覧、増強の能力を見極める
「ひっく、ひっく……貴女の能力、いただいたの。100倍にしてお返しするの……ウォータースラッシュなの」
「フリーズ・アイス」
「ウォータースラッシュを凍らせるとは、貴女、頭いいの」
水の刃は覧の体に触れる直前で凍り止まる。
「敵に褒められても、嬉しくないけどね。今度はボクの番……ステータスチェック」
「え? なんなの?」
攻撃が来ると思った増強は、呆気にとられている。
なんで、ここでステータスチェックなんだ? 覧。
増強(増強) LV100 身長:秘密 体重:秘密
HP:1200(+0)
MP:1200(+0)
種族:魔王
筋力:1200(+0)
体力:1200(+0)
耐性:1200(+0)
敏捷:1200(+0)
魔力:1200(+0)
魔耐:1200(+0)
運 :1200(+0)
技能等:赤い手・秘密
「やっぱり、そういうことか……」
「ひっく、ひっく……この期に及んでステータスチェックとは……貴女の頭、どうかしてるの?」
「いや、これでいいんだ。予想通り、増強の能力は、ステータスを相手の100倍にすることだった」
覧は、片方の口角だけをつりあげた。
「ひっく、ひっく……まさか、わたくしの能力を調べるためにステータスチェックしたの?」
目を見開く増強。
「そりゃあ、キデギスさんも、自分の能力の100倍だったら、肌でわかるでしょうね。勝てないって。ね? キデギスさん?」
え? キデギス?
「まったくだ」
2階に居たドラゴンを倒したのだろう。
僕の隣にはキデギスがいた。
「ひっく、ひっく……キデギス? 貴女は、死んだはずなの」
キデギスの加勢に恐怖で顔を歪ませる増強。
「覚えていてくれるとは意外だね」
「ひっく、ひっく……何でここにいるの?」
「増強、お前を倒すためだけに、地獄の底から戻ってきぞ」
「ひっく、ひっく……性懲りもなく、なんでわたくしをいじめるの?」
「いじめる? 私を殺そうとしたくせに、なんだ、その言い草は?」
「ひっく、ひっく……それは、貴女がわたくしをいじめたからなの」
「問答無用。増強、そのクビ、頂戴する」
キデギスは、増強との会話を強制終了させ魔法剣を構えた。
「ひっく、ひっく……全てのステータスが9999のお前は、近寄ったらダメなの」
増強は覚えている。以前、自分が能力を発動させた相手のステータスを。
「あっれー? 百倍にして返せばいいじゃない? ハンドレッドだっけ? なんで、その能力をキデギスに使わないの?」
大げさに質問する覧。
あ、これ、こたえ知っててわざと訊いてるな。
「ひっく、ひっく……それは……」
言葉を濁す増強。
「あ、わかった。すぐには解除できないんでしょ? その赤い手の能力」
覧はすべてお見通しといったようにウィンクをした。
「ひっく、ひっく……なぜ、それを知っているの?」
「推論だよ」
「ひっく、ひっく……推論? ただ、それだけでわたくしの能力を見破ったの?」
「うん。だって、おかしいもん。キデギスと対峙した時、すぐに赤い手の能力を解除して、キデギスに触れば、ステータスは999900だよね?」
確かにその通りだ。
僕だってそうする。
「でもそれをしなかった。なぜなら、その能力はすぐに解除できないからだ」
「ひっく、ひっく……その通り、この能力は解除できないの」
「へえ、認めるんだ?」
「ひっく、ひっく……だから、許してほしいの……」
増強は、目の前で祈るように手を胸の前に組み、懇願してきた。
「もしかして、命乞いをして、時間稼ぎをしてるのかな?」
「ひっく、ひっく……何言ってるの?」
増強は時間稼ぎという言葉にピクリと反応したが、冷静に訊き返した。
「その能力、何か解除条件があるんでしょ? 聞いたよ、キデギスから。最初キデギスと互角だったのに、その後、キデギスの手を触ったら、急に強くなったって。その解除条件は時間なのかな……って思っただけ。でも、その反応からするとビンゴみたいだね」
「ひっく、ひっく……ちょっと違うの」
「違うって、何が?」
「ひっく、ひっく……わたくしは赤い手と増鏡という2つの能力を使って……」
「あ、その説明、長びかせて、時間稼ぎをしようとしてるでしょ? そうはいきません」
覧は、増強が自分の能力を説明しようとした途端、話をぶった切った。
そつがないというか、何というか……
「ひっく、ひっく……まさか、わたくしの能力がここまで見破られるとは思ってなかったの」
増強は、部屋の奥の方へ逃げようとする。
「逃がすか。稲妻斬り」
キデギスは増強に、自分の剣に電気を纏わせ、増強へと斬りかかる。
「ひっく、ひっく……ウォーターウォールなの」
はっはっはっ、この前、覧との対戦の時、キデギスは、ウォーターウォールごと斬って……
ざっばーん。
フロアの床から津波のような大量の水があふれ出て、天井までの壁を作った。
強すぎる。
「さっきの威力と全然違うじゃないか」
こんなの反則だ。
「ひっく、ひっく……キデギス相手なら、全力の二重攻速で魔法を唱えないと、こっちがやられてしまうの」
ダブルバインド……ってなんだ?
いや、そんなことよりも、天井にたたきつけられたキデギスはどうなったかを確認しないと……
僕は、キデギスの安否を確認する。
天井に体がめり込んでいて、落ちて来そうにない。
「大丈夫、キデギス?」
僕は大声でキデギスに呼びかけたが、キデギスは気絶してしまったのか返事もなかった。
ステータス9999のキデギスさえ、手も足も出ない。
僕達が勝てるわけないじゃないか。




