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『旅野びの』と『戻衛覧』の異世界漂流記 ~ステータスがファンタスティック~  作者: いたあめ(しろ)


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びのと覧、酔う

 飲めば飲むほど強くなるという言葉に覧は、距離を取る。


「可可可、甘いアル。気功・エキサイティング弾」


「ウォーターウォール……って、うわー」


 覧は、爆風によって吹き飛ばされる。


「だから言ったアル。飲めば飲むほど強くなるって……」


 なんてこった。魔法まで強くなるのか……


「遠近両用…………強い」


 覧は、MPポーションを飲み、酔狂は、お酒を一口ぐびりと飲んだ。


「そういえば、どうして増強を倒したか、聞いてなかったアル」


 酔狂も立ち止まり、お酒をぐびりと飲んで、僕達に訊いてきた。


「それは……」


 僕は言葉を濁した。


「増強に、魔王の適正はないアル」


 語りだす酔狂。


「適性がないって、どういうこと?」


「近況のように頭の良さを誇示したいわけでもなく、我のように強者であれば誰彼つっかかるような性格でもないし、大凶のように人間の不幸を楽しむわけでもないアル」


「ちょっと待って、大凶って誰?」


 僕は聞き覚えのない単語がでたので、話を遮り、酔狂に尋ねる。


「まだ、魔王・大凶とはあったことないアルか? おかしいアルね」


 酔狂は首を傾げた。


 どうやら、最後の魔王は大凶という名前らしい。


「まあ、大凶のことはどうでもいいアル。言いたいことは、増強が魔王の適性がないってことアル」


 僕としては、もう少し、大凶の情報を聞いておきたいんだけれどな……


「増強は、好戦的な我と違って、とても内気で優しく、自分から人間を攻撃するような娘じゃないアル。平和主義者で争いを好まない泣き虫なのに、ただ、強いというだけで魔王に成ってしまっただけの娘アルよ、なんで倒したアル?」


「増強が先に、人間の兵士を殺したから……」


「噂は聞いてるアル。最初人間は、増強を子どもだと思っていたアル。ところが、増強の角を見た時から、増強を敵と認識し、攻撃を開始したアル。最初に手を出したのは人間アル。正当防衛をして、何が悪いアルカ?」


 僕の反論は簡単に打ち消された。


「それは……」


「人間のしそうなことアル。子どものような外見をしていれば、手厚く保護。鬼のような外見をしていれば、例え子どもだろうと容赦しない。すべては見た目で判断するアル」


「そこまで知っていて、どうして僕に理由を訊いたのさ?」


「噂が真実とは限らないからアル」


 そうか、この酔狂も、知ろうとしているんだ。事実を。


「あの娘は、人間とも仲良くできないのかな……と嘯いていた、あまちゃんアル」


 仲良く……


 最初から優しい魔王もいることを知っていたら、僕は、増強を倒しただろうか?


 キデギスやその仲間たちがやられたことを聞いて、何としてでも倒さなくちゃと思っていたけど、本当に増強を倒すことが、正解だったのだろうか?


「最近は、勇者びのが、増強を倒したことで噂が持ち切りアル。これも事実アルか?」


 酔っているとはいえ、真剣なまなざしをこちらに向けて問いただす増強。


 ならば、僕も伝えなければならない。事実を。


「僕が、増強を倒す協力をした」


 キデギスがとどめをさしたけど、僕がその片棒を担いだのは、紛れもない事実だ。


「許さないアル」


 酔狂は、キッと睨み、僕に飛び掛かってきた。


「びの君に作戦を伝えたのは、ボクだ。ボクが指示しなければ、増強は倒されなかった」


「覧、それは嘘じゃないアルか?」


 酔狂は僕に飛び掛かる前に足を止め尋ねる。


「本当だよ。ボクが作戦を考え、びの君に伝えた」


「覧、やはり、お前からアル!! 死んで償うアル!! エキサイティング弾!!」


 覧との距離があったので、酔狂は、遠距離から攻撃する。


「ボクは倒されないよ!! ウォーターウォール」


「その弾は、陽動アル」


 ウォーターウォールで覧の視界が塞がれた瞬間、覧との距離を一瞬で詰める酔狂。


「覧」


 ばきゅーん。


 覧が攻撃されると思った僕は、エアワンを撃った。


「びのの弾だけには当たるわけにはいかないアル」


 一瞬で15メートルほどの距離をとる酔狂。


 先ほどの移動とは何かが違う気がする。


 1回目の移動が、たくさんの残像が見えて、とても早く動いたと表現できるのに対し、今回の移動は、早かったというより、一瞬で移動したという表現のほうが適切だろう。


 2回目だから、余裕だったってことなのか?


