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雨の国  作者: Hoshino Yodaka
8/14

夢の中



ーーーそれから雨は降り続いた。




 ランプの灯りが、湿った空気にやわらかくにじんで、光っている。それはまるで夢の中、小さな星を散りばめたように。





 市場や船には屋根が付き、あたりは雨粒が軽やかに弾ける音に包まれる。



 強い雨の日は、少し低く重たいリズムで1日がはじまって、家の中は淹れたてのコーヒーや紅茶、湯気の立つスープやパンの焼ける香りが広がる。


 その香りの中、織物や読書、手紙なんかを書くだろう。



 霧雨の日は、ささやき声のようにやさしいリズムで、外へ出て畑仕事や船の手入れをして過ごすだろう。



 あまりにも長く降り続く雨、洗濯物はなかなか乾かないし、靴はいつも少し湿っている。




 それでも、この国の住人は、料理をしたり、服を繕ったりして、「この雨が過ぎるころには、きっと何か一つ出来上がっているわ」なんて思いながら、毎日が奇跡に溢れているかのように大切に暮らしている。



そんな穏やかなひとときが、何よりも贅沢だった。




 地面はゆっくりと、眠りにつくように沈んでいく。


 人々は家が完全に沈んでしまわないうちから、少しずつ形を変え、小さな引っ越しを始める。


 窓を開けると、水面はもうすぐそこにある、「この家は、もうじゅうぶんに役目を果たしてくれたわ」と言って、最後の夜にはランプを灯し、そこで暮らす人々は、雨音に耳を澄ませながら思い出を語る。



 それは慌ただしいものでない。まるで季節が春から夏へ移り変わるように静かなものだった。




 霧雨の静かな夜には、水底の方から、かすかな音が届くことがあるかもしれない——


それは、いつかの使われなくなった古道を、

歩く“記憶”の足音なのか。





 少し悲しい。けれど、美しい雨の国。


水は記憶を運び、思い出は雨に守られて、静かに眠っていく。ーーー







 ノヴァは、窓を打つ雨音で目を覚ました。





挿絵(By みてみん)











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