びのと覧、魔王とぐだぐだな戦いを繰り広げる
覧が攻撃を続け、それを躱し続ける酔狂。
接近戦で戦うこと数分、一向に覧の攻撃は当たる気配がない。
「我の増強への愛はこんなもんじゃないアル」
「ボクのびの君への愛だって、こんなもんじゃない」
すると突然、二人は立ち止まった。
「それにしても、貴女の義妹への執念、感服いたしました」
え? まだ酔ってるの? 覧さん?
「いや、オマエの兄への愛、確かに感じたアル」
いつ? 感じたの、酔狂さん。
……っていうか、なんで二人で普通に握手を交わしてるんすかね……
……その後抱擁までして……
何このユニフォーム交換までしそうな流れ。
あれ、これは戦闘だよね?
魔王との戦闘であってるよね?
なんだか、僕も、酔狂と握手して抱擁したい気分なんですけど……
落ち着け。旅乃びの。
僕までおかしくなったら、どうなる?
周囲に漂うアルコールのせいで、全員ステータス異常で、グダグダで、収集つかなくなる。
自分だけはしっかりしないと……
……って、酔狂が凍結してる!!
なんで?
いつの間に?
「覧、どうして酔狂が凍結してるの?」
さっきまで、フリーズ・アイスは効かなかったのに。
「ボクのびの君への愛が勝ったんだよ!! 最後に愛は勝つのさ」
いや、もし、酔狂が勝ったとしたら、増強への愛が勝ってるからね?
どっちが勝っても、結果的に愛は勝ってるからね?
もし、この勝負に賭博があったら、僕は覧でも酔狂でもなく、愛に賭けるからね。
僕の総取りじゃないか……って、何くだらないこと考えてるんだ。
僕は、自分が酔ってるのだろうと思い、水を口に含んで、ゆっくりと飲み込んだ。
「何故だ? 何故、我が凍る」
そう、そこ。
大切なところは、そこ。
さすが、魔王。大切なことが分かってらっしゃる。
「今回の魔法、絶対凍結は、フリーズ・アイスより低い温度の-129℃だから」
「それがどうしたアル。我は寒さに強いアル」
「ボクは勘違いしていた。酔狂の正体を」
「正体?」
「ボクは最初、酔狂は風を操る魔王だと考えていた。風だから残像が残るくらいはやく動けて、風で自分自身をバリアすることにより、身を守っていると考えていたが、実はそうじゃなかった」
「じゃあ、なんだったの?」
「それは、びの君、びの君が一番に気付いたんじゃない」
「え? 僕?」
覧に指を指されて困惑する。
「酔狂、貴女の正体は、エタノールだ」
「エタノール?」
「そう、アルコールの一種で、今もその徳利に入っているものだよ」
「え? あれって、酔拳を強くするのと、僕たちに混乱のバッドステータスを与えるためのものじゃなかったの?」
「ミスリードだよ、びの君」
「ミスリード?」
「そう。ボク達に勘違いをさせるために、大胆にもボク達の目の前に出していたんだ」
「じゃあ、エアワンを防いだ、あの速さは?」
「アルコールで作った、自分の分身さ。無数に作ってあった分身と自分の位置を一瞬で入れ替えた。だから、残像が残った。2回目びの君がエアワンを撃ったときには、残像はなかったよね?」
言われてみれば、2回目に残像はなかった。
「それなら、なんで、氷の魔法を使ったの? アルコールだってわかったなら、炎の魔法で一発じゃないか」
「そう、このアルコールが空気と混合している状態なら、一発だね。びの君が」
「え? 僕が?」
なんで、僕が? 酔狂がアルコールなら、炎で燃やせば一発じゃないか。
「気化したアルコールは火が付きやすいんだけど、気化していないアルコールは引火しにくいんだよ。だから、もし、このアルコールの匂いが漂っているこの場で炎の魔法を使えば、先にびの君がやられてしまう」
「だから、覧は、炎の魔法を使わなかったのか」
「うん、そう」
なるほど、科学の知識だ。
「それに、酔狂には、一瞬で移動する能力がある。もし、その能力を使われたら、ボクがアルコールに引火させたところで、避けられて終わるよ」
確かに、僕なら、すぐに自滅するな。
酔狂、強い……でも、僕は、長男だからしっかりしなきゃ。
あれ? もしかして、酔狂の正体はアルコールじゃないのか?
それなら……ファイヤーだ!!
どーん。
空気中のアルコールに引火して爆発!!
僕は巻き込まれ、死亡。
自滅のファイヤー、完。
……みたいな。
ダメだ。くだらないことばかり思い浮かぶ……




