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『旅野びの』と『戻衛覧』の異世界漂流記 ~ステータスがファンタスティック~  作者: いたあめ(しろ)


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覧、増強と決着をつける

「ふふふ……謝るなら許してあげるよ、びの君」


 覧は突然笑い出した。


「何で笑っているの? 絶望しすぎて、貴女、頭おかしくなったの?」


 突然笑い出した覧に、酔狂が気味悪がる。


 僕だって、気味が悪い。少しだけど。


「ボクの頭は正常だよ」


「それなら、今すぐ降参するといいの」


「降参するのは、君の方だ、増強」


 覧は、探偵が犯人を言い当てるかのように、びしっと指を指した。


「え? 何を言っているの?」


「教えてあげるよ、増強。びの君のステータスは、ほぼ1。つまり、お前のステータスは、最大100だ」


 そうだ、僕のステータスは、ほぼ1なんだ。


 1を100倍しても100。これなら倒せるかもしれない。


「騙そうとしてるんだろうけど、そうはいかないの。ステータス・チェック」


 増強は自分のステータスを確認する。


「どういうことなの? わたくしのステータスが本当に100なの」


 青ざめる増強。


「だから言ったじゃないか。降参するのは増強、君だって」


「わたくしが降参しなければいけませんの?」


「だから、そうだって言ってるよね」


 覧はここぞとばかりに追い打ちをかける。


「いいえ、違うの」


 増強は、覧の言葉に乗らず、冷静になり、我に返る。


「何が違うっていうんだい?」


「やっぱり降参するのは貴方達なの」


「なんで? ステータスは100なんだよ?」


「わたくし、まだ希望はすてないの。例え、わたくしのステータスが100だとしても、覧、貴女のステータスは12で、勇者のステータスは1。まだ、わたくしは負けたわけじゃないの。こけおどしも良いところなの」


「ちっ、気づいちゃったか」


 覧は増強にも聞こえるような大きさで舌打ちをした。



 そうか。いくら僕のステータスが低くても、それを増強を倒す人がいなければ意味がない。


 増強を倒す方法は何かないか……



「そうだ、キデギス、起きて、キデギス」


 僕は天井に居たままのキデギスを起こそうと試みる。


「ひっく、ひっく……無駄なの。キデギスが魔耐9999なのを見越してわたくしは全力で魔法を唱えたのだから、起き上がれるはずないの」


 キデギス頼みはできないか……


「こうなったら、僕が……」


「びの君、邪魔!! そこでじっとしてて。増強は、ボクが倒すから」


 はーい、言われた通り、じっとしてます。


 作戦だから、じっとしてるんだからね? 怖いとかじゃないからね?


 ……って、僕は、誰に言い訳してるんだ……


 しっかりと、ことの成り行きを見届けなければ。


「ウォータースラッシュ」


 覧は、増強相手に魔法を唱える。


「ひっく、ひっく……ウォーターウォールなの」


 増強は覧の魔法を相殺させた。


「びの君は、基本魔法も覚えていないのに、どうして?」


「ひっく、ひっく……1度使った魔法は、わたくし忘れないの」


 なんてこった。


 ステータス100なら、覧よりも強い魔法が唱えることもできる。


 こちら側のピンチは続く。


「でも、MPは100しかないんだから、無尽蔵に魔法は出せないよね?」


「ひっく、ひっく……魔法がダメなら、物理で攻撃なの」


 増強は、拳を握り、パンチを繰り出そうと駆け出した。


 確かに、物理での攻撃なら、MPを消費することなく、いとも簡単に覧を倒せる。


「ま、そうするよね。ボクでもそうするよ」


 そういいながら、覧は、仁王立ちをしたまま、一向に逃げようとはしない。


「覧、何してるんだ? 魔法を唱えるなり、避けるなりしないと……」


 攻撃力100の増強に攻撃されたら、一撃で覧は死んでしまうかもしれない。


「いや、これでいいんだ」


「ひっく、ひっく……これでもくらうの」


 増強の真っ赤に赤く染まった拳でのストレートパンチが、覧の顔の手前数センチというところまで迫ってきていた。


「逃げろ、覧」


 僕は、大声で叫ぶ。


 しかし、覧の体はピクリとも動こうとはしない。


「ひっく、ひっく……諦めたの?」


 増強は覧へと拳を繰り出した瞬間、どてっと転んだ。


「まさか」


 覧は唇だけを動かした。


「ひっく、ひっく……何かの罠なの? それとも魔法?」


 いきなりすっころんだ、増強は理解できずに覧に尋ねた。


「ふっ、罠も魔法も今のボクには必要ない」


「ひっく、ひっく……何もないところで、わたくしが転ぶはずないだろ!!」


 増強は怒りを露わにして覧に飛び掛かる。


「バナナの皮でもあったんじゃない?」


「ひっく、ひっく……わたくしをいじめるな!」


 今度は、覧に蹴りをかまそうとするが、蹴りは空を蹴り、またしてもどてっと転んだ。


「ひっく、ひっく……なんで? なんで当たらないの?」


「ざまあないな、増強」


 覧が悪役モードにシフトチェンジ……って、どっちが正義なんですかね、覧さん。


「ひっく、ひっく……なんで? なんでなの? わたくしのほうが、ステータスは上なのに……」


「さあ? 今日は、赤い手の調子でも悪いんじゃない?」


「ひっく、ひっく……あの、勇者のステータスのせいなの? それなら……」


 増強は、視線を上の方へと向けた。


「まずい、キデギスのステータスを百倍する気だ」


 もうすぐ100秒。僕の能力を捨てて、キデギスの能力を奪う算段だろう。


「あーあ、やっぱり、そっちに行っちゃったか……」


 覧はすべてを見透かしたかのようにつぶやいた。


「ひっく、ひっく……あなたたちなんかすぐに……」


 増強がキデギスをつかもうとした瞬間、キデギスの目が開いた。


「何でなの?」


「最大魔力の稲妻斬り」


 攻撃力9999で魔力も9999のキデギスの最大技稲妻切りがクリーンヒットする。


「私の運が9999だということを忘れていたのではないか? 増強」


「ひっく、ひっく……わたくしは、負けるの?」


 防御力100で魔耐も100でHPも100の増強が耐えきれるはずがない。


「いや、びの君に触れていた時点で負けていたんだよ。増強」


「ひっく、ひっく……そんな……」


 増強は半透明になり、消えかかる。


「増強、何故、こうなったと思う?」


「ひっく、ひっく……そんなの、わたくしがわかるわけないの」


「びの君のステータス、運だけは、-1だったからだ」


 あ、そういえば、僕の運って、マイナスだった。


「マイナス? マイナスって何なの?」


「ああ、マイナスって概念そのものを知らないってわけか……マイナスってのは、0より下って意味さ」


「……っ!!」


 増強は声にならない声を発する。


「お前の能力ハンドレッドはステータスを100倍にする能力。つまり、お前の運は、-100だったんだ。運が-100の物理攻撃なんて当たるはずがない」


 ああ、覧の説明を聞いて、僕の心がずきずきと痛むのは、何でだろう?


 魔王をキデギスが僕じゃなくてキデギスが倒したからに違いない。うん、そういうことにしておこう。


「お前の敗因は、勇者……いや、びの君を知らなさ過ぎたことだ」


「ひっく、ひっく……いやーーーーーーーーーーーーーー」


 増強は、虚空へと消えていった。


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