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最悪のモーニングコールと極上のプラグ・イン

ネオン・アビスの最下層。

酸性雨の臭いが染み付いた安宿のベッドで、ルーニー・ヴァレンタインは最悪の目覚めを迎えていた。


傍らには、昨晩呼んだ旧型のアンドロイド娼婦が横たわっている。


『マスター。心拍数およびアルコール血中濃度が致死量の一歩手前です。腹上死ふくじょうしする前に速やかな起床を推奨します』


脳内に直接響く、氷のように冷徹な女の声。管理AIの『マリア』だ。


「うるせえな……。昨日の夜は最高だったんだよ。お前のその安物の人工皮膚(スキン)、妙に感触が良くてな。もう少しこの柔らかいところを……」


ズキズキと痛む頭を押さえながらルーニーが愚痴った、その時だった。


――ドゴォォォォンッ!!


安宿の薄汚いドアが、壁ごと吹き飛んだ。

粉塵の中からぬっと現れたのは、全身を安物の軍用義体で固めた重武装のギャング三人組。


「借金の取り立てか? 朝のゴールデンタイムを邪魔するんじゃねえよ」


ルーニーが舌打ちした瞬間、先頭の巨漢が躊躇なく右腕に仕込んだ大口径の重散弾銃ヘビーショットガンをぶっ放した。


爆音。そして、血肉の弾ける音。


ルーニーの左腕が、サイバネティクス化された肩のジョイントごとあっさりと吹き飛び、部屋の壁にベチャリと張り付いた。


「……あーあ。せっかくいい気分だったのに、ベッドが血まみれじゃねえか。どう落とし前つけてくれんだ、ええ?」


「腕をぶっ飛ばされてもまだ吠えるか、このガラクタが! ハチの巣にしてやらぁ!!」


残る二人のギャングが重機関銃のトリガーを引く。狭い部屋の中で、無数の弾丸がルーニーのヒトと機械サイボーグのハイブリッドボディに情け容赦なく叩き込まれた。


安物の人工装甲が弾け飛び、肉が抉られ、下地となっていた金属骨格が剥き出しになる。

オイルと赤い血液が混ざり合って派手に飛び散った。過剰分泌オーバードーズ寸前のアドレナリンと、脳髄を焼き切るような激痛。

普通ならショック死するダメージだ。


しかし、肉体がボロ雑巾のようにミンチにされながらも、ルーニーは血を吐きながらニヤニヤと下品な笑みを崩さない。


「ああっ……! 激しすぎるぜお前ら……っ! もうちょっと、優しくゆっくり壊してくれよ……! 作者の(しっぴつ)が追いつかなくて、読者が置いてきぼりでイかせてもらえないだろうが……っ!」


『マスター。極度のメタ発言と被虐趣味(マゾヒズム)のハイブリッドは、読者のブラウザバックを誘発します。さっさと反撃してください』


「わかってねえなマリア。溜めが長い方が、最後に出すカタルシスが気持ちいいんだよ!」


ルーニーは飛び散る自身の血肉を意に介さず、ベッドの脇に立てかけてあった無骨な『手斧』を右手で掴み取った。

常人離れした脚力で床を蹴り、驚愕に目を見開く先頭の巨漢の懐へ潜り込む。


「現場の安全第一だぜ、クソ野郎」


―――閃刃(じんせん)


