びの、大凶から、今までのことを教えてもらう
「お前がいけないんだぜ。俺と戦うたびに、2100回も今までの努力が無駄になることを想定するから」
大凶はあきれ顔だ。
「戦うたびに?」
「ああそうか、俺の能力で過去のことは覚えてないことになってるのか。じゃあ、今回は特別にそれも教えてあ・げ・る」
妖艶な言い方をする大凶。
何故だか知らないが、背筋がゾワゾワとした。
「俺の能力は、因果律・畏怖。この能力は、さっき説明したみたいに、相手が想定しうる、嫌な可能性を引き起こす」
「嫌な結果……」
「そう、例えば、過去の坊やが、『大凶はもしかしたら、僕のステータスを1に固定してしまうかもしれない』……と思えば、ステータスが1から上がらない」
そっか、過去の僕がステータスが上がらないって思ったのか……
その過去の僕のせいで、今の僕はステータスが上がらないじゃないか……
……って、僕のステータスがあがらないのは、過去の僕のせいってこと?
何やってんだよ、過去の僕……
ん? 待てよ。つまり、結局、僕のせいじゃないか。
「例えば、過去の坊やが、大凶は、装備を無力化してしまうかもしれないと思えば、装備は何の価値もなくなってしまう」
え? 僕が何も装備できないのも、僕のせいってこと?
「そして、僕と覧の今までの努力が無駄になるかもしれないと思えば、もう一度最初から旅をやり直すことになる。お分かり?」
「嘘でしょ?」
そんなこと、嘘だと信じたい。
「ほ・ん・と・う」
たった四文字の言葉で、無慈悲なまでに現実をたたきつけてくる大凶。
「じゃあ、僕が攻撃スキルを全然取得できないのは……」
「それは、俺の力じゃない」
「そうなんだ……」
僕がスキルを習得できないのは、生まれつきなのか……
「それにしても、覚えてないとはいえ、2100回も繰り返して、また同じ結論を出すとは、つまらねーな」
「何がつまらないというんだ?」
「想像力のない坊やが面白い想定しないから、つまらねーと言ってんだ。タイムリープの焼き増しじゃねーか」
「鯛、無理、イプの焼き増し?」
確かに、鯛がイプを焼くのは無理だろうけど……
何言ってるんだ?
「タイムリープだよ、タイムリープ。時間を巻き戻して、何度も同じことをさせることだよ」
「そうか、そのタイムリープの魔法を僕にかける気だな?」
「そうだな。カシズ女神の格好になって、坊やのステータスをマックス値まであげて、『びの様、この世界をお助けください』とかお願いして、坊やを持ち上げてから、実は夢オチでしたー……なんてことをするだろうよ」
「それって、この世界に来る前に見た夢……」
どういうことだ?
何故、大凶が僕の夢の内容までわかってるんだ?
分かった。
大凶は、人の夢を盗み見る能力があるということだな。
「その様子だと、まだ、いまいちピンときてないようだな……」
いまいちどころか、全くわからない。
「その夢に出てきたのが、俺なんだよ」
「なんだってー!!」
夢にでてきた女神カシズが、まさかの大凶!!
「俺の大鏡の能力は、色々なものをみせることができる。過去でも、未来でも」
「僕の未来もわかるってこと?」
「わかるぜ……って、知りたいのか? 未来が」
すっごく知りたいというわけでもない。
全然知りたくないといったらウソになるけど……
「いつもなら、ここで時間を戻すんだが、今回は2100回記念で特別に趣向を変えて、もしも、俺を倒して、覧と共に元の世界に戻った場合のパラレルワールドをちょっとだけ見せてやるよ!!」
ん? 元の世界に戻った世界?
それってつまり、ハッピーエンドな未来が見れるってことだよね?
「そう、坊やが夢にまで見た、元の世界に帰れる世界だぞ。喜べよ。あ、もちろん、坊やが畏怖にかかっている、俺にとって最高の未来な」
僕にとってじゃなくて、大凶にとって最高の未来……
僕が畏怖にかかっている最高の未来って、もしかして、僕が困った世界のことだよね……
……って、しまった。
もしかしてで考えてしまった。
つまり、これって……
にやりと嗤う大凶。
「因果律・畏怖」




