びの、竹林で、謎のセクシーお姉さんと出会う
振り向くと、チャイナ服を着た背の高いお姉さんが立っていた。
「お前、こんなところで何をしているアル?」
深いスリットからは、綺麗な曲線美を描いた脚がのぞき出ていて、片手には、白い徳利を持っていた。
「何って? タケノコを取ってるのさ」
「タケノコ?」
お姉さんは不思議そうに、人差し指を口の下にあて、首を傾げる。
「お姉さん、タケノコ食べたことないの?」
「ドラゴンとかのモンスターなら食べたことはアルが、大抵の食べ物ははじめてアル」
ん? この人、酔ってる。息がお酒臭い。
「これが、タケノコだよ」
僕は、先ほど掘り起こしたばかりのタケノコをお姉さんにみせつけた。
「お。美味しそうネ。我にも食べさせるアル」
お姉さんは、僕のみせたタケノコを皮も剥かずに、パクっと口にくわえた。
「じゃりじゃりしている上に、苦くて飲み込めないアル。お前、嘘ついたカ?」
僕は、お姉さんに胸倉をつかまれる。
く……苦しい……
「……違うよ。……皮は食べられないんだよ。それに、一度アクっていう苦み成分を取り除かないと食べれないんだ。説明しようとしたら、お姉さん、食べちゃうんだもん」
「そうなのカ?」
手をぱっと離された。
「もうすぐ、筑前煮ができるはずだから、お詫びにもってくるよ」
「チクゼンニ?」
「そう、筑前煮っていう料理。鶏肉とかニンジンとかタケノコとかで作った煮物だよ。お酒のつまみにも合うと思うよ」
「それ、くれるアルか?」
「うん、後でね。僕は、竹とタケノコ取って、家に置いて来こなきゃいけないんだ」
僕は、土を掘り起こし、タケノコを採取する。
「そんなこと言って、逃げる気じゃないアルか?」
「逃げないよ。それより、竹をどうにかしないとな……」
タケノコは、掘り起こせるから簡単だけど、武器を装備できないから、竹を切ることは容易でない。
「竹って、この植物アルか?」
お姉さんは高くそびえ立つ竹に手をかけた。
「うん、その竹」
「あちょー」
お姉さんは、気合を入れたかと思うと、1回の蹴りで、竹を2~3本倒した。
「すごい」
僕は呆気にとられる。
「まあ、こんなもんアルか」
「ありがとう、お姉さん」
僕は、竹を肩にかける。
「持つのも手伝うアルか?」
「いや、大丈夫。30分くらいしたら、またここに持ってくるよ。それまで、時間潰してて」
竹をとってもらった上に、セクシー酔っ払いお姉さんを連れて帰ったら、覧に何を言われるか分かんないしね。
「お前、今、麻雀持ってるアルか?」
「いや、持ってないよ」
ドンジャラなら、元の世界の家にあるけど……
今すぐには、元の世界には帰れないからな。
「じゃあ、ここでお酒でも飲んで、待ってるアル。たくさん食べるから、たくさん持ってくるといいアル」
僕はお姉さんと別れ、家に戻った。
「あ、びの君、筑前煮できたよ」
「ありがとう、覧」
「くんくん、びの君、匂いますな」
覧は僕の顔をみるなり、鼻をスンスンと動かす。
「何が匂うの?」
「アルコールとボク以外の女の匂い」
「え、そう?」
自分の匂いを自分で嗅いでみる。
全然分からないや。
「酷い。ボクという女がいながら、竹を採るのを口実に、よそで浮気を」
「覧さん、そろそろ本当に新婚さんごっこはやめようね」
シャレにならない。
「そんなこと言って誤魔化そうとしたって無駄なんだからね」
「いや、誤魔化そうなんてしてないよ」
「竹を取ってたら、光る竹があって、かぐや姫とお酒を飲んだ……とか言うんじゃないでしょうね?」
「そんな竹取物語ストーリーない……とは言い切れない」
竹を取っていたら、光って、竹のようにすらっとしているナイスバディな背の高い美人なお姉さんが立っていたんだし……
「あったの? 竹取物語? 女の子いたの?」
「まあ、性別は女性だね」
女の子と呼べるかはさておいて。
「ボクとびの君の子どもってこと?」
「何でそうなるのさ……まあ、詳しい話は、置いといて、今からその女の人に筑前煮を持っていかないと」
「なんで、どこの馬の骨とも分からない女に、ボクの筑前煮を食べさせなくちゃいけないのさ?」
「いやー、タケノコを生で皮がついたまま食べさせちゃって……」
「びの君、鬼だね」
「成り行きで……」
申し訳ない。
「どんな成り行き? ボクも行って謝るよ……ついでに、びの君には、ボクという素敵なパートーナーがいることを思い知らせなくちゃ」
「覧、何か言った?」
「えっとね、びの君はその格好で行くのかな……って言ったかな?」
「あ、もう作業服じゃなくてもいいか」
僕は、メイキャップを被り、学生服に戻る。
「ボクもついていくよ。別の意味でびの君が、お花見しそうだし」
覧は、エプロン姿から、いつもの青衣に着かえた。
「別に、青衣に着かえなくても……」
「これが僕の戦闘服だから」
「いや、別に戦闘するわけじゃないでしょ」
「ボクにとっては、戦闘なの。害虫と戦わなくちゃいけないの」
「意味がわからない」
害虫なんていないはずだけど。
僕たちは、とりあえず筑前煮と竹製の水筒を持って、竹林まで向かった。




