びの、狩りの前にすりにあう?
5月8日、誤字を修正しました。
ついに、狩りができる!
やったー!!
どんな冒険が始まるんだろう?
わくわくしながら走っていると、どんと何かにぶつかった。
女の子?
「ごめんなさい」
「こちらこそ、考え事をしていて、ごめんよ」
「お兄ちゃんもお金持ってないんだね」
「え?」
「だって、ポケットにも懐にも何も入ってなかったから」
まあ、お金は背中の通学バッグにいれてるからね。
……って、もしかしてこの子、すり?
ぐー
僕のお腹が鳴る。
そういえば、まだ朝食を食べないまま、町に来てしまったんだっけ……
「お金ないんなら、ナルの子分にしてやってもいいぞ」
「子分?」
「お兄ちゃん、お金ないんだろ? 教えてやるから、一緒にすりしよう」
幼さ残る顔で、無邪気に誘ってくるナル。
「ナル、すりはいけないことなんだよ」
「そんなの、知ってるよ」
「知ってるなら、どうして?」
「どうしてもお金が欲しいんだ」
「それなら、働けば……」
「まだスクロールももらってない子どもなんか、誰も雇わないよ」
うつむきながら、つぶやくルカ。
「だから、すりをするの?」
「そうしないと、生きていけないからね」
「そんなことないよ」
「ふん、お兄ちゃんは私みたいな境遇にいないから、そんなことが言えるんだ」
「違うよ。悪いことなんかしなくたって、生きる知恵があれば生きていけるんだ」
「知恵? そんなの、あるわけないよ」
「ないならつければいいじゃないか」
「知恵なんかそうそう降ってわいてこないよ」
「色々なことに興味を示せば、知恵はつくものだって、言われたこともあったな」
「そんなの難しいってば」
「それじゃあ、ナルに一つ知恵を授けよう」
「何?」
「僕の知り合いに君と同じくらいの歳の女の子がいる」
「その子がどうしたの?」
「その子は、全然価値のないものを1000ゴールドで売ったんだ」
「1000ゴールド? 全然価値のないものを?」
うん、そりゃ、びっくりするよね。
「そう、価値がないものを、これは価値のあるものですよって交渉をして、価値あるものに変えたんだ」
「その物って、何?」
「それはまあ、珍しいものとしか言えないよ」
この世界にはない、五円玉だし……
「でも、価値がないものに価値を創り出す。それが、知恵だ」
「でも、ナルには、そんな知恵はない」
「これは、特殊な例だとしても、できることはあると思うんだ」
「例えば?」
「えーっと……お母さんのお手伝いをして、おこづかいをもらう……とか?」
「お家にお金がないから、すりをしようと考えたんだよ!!」
あ、そうだった。失言だった。
「いや、そうじゃなくて、僕が言いたかったことは……そう、誰かに喜んでもらうってこと」
「誰かに喜んでもらう?」
「うん、そう。お仕事をするってことは、誰かに喜んでもらうことだと思うんだ」
「喜んでもらう?」
「そう。お手伝いをして、家族を喜ばせたり、知らない他人を喜ばせることで、その見返りとして、お金をもらう。もちろん、悪いことはしないでね」
「ステータスのないナルにもできるかな?」
「人を喜ばすのに、ステータスなんか必要ないと思うよ」
僕の元の世界には、そもそもステータスなんてないわけだし。
「ナルにも、絶対にできる!!」
僕は断言し、ナルと共に、青い空を仰ぎ見た。
「そういえば、お兄さんは、何処へ急いでいたんだい?」
「あ、ポーションを買いにね」
「ポーション? お兄さん冒険者なのか?」
「まあね」
「それなら、逆側だよ」
「え?」
「お兄さんが走ってきた方向だ」
「あれ? 僕間違ってた?」
「うん。広場の近くで売ってる小さな店のポーションは、効果が薄いけど安い。大きな店のポーションは、高いけど、効果も高い。どの店も品薄で、平時より割高だから、慎重に選ぶといいよ、お兄さん」
「ナル、教えてくれてありがとう。危うく、町中を歩き回るところだったよ」
「これ位のこと、この町にいれば、誰でもわかるから、礼には及ばないよ」
「いや、本当に助かった。ナルは今、僕を喜ばせた。ナルにもできるんだよ、人を喜ばせることが」
「ナルにもできる。人を喜ばせることが……」
「うん、そうだよ。できれば、道案内をしてくれると助かるんだけど……」
「それくらい朝飯前だよ」
ぐー。
僕のお腹が鳴った。
「朝飯前って聞いたら、お腹すいちゃったみたい」
はっはっはっ……
僕とナルは笑いあった。
「ここだよ、お兄さん」
「ありがとう、ナル。あ、そうだ。ちょっと待って。折り紙を折ってあげる」
「折り紙?」
「そう、僕の故郷では、丁寧に心をこめて紙を折ると、その人の願いが叶うという言い伝えがあるんだ。今、ナルのことを思いながら折るから、ちょっと待ってて」
僕は超速で折り鶴を折った。
「ほら、鳥さんだよ」
「お兄ちゃん、すごいね。魔法みたい」
「良かったら、あげるよ」
「いいの?」
「うん。お礼と友情の証」
「本当にいいの?」
「僕はいつでも作れるし」
「ありがとう、お兄ちゃん。絶対大切にするから」
僕は、ナルと別れると、教えてもらった薬屋へ直行した。




