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『旅野びの』と『戻衛覧』の異世界漂流記 ~ステータスがファンタスティック~  作者: いたあめ(しろ)


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覧VS大臣 決着する

「僕たちじゃ、歯が立たない。覧、ここは、降参するんだ」


「賢明な選択です、びの様」


「びの君、でも……」


「安心してください、覧様。びの様はお城で丁重におもてなしいたしますので」


「ほら、丁重にもてなしてくれるみたいだよ」


「でも……」


「僕だって、覧と離れるのはいやだよ」


「それなら……」


「それでも、覧の命に代えてられないから言っているんだ。僕だって苦渋の決断、断腸の思いだよ」



 そう、覧の命には代えていられない。


「びの君……」


 覧は、心配を隠せないのだろう。


 眉をひそめ、僕の顔を覗き込んできた。



 覧の不安を払拭するためにも、僕は慎重に言葉を紡ぎだした。


「覧、心配するな。僕は生きて戻って来る」


「でも……やっぱり、びの君だけだと心配だよ」


 覧は顔を俯けた。


「大丈夫。魔王の城に行くわけではないんだ」


 そう。王城へ行くだけだ。


「びの君……」


 よし、ここで覧を安心させないと。


「僕のことは、気にするな、覧。僕は、ムフフな会議に出るよ……って……あちち……覧、なんで僕に魔法を……」


「おしおきだよ、びの君。ボクの命と引き換えても。絶対びの君に大人の階段を登らせないんだから」


「いや、だから、覧のことが心配だからであって……」


「鼻の下伸ばしながらムフフな会議に出るって言っても、説得力ないよ。びの君」


「覧、なんでそんなに怖い顔をしてるの?」


 こんな怖い顔をした覧を今までみたことない。


「そっか、そっかー、そんなに出たかったんだー。ムフフな会議」


「いや、それはね、覧を大臣と戦わせたくないからであって……」


「絶対に行かせない」


「おやおや、仲間割れですか? いただけませんな。びの様は大切な客人なのですから」


 大臣は、僕と覧の間に割って入ってきた。


「大臣、助けて」


 僕は大臣の背中にしがみついた。


「ええ、助けてあげますとも」


「びの君、どうして、大臣と仲良くするの?」


 冷ややかな口調で覧が尋ねる。


「どうしてって……それは……」


「あ、分かったよ。びの君は、大臣に魅了効果のある魔法をかけられたんだね?」


 今まで見たことのないような、昏い表情で機械的な口調で僕に話しかけてくる覧。


 その口調に危機を感じたのだろう。僕は体中がちがちと震えるのを抑えることができなかった。


 まずい、返答を間違えると僕の命が危ない。


「覧、実は、大臣に操られているんだ。ムフフな会議に出るなんて、口が裂けても言いたくなかった……でも、大臣に操られて仕方なく……」


 実際には操られてはいないんだけど、僕は大臣に全責任をおしつける。


「最初から、魅了効果の魔法なんか使ってないですよ、びの様」


「おい、今更いいわけか? 男らしくないぞ大臣」


「そうか、すぐに拷問して正気に戻してあげるからね、びの君」


「そうそう、覧、はやく僕を拷問して正気に戻すんだ……って、僕、もう正気だから。拷問しなくても大丈夫だから。その前に大臣を倒さないと」


「その言葉、大臣を盾にしながら言う言葉?」


 しまった。


 覧が怖すぎて、大臣を盾にしながら言ってた。


 なんたる不覚。


「ほら、これは、大臣のステータスが強かったから、ここで僕が大臣にひっついて重石になれば、覧が狙いやすいと思って。僕がここで操られていないことを証明するには大臣にひっついたほうがいいというか、なんというか……」


 じっとこちらを見つめる覧。


 明らかに疑いの目だ。


 えっと、何か他にいい言い訳はないかな……


 無い知恵を絞りだして必死に次の言い訳を考える僕。


「びの君、良いこと教えてあげる」


 瞳孔が開ききった眼で、僕に向かって、昏く静かに、しかしはっきりと呟く覧。


「何? 覧?」


「男の浮気がばれる時って、嘘を並び立てて、しなくていい言い訳までするときなんだよ?」


「僕ごと狙え、覧!!」


 覧に指摘され、すぐさま格好よく言い換える。


「本当に、びの君ってわかりやすいよね」


 腕組みをして僕の方を睨みつけてくる覧。


 僕は覧から目線をそらした。


 


 

「さてと、びの君のしなくていい言い訳を聞いたところで、大臣を負かしますか」


 ばれてる……


 覧にばれてるよ……


 大臣の背中にしがみついた手の震えが止まらない。


「まさか、本当にびの様ごと私を葬り去るおつもりですか?」


「そうしてもいいんだけどね……」


 ちらっと僕を一瞥する覧。


 ひっ、こっち見ないで。


「さすがにその方法はいただけないよね」


「それでは堂々と1対1(サシ)で戦いますか?」


「いや、その必要はなさそうだ。なぜなら、もう既に、大臣と戦闘をする必要はないからね」


 戦闘をする必要がない?