 きっと、僕の弾も避けているはずだ……と思っていたのだが、酔狂は、道の真ん中でぶっ倒れた。


 弾がモンスターを追える範囲外まで逃げていたから、当たっていないと思いこんでいたが、もしかして、偶然にも僕の弾が当たったのか?


 ……いや、例え僕の弾が命中していたとしても、僕の弾は1しか食らわない。


 あんなに激しくぶっ倒れることなんかないだろう。


 何か他に原因があるんだ。


 先回りして、覧がトラップをはっておいたとか?


 僕は覧をちらりと見やるが、覧は何も言わずに、酔狂から目線を外そうとしない。


 どうやら、覧のトラップでもなさそうだ。


 僕が考え込んでいると、


「すー、すー」


 という声が聴こえてきた。


 ……って、寝てる!!


 戦いの最中に、道端でぶっ倒れたまま、寝てる!!


 どんだけ酔ってるの? この魔王。


「ありがとう、びの君」


「お礼よりも、あのスピードをなんとかしないと。寝てる今がチャンスなんじゃない?」


 そう、覧が連続で呪文を唱えるよりも速い動きをする酔狂を止められなければ、僕達は負けてしまう。


「ボク、分かっちゃったんだ。酔狂のこと」


「何が分かったんだ、覧?」


 きっと、オスネを倒した時のように、勝つ方法を見出したということであろう。


「あの砲丸を投げるようなフォームに加えて、あのセクシーなチャイナドレスのスリット、そして、あの美脚、それに素早い動き、酔狂は、高校時代、陸上部のインターハイに出場したに違いない」


「そうか……陸上部のインターハイに……って、陸上部のインターハイ?」


 何を言っているんだ? 覧。


「その通りらよ、びの君」


「覧、顔が赤くなって、呂律も回ってないけど、大丈夫?」


 なんだ、その通りらよ……って。


「そんなことないよ……ヒック」


 なんで、しゃっくり?


「覧、魔王が陸上部入ってるわけないよね。そもそも、スリットは関係ないよね」


 覧、魔王と対峙しているのに、冗談なんか言うなよ。


「そうだよね……あれなんか、ぼーっとする」


「覧、しっかり気をもつんだ」


「うん……酔狂は自身の体に風を纏わせているんだと思う」


「その根拠は?」


「酔狂の素早さが速すぎだし、ボクのフリーズ・アイスを無効化しているから。きっと、空気のバリアみたいなものがあるんだ」


「なるほど……」


「ねえ、覧、もしかしてだけど、僕達、酔ってない?」


「え?」


「だって、ずっとお酒の匂いが漂ってるよ? きっと、状態異常を起こしてるよ、僕達」


 そして、覧は、足元がふらふらだ。


 僕は竹で作られた水筒を取り出し、覧に水を少しだけ飲ませた。


「そうか。そういうことだったのか!! それなら……」


 覧は、何かに気付くと、もう一度自身に強化魔法をかけた。


「ん? また強化魔法アルか?」


 覧の魔法攻撃に気付いた酔狂が立ち上がる。



「まだ、接近戦(インファイト)で戦うアルか?」


「はぁはぁ」


 覧は、息も絶え絶えになりながら、酔狂にパンチやキックを繰り出す。


「そろそろ、お酒が回ってきて、気持ち悪くなったんじゃないの?」


 なるほど、酔狂の自滅を狙っていたのか……


「残念、我はどれだけ飲んでもリバースすることはないアル。自滅を誘ったって無駄アル」


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