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『旅野びの』と『戻衛覧』の異世界漂流記 ~ステータスがファンタスティック~  作者: いたあめ(しろ)


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びのと覧、大凶について調べてみる

「ねえ、覧、やっぱり大凶のことを調べようよ」


 酔狂を倒した翌日、僕は覧に提案する。


「もしかして、びの君、情けをかけようとしてるんじゃないでしょうね?」


 じーっと、僕の顔をみてくる覧。


「違うよ。敵を知り、己を知らば、百戦危うからず……でしょ?」


 血の流れない戦いを心の中で望んではいたのだが、ばれれば覧に反対されることは分かりきっていたので、覧が以前言っていた言葉を盾に僕は誤魔化した。


「まあ、そうなんだけどね」


「よし、それなら、聞き込み開始だ!」


 …………


 ……



「ねえ、なんで、大凶の情報がないの?」


 町の至る人に聞いてみても、何の情報も出てこない。


 町の人たちは最後の魔王の名前が大凶であることさえしらないのだ。


 名前もしらないのであるから、当然容姿も性格も分かるはずもない。


「ボクに訊かれても困るよ」


 覧は肩をすくめ、ため息混じりで僕に返答する。


「本当に居るのかな? 大凶?」


「もしかしたら、まだ、ジオフの世界で目覚めてないとか? ほら、魔王って、魔界からくるんでしょ」


「え? そんなことあるの?」


「仮定の話だよ。ゲームとかでよくあるじゃない? あるイベントをクリアしないと、出てこないってこと」


「じゃあ、もしかしたら、イベントをクリアするまで大凶は現れないの?」


「うん、もしかしたらそうかもしれない」


「それなら、はやくそのイベントをこなそうよ」


「びの君、そのイベントっていったい何?」


「それは……」


「わからないよね?」


 覧は確認をとるように訊いてくる。


「うん」


「じゃあ、何もできないよね?」


「え、つまり、それって、そのイベントが起こるまでは何もするなってこと?」


「することないなら仕方ないよ。いつ大凶が来てもいいように、備えようか」


「備えるって言っても、何するのさ?」


「何する? びの君?」


「レベル上げもできなければ、装備を買いそろえることもないし、必要な回復薬はすでに買いそろえたし、伝説の武具もないから集める必要ないし……」


「びの君とボクだけで、リアルなおままごとでもする?」


「それ、一番必要ないから」


 しゃれにもなってないから。


「分からないよ。もしかしたら、リアルなおままごとをしないと情報がでないかも……」


「それはない」


「びの君のいけずー」


 まったく、覧は、もうっ!!


 大事なところでふざけるんだから。


「キデギスとか、情報もってないかな?」


「そんなこと言って、キデギスに会いたいだけなんじゃないの? キデギスはショートカットで美人だしー」


 覧はキデギスという言葉を聞いて、口をとがらせた。


「大凶の情報を持ってそうなのは、キデギスくらいじゃないの? 神々の過誤もあるんだし」


 美人なのは認めるけど、それを言ったら、また覧がぐずりそうなので、伏せておいたまま説得する。


「まあ、そうだね。キデギスくらいだね」


「それじゃあ、お城へ行こう」


「しかたないな」


 覧はため息をつきながらも、僕について来てくれた。


 …………


 ……


「やあ、よく来てくれたね。3体目の魔王も無事倒したそうじゃないか。本当にありがとう」


 僕達を快く歓迎してくれるキデギス。


「ええ、何とかボク達二人だけでも勝つことができました」


 覧は謙遜をしつつ、覧は『二人だけでも』を強調した。


「今日は、どうしたんだい?」


「大凶について訊きたいことがあって……」


 僕は話を切り出した。


「大凶?」


 やはり、4体目の魔王については知らないのか、町行く人々と同じように反応する。


「4体目の魔王です」


「ああ、大凶と言うのかい? 私も調べているのだが、手掛かりがなくてね……ただ……」


 キデギスは言うか言うまいか躊躇っていた。


「ただ、何ですか?」


 僕はキデギスに次の言葉を促した。


「伝えるかどうかは迷ってはいるのだが伝えよう。西にある『金字塔』のことなんだが……」


「西にある、『金字塔』?」


 僕はキデギスの言葉を繰り返す。


「ああ。その『金字塔』にだけ調査結果が出てこないんだよ」


「調査結果が出てこないとは、どういうこと?」


「魔物が出始めたころから、どのような魔物がどれくらい棲んでいるのか、調査する通達を出したのだが、西にある『金字塔』だけは、未だに結果が出てこないんだ」


「それって、もしかして、大凶が『金字塔』にいて、調査団を虐殺しているから、調査できてないってこと?」


 覧が推論を導き出した。


「その可能性が高い」


 キデギスは、腕を組んで、こくりと頷く。


「それなら、行ってみようよ」


 僕は提案した。


「口で言うのはたやすいが、金字塔は西の最果て。我々兵士たちもついていくとなると、遠征になり、城の警備が手薄になってしまう。もし、そこに魔王・大凶がいればよいが、もしもそこにいなくて、リネマ城が攻められでもしたら……」


「この町は間違いなく滅びるね」


 キデギスは右目だけぴくりと動かした。


「ちょっと、覧、きっぱりといい過ぎだぞ」


 僕は、覧に注意する。


「もとはといえば、ボク達だけで現地まで行けないというのが原因なんだけどね。ボク達二人だけでも遠征できるのであれば、わざわざ兵士達と一緒に行動する必要なんてないんだし」


 はい、反論する余地もございません。


 僕達が子ども並のステータスなのが原因です。


「そこでだ。ボクとびの君の二人だけで『金字塔』を調査するというのはどうだろうか?」


 いや、たった今、僕達だけで現地までいけないって……


 僕が言おうとすると、覧が、僕にアイコンタクトをする。


「二人だけで? いや、さすがにそれは危なすぎる」


 キデギスは心配になったのか、およしなさいと止めてくる。


「いいえ、ボク達二人だけでも魔王を倒すことは可能だよ。ね、びの君?」


「当たり前だよ」


 覧に話をふられ、僕はハイ以外の答えを見つけることができなかった。



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