びのの竹取物語
朝、家で起きると、良い香りが漂っていた。
あれ? 懐かしい匂いだ。
「おはよう、覧。この香は、煮物?」
「そう、びの君のお母さん直伝の筑前煮を作ってるんだよ!!」
覧が唯一のできる料理、筑前煮。
そういえば、去年の春頃、花嫁修業するとか言いだして、お母さんの料理をずっと手伝っていたっけ。
あの時は、一週間、毎食筑前煮だったなー。
「ところで、なんで筑前煮を作ってるの?」
「それはね、さっきミドラさんから、アク抜きされた、タケノコをもらったからさ」
いつ購入したのだろう? 覧は、青衣の上からエプロンを着けている。
……青衣は汚れてもいい服だよね? ……ってかそもそも、メイド姿でいいじゃないか。
そんなこと、今はどうでもいいか。
「タケノコかー。こっちの世界にもあるんだね」
「うん、竹は、元の世界の竹と同じみたい。ほらこれ見て」
覧は、僕に竹そのものを渡した。
「これって……」
「竹で作った水筒だね」
「これもミドラさんから貰ったの?」
「うん。ついでに、その竹がとれる竹林も教えてもらったのだよ」
へー、これなら毎日タケノコ食べ放題じゃないか。
「筑前煮を作るには、醤油が必要だよね?」
「あったんだよ、ジオフの世界にも、お醤油」
へー、異世界にもお醤油はあるのか……
「そこでお願いがあるんだ、びの君」
「何?」
「竹とタケノコを採ってきてほしいのさ」
「え? 僕が?」
「うん、びの君が」
「タケノコはわかるけど、なんで竹まで?」
「この科学文明を少しでも発展させようと思って、竹を使った電球と竹炭を使った電池をつくろうかと思ってね。まあ、こっちの竹でできるかはやってみないと分からないんだけどね」
「なるほど」
覧め、暇を見て、ここの文明をすすめるつもりだな。
「竹があるってことは、他にも元の世界にあるものってジオフの世界にもあるの?」
「ああ、色々あるみたいだね、お味噌に、桜もあるって」
「桜もあるの?」
「そういえば、ミドラさん、桜は今が見ごろだって言ってたなー」
覧は思い出したかのように言う。
「午後からは、お弁当をもってお花見しようか?」
「いいの?」
覧は目を輝かせた。
覧は、桜が大好きだからな。
「うん、覧はあの、刹那的に散りゆく綺麗な花が大好きなんでしょ? 2体目の魔王も倒したことだし、お花見しようよ」
「もう、びの君がお花見したいなら仕方ないなー、行くよ。はやく、朝ご飯食べて、準備して」
僕に言わせた気もするけど、そこは突っ込まないでおこう。
僕は食卓に用意されていたパンをかじると、すぐに準備をする。
「学生服が汚れるといけないから、はい、作業服が登録してあるメイキャップ。スコップは玄関に置いておいたから」
「ありがと」
僕は覧から渡されたメイキャップをかぶる。
あれ? やけに、脚がすーすーするな……
「……って、覧、これ、ミニスカセーラー服じゃないか」
覧め、久しぶりにやりやがったな。
「あ、ボクのと間違えちゃった。てへぺろ」
「このセーラー服、僕のウェストに合わせてあるよね? わざとだよね?」
覧がこのサイズを着たら、スカートはストーンと落ちるよね?
そもそも、サイズが異なると、メイキャップは発動しないよね?
「あっちゃー、サイズも間違えちゃった」
「絶対嘘でしょ」
「あれ、びの君、そんなこと言って、メイキャップを被りなおさないね。メイキャップはびの君の手元にあるのに。もしかして、びの君も男の娘の仲間入り……」
「しません。はい、本物のメイキャップちょうだい」
僕はメイキャップを被りなおし、学生服になる。
「ぶーぶー」
ぶーたれながら、覧は、僕にメイキャップを渡した。
着かえを一瞬で済ませ、覧に教えられた場所へと走って向かった。
…………
……
うわ、こんなに竹がある。
町のはずれのところに夥しい数の竹が生えていた。
ところどころ最近、掘り起こされた跡があるものの、まだまだ、山ほどタケノコが残っていそうだ。
ジオフの世界ではどうか分からないけど、元いた世界と同じように掘り起こしてみよう。
さてと、まずは、タケノコを探しますか。
地面から出ているか出ていないかのタケノコを探すこと。
地面からタケノコのしま形だと分かってしまうと、それは食用に向かない。
僕はまんべんなく地面を見渡す。
お、まだ土から出ていない、タケノコの群集を発見。
僕タケノコを1本手で掘り起こす。
見事なタケノコだ。
掘り起こそうとすると、
ぴかっ。
後ろで何かが光った。
なんだろう?




