルーニーの腹部を正確に貫き、背中へと貫通させた。
「ガハッ……!?」
『警告。腹部装甲、および胃壁を完全貫通。このままだと出血多量で死にます。だから言ったじゃないですか、突っ込む前に戦術スキャンをしろと』
「うるせえ……! 最強の主人公が最初の一撃を食らうのは、お約束の前戯だろうが……!」
ルーニーは腹から血を吐きながら、ニヤリと笑った。
闇医者は眉をひそめる。
「何がおかしい? 私のチタン製メスは、お前の安物のバイタルケーブルを完全に切断したはずだ」
「お前、手先は器用だが『遊び』を知らねえな。……俺がなんで避けなかったか、教えてやろうか?」
ルーニーは、自身の腹を貫く医療アームを両手でガッチリと掴んだ。
「こうすりゃ、お前は俺から『逃げられない』からだよ!」
「なっ……!?」
焦ってアームを引き抜こうとする闇医者だが、ルーニーの違法ナノマシン『プロトタイプ・レギオン』が傷口の肉と金属を瞬時に癒着させ、アームを体内へロックしてしまっていた。
「痛覚キャンセラーなんて切っちまえ、マリア! このヒリつくビンビンした痛みとアドレナリンが、俺のガソリンなんだよ!」
ルーニーは腹に敵のアームを突き立てたまま、強引に前進する。
踏み込むたびに、腹を抉る不快な音が工場内に響く。
そして、圧倒的な重量と硬度を誇る『無骨な手斧』を、闇医者の精密でデリケートな医療ギミックの関節部に、フルスイングで叩き込んだ。
メキィィィッ!!
「ギャアアアアッ!? 私の、私の最高級ドイツ製マイクロモーターがぁぁっ!!」
「精密機械ってのは、泥水と物理的暴力に弱くていけねえな!」
ルーニーは狂ったように笑いながら手斧を何度も叩きつけ、敵の機材をただの鉄くずに変えていく。
そして、闇医者の右腕である『医療用チェーンソー』の根元を斧で叩き斬り、無理やり引き剥がした。
「腕の次は、腹に穴が空いちまったなぁ! マリア、こいつを俺の『腹の断面』に直結しろ!」
『……マスター。そこは胃袋であってUSBポートではありません。普通はどう考えてもプラグイン不可、それに倫理的にも絵ヅラ的にも最悪です』
ガコンッ! ギュイイイイイインッ!!
ルーニーの腹部に突き刺さったチェーンソーが、彼のナノマシンと結合し、けたたましい爆音と共に刃を回転させ始めた。
「おおっ……! 腹の底から直接チェーンソーのエンジン音が響きやがる……! 腸が煮えくり返るような最高の振動だぜぇ!!」
腹からチェーンソーを生やした血まみれの狂人が、爆笑しながら迫ってくる。
「ヒィィッ!? 狂っている! 医療の、いや人間の尊厳への冒涜だ!!」
「コンプラ重視の解体作業を見せてやるよ!」
ルーニーは腹部のチェーンソーで工場のメインサーバーを両断し、そのままの勢いで闇医者の義体を『ダルマ落とし』のように粉砕した。
工場が火の海に包まれ、証拠のデータが火花を散らす中、ルーニーは満足げに息を吐いた。
「さて、黒幕のデータはぶっこ抜けたか、マリア?」
『ええ。回収したパーツのシリアルナンバーから、とある巨大企業の影が……』
―――その時だった。
工場の分厚い防爆壁が、外側から紙屑のように吹き飛ばされた。
濛々と立ち込める粉塵の中から現れたのは、白磁の装甲に身を包んだ、アイスブルーの髪の美少女。
いわゆる「警察」のエリート部隊、ポリス・エンフォーサーだ。
ルーニーのような輩が、彼らの目の敵にされない理由はシンプルに無かった。
「見つけたぞ、下賤なスクラップ! 貴様のような汚物は、私がここで廃棄処分にしてやる!」
少女――フィオーラが、散弾銃を構えて冷酷に言い放つ。
ルーニーは血とオイルに塗れた顔を上げ、腹のチェーンソーを回しながら下品な口笛を吹いた。
「おっと、おっかねえ猟犬のおでましだ。だが……お前のその胸の排熱スリット、エロくて最高だな。俺の極太ケーブルを挿して、たっぷりクーリングしてやろうか?」
フィオーラの端正な顔が、怒りと羞恥で瞬時に「真っ赤」に染まった。
アイスブルーの髪が静電気で逆立ち、胸のスリットからプシュー! とピンク色の蒸気が吹き出す。
「こっ、この破廉恥な汚物がぁぁっ!! 死ね! 今すぐ死ね!!」
ガシャコン! ズドォォォン!!
『……同性として同情します。慰謝料の請求書はこちらへ』
マリアがフィオーラの脳内にルーニーのアジトの住所をそっと送信したと同時、圧倒的な散弾銃の火力がルーニーを襲う。
最悪の鬼ごっこが、今幕を開けた。
おいおい、また最後まで読んだのか? てめえも相当な物好きだな。最後まで付き合ってくれてサンキューな!
……ん?腹部直結のチェーンソーはどこかで見た? 気のせいだろ。
もし「最高に狂ってやがる!」と思ったら、四の五の言わずにすぐ下にある【♡(応援ボタン)】を遠慮なく俺の大事なトコにブチ込んでくれ!
トップページにある【★評価】や【フォロー】も忘れんじゃねえぞ。てめえらの熱い「モノ」が、俺の次の『祭り』をさらにド派手にする極上の燃料になるからな!
『……マスター。毎話毎話、読者に下品な媚びを売るとは本当に最低ですね、早くBANされればいいのに』




