表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨の国  作者: Hoshino Yodaka
7/14

行き交う船


 滝を探して森の奥へと船は進んだ。

しかし、その日あの滝を見つけることはできなかった。


 西の太陽は沈み始め、あたりはだんだん暗くなり重たい雲に包まれる。

支柱に吊るされたランプの灯は優しくゆらゆらと揺れて、ノヴァとキリの片側を照らしていた。


 ノヴァとキリを乗せた船は進み、船着場の方へ戻りながら、光の浮かぶ薄暗い雨の国を見ていた。


 光の中へ進んでいくと船着場のあたりには、蒸気の立ち昇る船上の露店や、果実や野菜、卵や香辛料など、さまざまな商品を扱う船上の店が並んでいる。ランプの灯に照らされた人や物が船から船へ行き交っていた。


 ノヴァは、船の支柱に旗を掲げると、魚や貝を商品に店を構える。


「この魚を2尾おくれ」

「ああ、何と変えようか」

ノヴァは、アケビの籠を受け取り、魚を2尾入れながら聞いた。


「アヒルの卵はどうだい?」

「いくつある?」

「今あるのは、4つ。昨日産んだばかりのやつさ」

「いいね、じゃあそれと貝をいくつかつけよう」

「あら、いいのかい?」

「ああ、またよろしく」

そう言いながら、魚の入った籠に貝をバラバラと放り込み、手渡した。

「キュウ!」

キリは、カバンに入れていたぬいぐるみをクチバシでテーブルに座らせると声を上げた。

「キリも、いつも魚をありがとうね」


 その言葉の意味がわかったのかわからないのか、キリはパタパタと羽を震わせると、ぬいぐるみをテーブルから下ろし、自分の横に座らせていた。



 夜は更け、船の灯が消え始めると水面を伝い、辺りに広がっていた暖かさも、そこに留まることなく冷たい静けさが一辺を支配した。


 船着場に船をつけ、木の足場に飛び移る。

キリは眠そうに、目をパチパチしながら大きくあくびして、ブルっと体を震わせる。

ノヴァは係船ロープで船をしっかり固定してから起き上がった。


「キュ!」

キリはノヴァの顔を見て何か伝えると、寝床の方に向きをかえ、ペタペタと歩いて、水に飛び込んだ。


 ノヴァは腕を組み、キリの方を見ながら柱にもたれかかった。「また明日」と静かに呟いて、小さくなっていくキリを、その波の揺れが見えなくなるまで見送った。ノヴァは、ここにキリを縛りつけることはしない。それでも、ともに過ごせる一分一秒を大切にしていた。


 重たい雲は集まって、静かな夜にまた雨が降り始める。



挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