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『旅野びの』と『戻衛覧』の異世界漂流記 ~ステータスがファンタスティック~  作者: いたあめ(しろ)


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びの、カシズといちゃいちゃする

 あれ? どこかで女性の声がする。


「びの様、びの様」


「女神カシズ」


「そうです、私が女神カシズです」


「何で、自分で自分の名前を呼んでいるの?」


 僕が自分で、名前を呼ばれて、『そうです、僕が旅乃びのです』……って言ったら、間違いなく変だ。


「申し訳ございません、勇者びの。勇者びのがあまりにも格好よくて、つい……」


「え? 僕が格好いい?」


「ええ、キスをしたいくらい」


「キ……キス?」


 あわわわわ……女神さまにキスされる? この僕が?


「な……なんで急に」


「それは、その……皆まで言わせないでください……」


 大凶を倒す一歩手前の最終局面でキス?


 このいつ襲われてもおかしくない状況でキス?


 両手の手汗が半端ないんだけど……


 ……って、あれ? 僕、何も持ってない?


「僕の空気銃が見当たらないんだけど」


「それは、そうです。ここは、びの様の心象世界なのですから」


「新、小世界?」


 なんだそれ?


「簡単に言うと、武器なんかいらない平和な世界ってことですわ」


「……ということは、ここには、誰もいないの?」


「もちろん。私と勇者びの以外いませんわ。どこかに小学生くらいの小さな嫉妬虫が約1名いるかもしれませんが」


「嫉妬虫?」


 はじめて聞く名前の虫だ。


 しかも、小学生くらいなら、大きいよね? その虫。


「ああ、こっちの話です。お気になさらずに」


 女神カシズは、何のことを言っているんだろう?


「今は平和かもしれないけど、いつ大凶が襲ってくるかわからないから、女神カシズも気を抜かないで」


「まあ、怖い……」


 僕の服の裾をつかむ女神カシズ。


 しまった、女神を不安にさせてしまった。


「大丈夫、僕がいるから」


「頼もしいですわ」


「いやー、そんなことないよ。むっ、あっちに何かの気配が……」


 適当に誤魔化しつつ、女神カシズと距離を置く。


「そういえば、女神カシズは、大凶がどんな力を持っているか知っていたりする?」


「大凶のことが気になるのですか? 大凶のことが好きなのですか?」


「好きじゃないけど、これから倒さなくちゃいけないんだし」


「私が知っていることをお教えいたしましょうか?」


「え? 何か知っているの?」


「ええ、少しだけ」


「教えて」


「びの様、大凶は、因果律・畏怖という技を使って、運命に干渉してくるのでございます」


「運命にかんしょう?」


 映画観賞会みたいなものか?


「びの様、大凶は相手が、『もしかしたら……かもしれない』と想定したことをそのまま可能にするのです」


「ん? どういうこと?」


「びの様も、こんなこと嫌だな、できたら避けたい……と思ったことはありませんか?」


「そんなの、毎日だよ」


「それを大凶はしてくるのです」


「ん? よくわからなくなった」


 僕には難しすぎる。


「例えば、覧様が大凶を簡単に氷漬けにしたとしましょう」


「簡単に? そんなことができるの?」


「覧様なら可能でしょう」


「さすが覧、すごい」


 さすが覧は天才だ……


 あれ? そういえば、何で覧がいないんだろう?


 ここが僕の心象世界だからかな?


「びの様、お話を続けてよいですか?」


「ああ、ごめん、ごめん」


 今は大凶の話だよね。


 せっかく女神様が教えてくれてるんだから集中してきかないと。


「大凶を氷漬けにしたとしても、こんなに簡単に氷漬けできるの? もしかして、ボクが氷漬けにしたのは、偽物じゃないか……と覧様が思ったら、大凶は能力を発動し、氷漬けになっているのは偽物だということになってしまうのです」


「え? 本物は?」


「本物は、偽物と入れ替わり、覧様に攻撃をするでしょう」


「え? 何、その能力? 超強いじゃん」


 そんななんでもできる能力に対抗できるのだろうか?


「ええ。その後、覧さんが、大凶と戦っている最中、もしかして、大凶は時間を戻しているのでは……と思った瞬間、大凶は、時間を戻す能力を一時的に手にします」


「時間を戻すなんて、すさまじい能力だ」


「その後、覧さんが、もしかして、びの君は、女神カシズに化けた大凶といちゃいちゃラブラブしているのかもしれない……と思った瞬間、大凶は、びの君と仲良くいちゃいちゃラブラブしていることになっているのです」


「へー、さすが、女神カシズ。なんだか、見てきたみたいに話すね」


 大凶のことに詳しいんだな。


 もしかして、僕のためにわざわざ調べてくれたとか?


 そうだとしたら、照れるなー。

 

「まだ気づかねーのかよ」


「え? 今、何か言った?」


 なんか、急に女神カシズの口調がかわったような……


「いいえ、何も。ちなみに、勇者びの様が今起こったら嫌なことってなんですか?」


 僕?


「それは……」


「ふーん、今までの努力が水の泡になってしまうことか」


 あれ? なんで、女神カシズは僕の心を読んだんだろう?


「待って、君、本当に女神カシズ?」


「やっと、疑い始めたか」


 短髪になり、髪の色が銀色へと変わっていく女神カシズ。


 いで立ちも異なり、褐色の肌に黒いビキニ姿だ。


「俺の名前は、魔王、大凶」


「え? 女神カシズじゃないの?」


「ちげーよ。ここまで説明されてまだ状況理解してないとか、すげーな、お前」


「いやー、それほどでもないよ」


「褒めてねーから」


「それにしても、坊や、全然想像力がないな。魔王と対峙して、恐怖するイマジネーションがないのかね? こいつ、無敵なんじゃないの? ……とかさ。今回もまた、今までの努力が水の泡になってしまう……って想像力なさすぎだろ」


「今回もまた……って、どういうこと?」


「教えてあげようかな。それともやめようかな。どーしよっかな」


 何を言っているんだ、大凶は。


「あ、今回、キリの良い数字か。じゃあ、お姉さんが、特別に教えてあ・げ・る」


 ドS感たっぷりの笑みをする大凶。


「あのな、びの、坊やは、この世界2100回繰り返してるんだ」


「え?」


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