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『旅野びの』と『戻衛覧』の異世界漂流記 ~ステータスがファンタスティック~  作者: いたあめ(しろ)


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びのと覧、キデギスに出会う

2020/5/29 誤字・脱字を訂正しました。

「王国最強の魔法剣士でしょ、びの君」


 そうだ、ミドラさんが、王国最強の魔法剣士だって言ってたっけ。


「びの様、覧様、申し訳ありません。舞踏会の途中ですが、私について来ていただけませんか?」


 僕と覧は顔を見合わせ、頷いた。


 良かった。


 王子様と踊らなくていい。


 寿命がのびた。


 ありがとう、キデギス様。


 僕と覧はメイキャップを被り、僕は燕尾服から学生服に、覧はドレスから青衣に衣装をかえる。


「キデギス総司令」


 大佐にキデギス総司令と呼ばれた人は、長い銀髪で、中性的な顔立ちをしていた。


「すまない、大佐、わが軍が増強に負けてしまったのは、作戦ミスだ」


「そんなことないのであります。キデギス総司令がいなければ、5分と経たずに全滅していたのであります」


「あの……増強って誰?」


 僕はおそるおそる尋ねる。


「君……いや、君達は?」


「勇者とそのお付きの者です」


「君達が?」


「ボクは覧」


「僕はびの」



「私はキデギスだ」


 僕達は簡単に自己紹介をした。



「そうだ、先ほどの質問に答えよう。増強とは、魔王の名前だ」


「キデギスが知ってる戦況や情報を聞かせて欲しいのだけれど、話せる?」


 覧がキデギスの体を気遣いながら訊いた。


「ああ。見た目は人間の女の子の姿だったが、額には角があり、鬼のようだった」


 鬼って、赤鬼とかの鬼だよね?


「どのような経緯で討伐することになったの?」


「この世界に魔物が突然増え始め、治安が悪くなりはじめた頃、ここから南にある『業火の砦』で、子どもが1人泣いていたらしい。兵士は魔王・増強だと気づかずに、保護をしてしまった」


 ん? それってつまり、兵士が魔王だと気づかずに保護したってこと?


 嘘でしょ?


 保護される魔王も魔王なら、保護する兵士も兵士だよっ!!


「なんで気付かなかったの?」


 確かに、角が生えているなら、見ればすぐにわかるだろうし、それに魔王ならすぐに索敵魔法とかですぐに気づいてもよさそうなものだ。


「兵士もまさか魔王が子どもの姿をしていると思わなかったのだろうな。増強は、角を布で隠しすと同時に、魔王の能力も隠したまま過ごしていたそうだし」


 それじゃあ、気付くまで、同じ釜の飯を食べたってこと?


「ちなみに、魔王だと気づいたのはいつ?」


 

「保護から4日後だ」


 4日間?


 え? 4日間も魔王と一緒に共同生活?


「風呂に入れるために、布をとらせたところ、女性兵士が角に気付き、上官に報告をしたそうだ。上官は、魔物と過ごしていたという失態を晒したくはなかったのだろうな。魔王だとは露にも思わず、攻撃をしかけるも、全然倒せず。すぐさま、リネマの城に早馬を出したらしい」


 よく聞くよね、上層部が失敗をもみ消そうとしたら、それも失敗して大失敗するケース。


「生き残りは?」


 覧が尋ねると、キデギスは首を振り、砦に居た兵士は、全滅していた……と呟いた。


「貴女は、仇をとろうとしたんですか?」


「当然だ。私が指揮を執り、増強を取り囲み、遠距離から弓矢で攻撃したのだが、魔王は遠距離の攻撃をことごとく防いできた」


「防いだって何を使って? 話を聞く限り、魔王増強は丸腰だったんですよね? 魔法ですか?」


「死体となってしまった兵士が持っていた木製の盾だよ」


「兵士の木製の盾って、そんなに頑丈なものなのですか?」


「頑丈ではない。しかし、その盾をどうやっても破壊することはできなかったんだ」


「え? 破壊することはできなかった? 火の矢を使ってもですか?」


 覧は、眉をひそめた。


「ああ。その盾だけで大苦戦さ。遠距離攻撃が有効ではないと悟った私は、接近戦で勝負をかけようと間合いを詰めた時、増強は持っていた盾を捨て、瀕死状態の部下を赤い右手でつかんだ。その瞬間、戦況が一変した」


