びのの未来
暗闇から目を開けると、そこは自分の机だった。
「えっと……」
あれ?
何してたんだっけ?
ふと、卓上カレンダーが目に入る。
2月18日に赤丸がしてあり、試験と書かれていた。
そっか、今日は大切な大学試験の日だ。
今年で2度目の。
そうだ、僕は昨晩、数学の最後の復習をしていたんだ。
去年は学力不足で落ちてしまったからな。
今年は、一生懸命、勉強を頑張ったんだった。
受かるかどうかはわかんないけど、自分なりにがんばったんだ。
今年こそ、合格するぞ!!
……って、ちょっと待って。
机の上で寝て立ったことは、僕、今、寝落ちしてた?
ん?
今何時だ?
背筋がゾッとして、慌てて時計を探す。
午前7時30分。
危ない、危ない、あやうく寝過ごすところだった。
今から家を出れば、試験会場へは余裕で間に合うだろう。
僕は試験会場へと向かうために階段を駆け下りた。
その途中、「いたたたたたた」
腹痛が僕を襲った。
なんで、こんな時に。
お腹の痛みとともに僕の意識は、暗闇の中へと落ちていった。
…………
……
目が覚めた時、見知らぬ白い天井が目に入る。
あれ? ここは?
試験は?
ベッドから上半身だけ起こし、辺りを見回す。
ここは、病室か?
周りにもベッドがたくさんあったので、つまりはそういうことなのだろう。
『……こんにちは、2月19日、お昼12時を回りました』
誰かがつけっぱなしにしていたラジオの音声が耳に入ってきた。
え?
2月19日?
そうか、昨日、僕は倒れたんだ。
それで、入院という形になったのだろう。
1年間、寝る時間も惜しんで勉強したのに……
頑張ったのに、受けられもせずに終わるなんて……
また、浪人生活のスタートだ……
うわーーーーーーーー!!
僕の視界は暗闇に包まれた。
…………
……
目を開けても、そこは、暗闇だった。
あれ? 僕、何していたんだっけ?
3年間の浪人生活を経て、大学になんとか入学したことまでは覚えている。
そこからがまるで思い出せない。
思い出せ、思い出せ――
そうだ、今、僕は、部屋の布団の中でひきこもっているんだ。
なんで、ひきこもっているんだろう?
色々なことがありすぎて、思い出せない。
でも、一つだけ分かっていることがある。
死にたいという感情だ。
この感情だけは、嘘偽りのない事実であり、僕の心の隣に居ついている。
死にたい、死にたい、死にたい。
ああ、もっと僕がかっこよければ、僕の頭が良ければ、僕がスポーツ万能なら、僕に文才があれば、僕に絵心があれば、僕にコミュニケーション能力があれば、どれか一つでもいいから、僕に備わっていれば、こんな思いはしなくてすんだのに。
どうして、僕は何もないまま生まれてきたんだろう?
ああ、死にたい……
死にたい、死にたい、死にたい……
死にたいという言葉に囚われ、頭がガンガンする。
僕の意識は、暗闇の中へと落ちていった。
…………
……
暗闇の中、僕は目を覚ました。
今、頭痛がしてる……
なんで、僕、こんなに頭が痛かったんだっけ?
そうだ、僕、自分で起業した会社を潰してしまったんだ。
無能な僕が会社を興したせいで、社員を路頭に迷わすことになってしまったんだ。
僕が会社を潰した……
僕が会社を潰した……
僕は、生きていてもしかたないのかもしれない。
僕は、死んでしまったほうが世界に迷惑をかけないのかもしれない。
僕は……
僕は…………
うわーーーーーーっ
目の前が真っ暗になる。




