行き交う船
滝を探して森の奥へと船は進んだ。
しかし、その日あの滝を見つけることはできなかった。
西の太陽は沈み始め、あたりはだんだん暗くなり重たい雲に包まれる。
支柱に吊るされたランプの灯は優しくゆらゆらと揺れて、ノヴァとキリの片側を照らしていた。
ノヴァとキリを乗せた船は進み、船着場の方へ戻りながら、光の浮かぶ薄暗い雨の国を見ていた。
光の中へ進んでいくと船着場のあたりには、蒸気の立ち昇る船上の露店や、果実や野菜、卵や香辛料など、さまざまな商品を扱う船上の店が並んでいる。ランプの灯に照らされた人や物が船から船へ行き交っていた。
ノヴァは、船の支柱に旗を掲げると、魚や貝を商品に店を構える。
「この魚を2尾おくれ」
「ああ、何と変えようか」
ノヴァは、アケビの籠を受け取り、魚を2尾入れながら聞いた。
「アヒルの卵はどうだい?」
「いくつある?」
「今あるのは、4つ。昨日産んだばかりのやつさ」
「いいね、じゃあそれと貝をいくつかつけよう」
「あら、いいのかい?」
「ああ、またよろしく」
そう言いながら、魚の入った籠に貝をバラバラと放り込み、手渡した。
「キュウ!」
キリは、カバンに入れていたぬいぐるみをクチバシでテーブルに座らせると声を上げた。
「キリも、いつも魚をありがとうね」
その言葉の意味がわかったのかわからないのか、キリはパタパタと羽を震わせると、ぬいぐるみをテーブルから下ろし、自分の横に座らせていた。
夜は更け、船の灯が消え始めると水面を伝い、辺りに広がっていた暖かさも、そこに留まることなく冷たい静けさが一辺を支配した。
船着場に船をつけ、木の足場に飛び移る。
キリは眠そうに、目をパチパチしながら大きくあくびして、ブルっと体を震わせる。
ノヴァは係船ロープで船をしっかり固定してから起き上がった。
「キュ!」
キリはノヴァの顔を見て何か伝えると、寝床の方に向きをかえ、ペタペタと歩いて、水に飛び込んだ。
ノヴァは腕を組み、キリの方を見ながら柱にもたれかかった。「また明日」と静かに呟いて、小さくなっていくキリを、その波の揺れが見えなくなるまで見送った。ノヴァは、ここにキリを縛りつけることはしない。それでも、ともに過ごせる一分一秒を大切にしていた。
重たい雲は集まって、静かな夜にまた雨が降り始める。




