びの、覧からプレゼントをもらう
「こ、これは?」
「空気銃だよ」
「もしかして、武器?」
「もしかしなくても、武器。ボクの魔法と科学との融合の能力を応用して、作ってみたんだ」
「いやいや、ありがたいんだけど、僕が武器を持つと……」
「まあ、これを持ってみてよ」
覧は、銃を僕に投げて寄越した。
「あわわわわ……って、ならない。なんで?」
「それ、正確には装備品じゃないからね」
「これ、装備じゃないの?」
「装備には、耐久を高める魔法や使用者を制限する装備魔法がかかっているのまでは知ってるよね?」
「うん」
確か、ミドラさんも同じようなことを言っていた気がする……
「それが付与されたものでボク達が攻撃すると、バターみたいになっちゃうの。逆に、その効果が付与されていない物は道具とみなされ、果物ナイフや石を投げてもバターみたいに溶けない……ただし、魔物に攻撃すると、1回でダメになってしまう」
「うん、そうだね」
スライムに投げた石も虚空へと消えていったし。
「僕が造った、この空気銃は、装備魔法を付与していない道具なんだ。だから、びの君が持っても問題ない」
「でも、覧、僕たちは、武器を装備できても、敵に攻撃したら、バターみたいに溶けちゃうんじゃ……」
「うん、この銃で相手を直接攻撃したら溶けるね」
「じゃあ、この空気銃も意味ないんじゃないかな?」
「この銃で直接、モンスターに攻撃をしたら……ね」
「ほーら、意味ないじゃないか」
僕が銃を持っていたって、こけおどしにしかならない。
「いやいや、そんなことないよ」
「なんでさ?」
「びの君はこの銃を直接モンスターに投げつけるの?」
「そんなことしないよ。銃なんだから、引き金を……」
「引くだけだよね?」
覧に言われて、背筋がゾッとした。
そうだ、僕は、この引き金を引くだけなんだ。
直接モンスターに攻撃するわけじゃない。
「あれ? でも、弾丸は溶けちゃうんじゃない?」
「弾丸にも装備魔法をかけなければ、当たるまでは溶けないよね? そもそも弾丸って使い捨てだし」
弾丸に装備魔法をかけなければ、僕が投げた石のように確かに溶けない。
「わかってくれた?」
覧、すげー。マジ天才。
あれ?
「だけどさ……僕に銃の才能がなくて、弾が当たらなければ、ただのお飾りじゃないか。撃ってもあたらない自信しかない」
僕は、普通の……いや、かなり底辺の中学生だよ?
銃の技術なんてあるわけがないじゃないか……
「大丈夫」
「何で?」
「ほら、ここにレーザーポインターがあるでしょ?」
「うん、ある」
「このレーザーポインター、かっこいいでしょ?」
「うん、かっこいいね。でも、このレーザーポインターがあると何だって言うの?」
「え? レーザーポインター、かっこいいから、びの君のテンションも上がって、百発百中になるかな……って」
「レーザーポインターつけただけで、僕の銃の腕が上がるなんて、ありえないよね」
「大丈夫。どこにも根拠はないけど、レーザーポインターがなんとかしてくれるよ。どこにも根拠はないけど」
覧、どこにも根拠ないって二回言った。
「何? そのレーザーポインター最強説?」
「まあ、レーザーポインター最強説はおいとくとしても、ボクが大丈夫といえば、大丈夫なのです。ボクを信じて」
「全然信じられない」
「じゃあ、びの君自分を信じて」
「覧、僕がモンスターを銃で撃った瞬間、都合よく才能が開花するなんてことあると思う?」
「それは……キャー」
覧と白熱した議論を続けていると、覧が突然転んだ。
「どうしたの、覧?」
「足が……」
覧の足を見やると、鈍色のゲル状の触手のようなものが覧の右足に絡みついている。
ゲル状の何かの先を辿っていくと、5メートル先に、直径200センチほどの鈍色をした球体があった。
これ、もしかして、ワセシ師匠が言っていた、ハードスライム……
「大丈夫か、覧?」
ハードスライムは、覧の体を自分の体の一部にするかのように、足から上半身へと覧に纏わりついてくる。
「ウォータースラッシュ」
覧はあわてたそぶりも見せずに、水の刃でハードスライムのゲル状の触手を本体から切り落とそうとする。
やったか?
水の刃は無残にも、虚空へと消えていった。
ハードスライムには全く通用していないようだ。