「戦況が一変って何が起こったの?」


 僕が口を挟む。


「今までの増強とは思えないほどのパワーとスピードになり、10秒と経たずに、増強の周りには死体の山が転がっていた」


「10秒と経たずに……」


 どんだけ強いんだ、増強は……


「大人数でいたずらに死者を増やすよりは、私自身が一騎打ちをしたほうが良いだろうと判断し、私以外を城から撤退させるための命令を出したのだが……」


「だが?」


「その判断は遅く、私以外の全員が倒れていた」


 ため息を一つつき、肩を落として話すキデギス。


「その後、一騎打ちはしたんですか?」


「ああ、もちろんだ。部下の仇だからな。だが……」


「負けてしまった」


「最初の方は、ほぼほぼ互角だった。少し、相手の方が強いなと感じる程度だったんだ……」


 言い訳をするかのようにキデギスは話し、


「……しかしながら、増強が私の手をつかんだ瞬間、私の手には負えないと悟った」


 キデギス自身の不甲斐なさに落ち込んだ。


「ステータスを見たんですか?」


「いや、ステータスなど見なくてもわかる。私では太刀打ちができないと肌で感じたんだ」


「ちなみに、貴女のステータスは?」


「総司令になんてことを聞くのでありますか?」


 大佐は、いくら勇者のお連れでも失礼極まりないと言わんばかりに怒りを露わにしながら覧に噛みつく。


「かまわんよ、大佐。知りたければ、ステータスチェックをするといい。君もできるんだろ? 可愛いお嬢さん」


 覧のことを可愛いって……まあ、女性だから許すけど。


「それでは失礼して。ステータスチェック」


 キデギス(キデギス)LV99 身長:187cm 体重:72kg

 HP:9999(+999)

 MP:9999(+999)

 天職:魔法剣士 レア度:☆☆☆☆☆

 筋力:9999(+999)

 体力:9999(+999)

 耐性:9999(+999)

 敏捷:9999(+999)

 魔力:9999(+999)

 魔耐:9999(+999)

 運 :9999(+999)

 技能等:神々の過誤(できすぎのかご) レア度:☆☆☆☆☆


「オール9999って、マックスじゃないか。すごすぎ」


 あまりにすごいステータスに、僕は、驚きを隠せなかった。


 こんなのチートじゃないか。


「私のスキル、『神々の過誤』の補正が大きいんだがね」


「神様の加護を受け過ぎだよね? なぜ、神様は二物を与えなかったの?」


 キデギス、許すまじ。


「加護じゃなくて、過誤だからじゃない? びの君」


「酷いよ。神様、僕のステータスはさんざんなのに……」


 神様、許すまじ。


「このステータスの人間でも敵わなかったのに、増強は、僕達が太刀打ちできる相手じゃないよ」


「ステータスの数字自体はあまり意味がないものだ」


「え? そうなの?」


 僕の反応を見て、キデギスは、ふっと笑った。


「知らないのであれば、肌で感じ取ったほうがはやいな。びの、覧、ちょっと、中庭でちょっと戦おうか」


 じっと僕の眼をみるキデギス。


「戦うって?」


「勇者びのと覧に『一手御教授』願おうと思ってね」


 ん? 『一手御教授』……って、道場破りの文句だよね?


 え? キデギスは、勇者の称号が欲しいから、僕達から勇者の称号を奪おうとしてるってこと?


「キデギス様、そのお体では無理であります。まだ、休まれませんと……」


「大佐、今しかできないことがある」


 僕は、キデギスの真剣な眼をみて、覧に行こうと促した。



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