覧、大凶と出会う
金字塔の中は暗くなっていて、前が見えない。
「索敵魔法」
「何かいる?」
びの君に尋ねられた。
「今のところ、半径12メートル以内には何もいないみたい……ファイヤー」
ボクは、持ってきていた松明に明かりを灯し、足元を照らす。
「キデギスの話だと、調査隊は帰ってこなかったって言う話だけど、本当なのかな? 遺体とかもなさそうだけど……」
「もしかしたら、ミイラにされてるとか?」
「ああ、あり得るね。ここ、ピラミッドだしね」
ボクはびの君と調子を合わせる。
「あ、あれ……」
びの君は突然駆け出した。
「びの君?」
「あれは、もしかして、女神カシズじゃない?」
びの君が見つめる視線の先には、何もない。
「え? そっちには誰もいないよ、びの君!!」
ボクの声が聴こえていないのだろうか?
ボクの呼びかけにも応じず、びの君は見つめた先の方へと走っていった。
おそらく、大凶の罠だ。
「待ってよ、びの君」
走りだそうとすると、目の前に、ビキニ姿のボーイッシュそうな女性が腕を組んで、ボクの前に浮遊していた。
例えるなら、胸の小さいサキュバスとでもいえばいいのだろうか……
さっきまでは、何もなかったのに……
いつからここにいた?
「はははは、女神カシズだってよ? 勇者びのにも、幻覚魔法は効くんだな……」
「貴女は?」
「俺? 俺の名前は、大凶っていうんだ」
「貴女が大凶」
大凶……この魔王を倒せば、帰れる。
焦るな。
「ステータスチェック」
まずは、相手のステータスを確認。
大凶LV666
HP:666(+0)
MP:666(+0)
種族:魔王
筋力:666(+0)
体力:666(+0)
耐性:666(+0)
敏捷:666(+0)
魔力:666(+0)
魔耐:666(+0)
運 :666(+0)
ステータスを開示している……だと?
どういうことだ? これも罠?
嘘とは思えないけど……
とりあえず、全力で凍らせてやる。
「絶対凍結」
「ふーん、相手を凍結させる魔法か……」
「逃げないの?」
「逃げるまでもないからな」
足を凍らせても、腕を組んで浮遊したまま微動だにしない、大凶。
くっ、ボクの最強呪文でダメージを与えているはずなのに、なんなんだ、この余裕は?
カウンター系の魔法を狙ってる?
それとも、特殊な倒し方をしないと倒せないのか?
「おや、もう終わりか?」
「まだ、終わりじゃない」
「絶対凍結」
ボクは狙いをつけて、的確に魔法を当てていく。
「ぐはー」
よし、下半身を完全に凍らせた。
あとは、上半身のみ。カウンター魔法に注意しながら、もう一度。
「絶対凍結」
いいぞ、全身を凍らせた。
だが、何なのだろう?
この心がざわつく感じは……
あまりにもあっけなさすぎる。
いや、魔王を倒すのに簡単に越したことはないのだが、本当に、このまま倒せるのか? 大凶を氷漬けにしたまま?
ボクは氷漬けになっている、大凶の顔を覗き込んだ。
腕を組んだまま、嗤っている。
氷漬けにされたというのに、嗤っているぞ、この女。
まるで何かを企んでいるかのような、まるで最初から氷漬けにされることを知っていたかのような表情だ。
氷に全反射した僕の顔が恐怖で青ざめているのが分かった。
待て待て、何で氷漬けになっている大凶は嗤っていて、なんで氷漬けにされていないボクが恐怖で青ざめているんだ。
これじゃあ、立場が逆じゃないか……
ボクのほうが優位な立場にあるんだ。落ち着け、落ち着け。
自分で自分を落ち着かせ、念のため、大凶のステータスを確認する。
よし、本物だ。
分身でもないし、嘘八百万のような特殊スキルで誤魔化しているわけでもない。本物の大凶なのだ。
もしかしたら、氷の中にいる大凶はすでに幻で、氷の中から大凶は逃げているという可能性もあると思ったが、考え過ぎだったな……
大凶のHPはあと6。
このまま時間が経てば、HPがなくなり、虚空へと消えるだろう……
でも、もしかしたら、氷漬けの耐性があるかもしれない。
念には念を入れて、氷漬けのまま大凶をを倒したほうがよさそうだ。
そうだ。
氷も微量ながら電気を通すはずだ。
電気を流してダメージを与えるしかない。
「サンダーボルト」
ずぎゃぎゃーん。
氷漬けになった大凶の上から、確かに雷を流した。
これで終わりのはずだ。




