びのと覧、いざ金字塔へ
目を覚ますと草木も眠る丑三つ時……かどうかはわからないけど、あたりは真っ暗になっていた。
「覧、そろそろ、準備をしよう」
僕は覧を起こす。
「うーん」
まだ眠たそうにする覧。
「今日は、星が綺麗だよ」
窓から空を見上げると、雲一つない満天の星空があった。
「うん、ボクとびの君のハネムーン日和だね」
「まあ、ハネムーンではなく、魔物退治だけどね」
「もう、ムードを壊さないでよ」
「いや、魔物退治にムードも何もないからね」
本当にリアルなおままごとはやめて欲しい……と思いつつ、僕は覧と外に出る。
外に出ると覧は、空飛ぶ本を敷きつめ始めた。
「びの君も手伝って」
「はーい」
覧と一緒に丁寧に一冊ずつ本を敷き詰める。
「びの君とボク、はじめての共同作業です」
「共同作業なんかいつもしているじゃないか」
「もう、雰囲気壊さないでよ」
茶化すように言う覧。
「最終決戦かもしれないね」
覧が真面目な口調で切り出した。
「そうだね」
もし、この旅が最終決戦になるんだとしたら、長かったような、短かったような……
「大凶を倒せば、僕達帰れるんだよね?」
「うん。多分」
「僕達、このステ-タスで、未知の魔王と戦えるのかな?」
「今までやってきた通り、全力を尽くすだけだよ、びの君」
本を全て敷き詰め終える。
「準備はいい?」
「いつでも」
僕と覧は、本の上に乗り、座る。
「それじゃあ、びの君とボクの二人だけの秘密のデート、スタート」
真面目な話をしていたのに、急にリアルなおままごとを始める覧。
「いや、魔王退治だから。ここ大切だから」
僕は慌てずに突っ込む。
「それじゃあ、魔王退治に出発!!」
覧が本に魔力を込めると、僕達を乗せた本は、ゆっくりと空へ舞い上がった。
「魔法の絨毯みたいだ」
本当に本が浮かび上がったので、テンションが高くなる僕。
「まあ、紙製だから、乗り心地は絨毯に劣るかもしれないけどね」
「そんなことないさ。ずっと乗っていられそうだよ」
「それならよかった」
「ほら、星々にも手が届きそうだよ」
僕は星に手を伸ばしながら、覧にアピール。
「ふふふ……そんなに喜んでもらえるとは思わなかったよ」
「すごいよ、覧」
「それじゃあ、行こうか、いざ『金字塔』へ」
…………
……
「びの君、見えてきた。多分、あれが金字塔だ」
スピードを押さえてもらったので、結局丸1日かかってしまい、満月が出ている。
「え? あれって、ピラミッドみたいだね」
暗くてよくは見えないが、形はピラミッドそっくりだ。
「金字塔って、一般的には、ピラミッドのことを言うんだよ、びの君」
「そうなの?」
「ひとつ賢くなったね、びの君」
「じゃあ、あれは誰かのお墓?」
「こっちの世界では、お墓としては使われていなかったみたい。どちらかというと古代の城かな……」
立派なお城ですね。
「そうだ、覧、金字塔に着く前に、これ」
僕は、絶景の夜景を背景に、小さな箱を取り出す。
「これって? 何?」
覧は小首をかしげる。
僕は小さな箱をぱかっと開けた。
「指輪? え? なんで?」
「魔力の指輪」
「どうしたの、びの君?」
「ミドラさんのところで注文しておいたんだ。覧がミドラさんのところへ行った時に、指のサイズを測ってもらって」
「びの君」
「このアンティークを装備すると、消費MPが10分の1に減るんだって。ほら、最後の決戦の前に、このアンティークがあれば、覧も助かるかなって思って……」
自分で言ってて恥ずかしくなり、覧の顔を直視できずに視線が下へといく。
「びの君、良かったら、びの君がつけてくれない?」
小さな左手を差し出す覧。
「うん、分かった」
えーと、こういうのって、どこの指につければいいものだったんだっけ?
あれ? そもそも、ミドラさん、どこの指に合わせて作ったんだろう?
親指……じゃ変だし、小指だと大きさ的に指輪が落ちちゃいそうだし、中指だと逆に入らなさそう……
迷いに迷った挙句、薬指に指輪をはめた。
「びの君、もし元の世界に帰れたら、結婚しよう」
「け、け、結婚? 何言ってるのさ、覧。僕達、まだ未成年だよ」
「ふふふ、冗談だよ」
あー、びっくりした。
「びの君、二人とも生きて帰ろうね」
「そうだね」
僕達は、金字塔を見学するでもなく、中に入った。