分厚い装甲ごと、巨漢の散弾銃付きの右腕が根元から叩き斬られる。

悲鳴を上げる間も与えず、ルーニーはその無骨な重火器アームを空中でキャッチすると、自身の血が滴る左肩の断面に、ガチャン!! と力任せに押し付けた。


ルーニーの体内に潜む違法ナノマシン『プロトタイプ・レギオン』が瞬時に起動する。

ちぎれた神経と無機物の回路が強引に結合し、肉が焼ける匂いと共に、青白い火花が激しく散った。異常な結合の激痛すらも、ナノマシンが強制的に快楽物質へと変換していく。


「おおっ……! こいつのUSB端子、俺のボディと相性バツグンで……」


ルーニーは目を血走らせ、恍惚とした表情で叫んだ。


「イッちまいそうだぜぇ……!!」


『……それは右腕ですよ?下品な上に接続プロトコルを完全に無視しています。衛生観念も皆無、不潔極まりありません。マスターの脳をショートさせてもよろしいですか?』


「溜めた分、盛大にブッ放してやるよ!!」


マリアの冷酷なツッコミをBGMに、ルーニーは完全に『自分の左腕』として適合した重散弾銃みぎうでを構えた。


「さーて、てめえらの極上のパーツ、俺の血肉(ジャンク)にしてやるよ」


数秒後。安宿の一室は、ギャングたちのスクラップと肉片の山に変わっていた。


「ふぅ。朝の運動にしちゃハードだったな」


ルーニーが手斧の血振りをしながら振り返ると、ベッドの隅で娼婦のアンドロイドが震えていた。

流れ弾がかすったのか、彼女の胸元の人工皮膚が破れている。


「オイオイ、大丈夫か? 修理代はアイツらの財布から……」


ルーニーは言葉を失った。

破れた皮膚の奥から覗いていたのは、スラムの安物アンドロイドには絶対に搭載されていないはずの、青白く発光する『企業製の超高規格データストレージ』だったからだ。


『マスター。彼女のパーツ、巨大企業メガコーポの最新鋭プロトタイプです。関われば生存確率が著しく低下します。即刻見捨てて逃亡することを推奨します』


マリアの警告が鳴り響く。昨晩抱いた娼婦は、とんでもない爆弾だったというわけだ。

だが、アンドロイドは、瓦礫の上に座り込むルーニーを真っ直ぐに見据えて真剣な表情で言った。


「……あなたは確か、このスラムで『何でも屋』をされていましたよね?」


「ああ? まあな。借金取りの相手から、裏通りのドブ掃除まで何でもござれだ」


「では依頼です。私の『姉妹たち』が、次々とさらわれ、解体されています。どこかの組織が、私たちを部品取りにしているのです。どうか……彼女たちを救ってくれませんか?」


目の前にある、出所不明のヤバすぎる企業製パーツ。

普通なら首を突っ込むべきではない。だが、ルーニーの口角は三日月のように歪み、その目は最高の玩具を見つけた子供のようにギラギラと狂った光を放ち始めた。


「ハッ……! 誰の仕業か知らねえが、最高に血生臭くて楽しそうな『祭り』の匂いがプンプンするじゃねえか。ここ最近、退屈で死にそうだったんだよ!」


ルーニーは血まみれの手斧を肩に担いで立ち上がり、下品なウインクを飛ばした。


「引き受けてやるよ。だがタダじゃねえぞ。この祭りが終わって無事に帰ってきたら、打ち上げ代わりに俺の『極太ケーブル』で、お前のその柔らかいところをもう一度たっぷり堪能させろよ?」


『……悲惨な連続誘拐事件を娯楽として消費し、その上対価にセクハラを要求するなど、あなたの倫理回路はいったいどうなっているのですか』


「俺の脳髄はいつだって楽しいことしか求めてねえんだよ! いちいちうるせえコンプライアンスAIは黙ってろ!」


ルーニーは高らかに笑い飛ばし、安宿の瓦礫を蹴り飛ばした。

ネオン・アビスのド底辺。最高に危険で謎めいた依頼は、下品でイカれた最強の男の狂気によって、あっさりと引き受けられた。

おいおい、最後まで読んだのか? てめえも相当な物好きだな。最後まで付き合ってくれてサンキューな!

もし「最高に狂ってやがる!」と思ったら、四の五の言わずにすぐ下にある【♡(応援ボタン)】を遠慮なく俺の大事なトコにブチ込んでくれ!

トップページにある【★評価】や【フォロー】も忘れんじゃねえぞ。てめえらの熱い「モノ」が、俺の次の『祭り』をさらにド派手にする極上の燃料になるからな!

『……マスター。読者にまで下品な媚びを売るとは本当に最低ですね』

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