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『旅野びの』と『戻衛覧』の異世界漂流記 ~ステータスがファンタスティック~  作者: いたあめ(しろ)


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びのと覧、アンティーク屋さんへと向かう

「ねえ、覧、レベルがあがらないってことは、ギルドには……」


「入らない方がいいだろうね。勇者がステータスほぼ1で、装備もできないことがばれたら、大混乱だよ」


「元の世界って、良かったんだね」


「ん? 何が?」


「だって、元の世界は、努力の方向性さえ間違えなければ、成長できるじゃないか。でも、この世界は、努力をすることさえ許されない世界なんだよ?」


 努力してレベル上げをしようとしても、呪いのせいでステータスはあがらない。


 それどころか、下がってしまう。


「よかったね、びの君、元の世界じゃ好きじゃなかったでしょ、努力?」


「努力は好きじゃないけど、努力しても報われない世界はもっと好きじゃないよ」


「そう思えるってことは、間違いなく成長しているよ、びの君」


「ねえ、僕達、本当に、魔王を倒せるのかな?」


「伝説では倒さないと帰れないよ」


「僕達の運命を勝手に決めるなんて、なんて酷い伝説だ」


「いや、伝説なんて、未来に託してる時点で、全て身勝手なものだよ?」


 確かに。


 考えてみれば、伝説なんて、未来に託して、自分たちは責任取りません……って、今の技術ではどうにもならないので、未来の技術に任せましょうとのたまう政治家みたいなものじゃないか。


「ねえ、僕達も伝説を未来に残して、魔王退治はやめようよ」


「それはできないでしょ。王様の前で魔王を倒すって言っちゃったし」


 ああ、僕のせいなのか?


 僕が後先考えずに王様に宣言してしまったせいなのか?


「あーあ、王子様にあった時に、僕は勇者じゃないし、魔王は倒せないって言っていたら……」


「もし、あの時そんなことを言っていたら、多分、不法侵入罪で、牢屋の中で一生を過ごしていただろうね」


「確かに」


 覧の言う通りだ。


「あの時は、『僕は勇者です。世界を救います』の一択しかなかったよ。びの君は正しい判断をしたんだ」


「正しい判断をしたのに、結果がこれだよ」


「これって?」


「レベル上げもできないからステータスがあがらない、ステータスが上がらないから装備もできないし、ギルドにも所属できない、できないばかりじゃないか」


「そうだね、できないばかりだ。もし、これがラノベとか、マンガだったら、絶望的だね」


 覧は、ため息をつく。


「ジャンルがギャグならわかるよ。実は魔王も弱くて……的な展開なら」


「いや、その展開は望み薄いでしょ。だって、もう、何人もの人が犠牲になってるんだよ」


 覧はどこまでいっても現実的だ。


「そーだよね。もし、これが物語だとしたら、作者はどう収集つけるつもりなのさ?」


「ボクに訊かれてもわからないよ。でも、もし、これが物語で、作者がいるとしたら、一つだけ言えることがある」


「何? 覧?」


「作者は、絶対アホだね」


「うん、絶対アホに違いない」


 僕も覧に同意した。


「死んでも生き返られるといったようなチート設定もないみたいだしね」


 そんなチート設定があれば、どれだけ楽か……


「もし、これが物語だとしたら、作者はきっと、俺YOEEEEEを極めようっていう安易なノリで後先考えず、伏線をはっていかないタイプだとボクは思う」


「僕もそう思う。レベル上がらない、装備できない、ギルドに所属できない、死んでも生き返れない……だもん。三重苦を越えてるし」


「四重奏ならぬ、死重奏だね」


「じゃあ、これが物語だとしたら、バッドエンド直行?」


「あくまで、ボク達の異世界漂流が物語の話ならね」


「そうだよね。これが物語だったらの話をしてるんだもんね」


 そう、僕にとってはこれが現実でここが現実なのだ。


「現実って厳しいなぁ……」


「そうそう、物語よりも現実は得てして厳しいんものなんだよ、びの君」


「現実なんて、大っ嫌いだ。あーあ、これが現実じゃなく、童話のお話だったらなー」


「それなら、一度も魔王と戦闘せずに、魔王と友達になって仲良く暮らしました……みたいな展開かな?」


「実際は、クソゲーみたいな世界だけどね」


 レベル上がらない、装備できない、ギルドに所属できない、死んでも生き返れないんだから。


「クソゲーだとしたら、魔王にやられて、世界は絶望に包まれた……とか?」


「えー。覧、仮にこの世界がクソゲーだったとしても、魔王には勝っておこうよ」


 せめて魔王を倒したノーマルエンドで終わらせたい。


「そうしたいのはやまやまだけど、勝てる要素が1コもないじゃない」


「勝てる要素は1コもないけど、ここから強くなる展開かもよ」


「どういうこと? びの君」


「最終回直前にして、不思議な力が手に入り、一気に魔王をやっつける的な展開」


「野球で例えると、九回裏、2アウト、ランナーなしで8-0。もう負けは決定って時に、不思議な力を手に入れて、9打者連続ホームランで逆転勝利的な?」


「そうそう」


「それ、どんな展開?」


 覧は尋ねた。


「強さに革命が起こって、ステータスが弱ければ弱いほど、強くなるんだよ。つまり、俺TUEEEEEになれる」


「ああ、つまり、びの君が、俺YOEEEEEから、俺TUEEEEEになれると」


「そう、YOがTUにかわるから、名付けて、よーつー革命」


「名前だけ聞くと、腰痛革命みたいで嫌だよ、その革命」


「えー、じゃあ、逆に、つーよー革命?」


「名前だけ聞くと、痛くて痒い、痛痒革命みたいだから却下」


「じゃあ、伝説の剣と伝説の盾と伝説の鎧と伝説の靴があって、その伝説の武具は装備できるとか」


「もし、そんなものがあるなら、きっと大臣がいの一番に話してるよ。あの大臣、そういう伝説の話好きそうだもん」


「伝説は、伝説のまま終わる線が濃厚かな」


 僕達は勇者ではなく、百年後に別の勇者が現れました……的な。


 異世界漂流ってままならないんだなー。


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