 どういうことだ?


「それはびの様を諦めたと解釈してもよろしいのですか?」


「諦めてはいないよ。でも、大臣はボクに負かされるんだ」


「え? それは、どういったことですか?」


「ねえ、そもそも、何で、大臣はボクにステータスを確認させたの?」


「何ですか? 藪から棒に……」


「本当は秘密にもできたはずだよね、大臣?」


「無駄な争いを避けるためですよ」


「無駄な争いを避けるため……ね」


「そうです。これだけ身体能力(ステータス)に差があれば、普通諦めるでしょ?」


「それなら、ボクにステータスを確認させるんじゃなくて、ご自慢の身体能力を披露すればいいよね?」


「え?」


 大臣は訊き返した。


「超強力な攻撃をするとか、超速でボクの背後に立つとか、色々できるよね?」


「そ……それは、子ども相手に大人げないことはできないと……」


「それならなんで、ボクが放ったファイヤーボルトを避けなかったの?」


「頑丈さを見せつけてやろうとしただけよ」


「最初は避けようとしてたよね?」


 あ、確かに、大臣は最初避けようとしていた。


「それは、避けるよりも、あえて食らった方がいいと判断したから……」


「ふーん、そうなんだ」


「何か?」


「じゃあ、質問をかえます。大臣はMPが800もあるのに、なんでカノンをなめているの? そんなに頻繁に」


「それは、精神を統一するためで……」


「本当は、MP800もないんじゃない」


「な……何を根拠に?」


「このステータス、補正値がないんだけど」


「……っ!」


 大臣は驚いて言葉にならないようだ。


「補正値……って、なんだったけ?」


 どこかで聞いたような気もするけど……


「ほら、ミドラさんが教えてくれたやつだよ。装備をするとステータスの隣に出てくる数値」


「そういえば、大臣のステータスにも僕達と同じように補正値がなかった」


「武器を使える大臣が、どうして補正値がないのか? 考えられることはただ一つ」


「さっきボクが見たステータス、嘘でしょ?」


「!!」


「ステータス・チェック……やっぱりね」


「やっぱりって、どういうこと?」


「こういうこと」


 覧は、ステータス覧を大きくして、僕に見えるように反転させた。


 オスネ  LV8 身長:183cm 体重:83㎏

 HP:2

 MP:5

 天職:ペテン師 

 筋力:38(+8)

 体力:38(+8)

 耐性:38(+8)

 敏捷:38(+8)

 魔力:38(+8)

 魔耐:38(+8)

 運 :38(+8)

 特技等:嘘八百万(やおよろずのうそ) レア度:☆☆☆



「へえ、本当のステータス平均は38だったんだ」



「嘘八百万……この能力は、相手に見破られると、本当の数値がでてくる能力なのかな?」


 覧は推測しながら、大臣に問う。


「まさか、私の能力を見抜くなんて」


「ばればれ」


 大臣はぎりっと歯の根を鳴らした。


「形成逆転だね」


「形勢逆転だと? そんなわけない。お前らのステータスも、補正値がついてなかった。つまりは、私と同じで偽物のステータスなんだろ?」


 ああ、だから、最初、僕と覧のステータスを見た時、大臣はしたり顔だったのか。


「ねえ、大臣、びの君のステータスって、オール1だったよね?」


「それがどうした?」


「もしも、大臣が言うように、ボク達が嘘のステータスを見せたというんなら、本当のステータス値って、1より上しかないよね?」


「ぐっ」


 そうだ。覧の言う通りなのだ。


 もし、僕のステータスが嘘だというならば、少なくとも、僕のステータスは1ではないのだ。


 それは、大臣よりステータスが上かもしれないということを示唆している。


 まあ、実際はほぼオール1なんだけどね。


「こうなったら、力ずくでも……」


「大臣、びの君の攻撃とボクの攻撃を受けて、HPが2になってるけど、それでも戦うの?」


「そんなの回復薬で……」


「びの君もボクも、黙ってそれを見てると思う? びの君は、大臣のすぐそばにいて、銃も持ってるんだよ?」


 弾は6発入りだから、残ってはないんだけどね。


 そんなこと大臣は分からないはずだから、銃を構えて弾が残っていると思わせておこう。


「万事休すか」


 覧に言い負かされた大臣は膝から崩れ落ちる。


「勝負あったね、大臣」


 戦闘をせずに大臣を言い負かした覧は、にこっとほほ笑んだ。



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