覧、びのに家を買えた理由を解説する
「不動産屋さんは、こんな子どもの召使いに家を買いに行かせるなんて、どこの貴族の召使いだろう? ……と疑問に思う。実際、委任状を出してくださいと言ってきたしね」
「うん、そうだね」
「でも、ボクたちは委任状を持っていない」
「本来であれば必要なんだよね? 委任状」
「うん。必要なんだけど、もしもオテモ様があえて委任状を渡さなかったのだとしたら?」
「あえて渡さなかった?」
そんなことあるのだろうか?
「オテモ様は常識を知らない貴族。平民の子どもでも簡単に家が買えると思い込んで、事情を知らない召使いに愛人宅を買わせにきたというストーリをにおわせることができれば……」
「委任状がなくても不自然じゃない!!」
そうか、それなら委任状がない方が、むしろ自然。
「不動産屋さんは、勝手に想像したはずだよ。家は最初、びの君の名義にしておいて、あとから、オテモ様の名義に変更するのだろうと」
「ふむふむ」
「そこで最後の一手。本当はオテモ様の名前を口止めされていた召使いが、オテモ様の名前だけは伏せてくださいってお願いしてきたら……」
「ストーリーができあがる!!」
「そういうことだよ、びの君」
「でも、委任状を持ってなかったら、オテモ様の僕達が本物の召使いかなんか、分からないよね?」
「だから、ボクは、お金をちらつかせた」
「あ、そっか。子どもの召使いが大金を持ってるはずないもんね」
「その通り」
「そっか。不動産屋さんに僕達は客だと思い込ませたわけだ」
「そういうこと」
「だから、取引ができた」
「ふふふ、普通なら、中学生くらいの年齢の子に、家なんか売らないのにね」
確かに、その通りなのだ。中学生相手に家を売るなんてことは、通常ありえないのだ。
「じゃあ、その後、覧、とても良い物件を紹介していただけたら、オテモ様は次もまた、この不動産屋を利用されるでしょう……って言ったのはどうして?」
「ああ、それは最短で良い物件を紹介してもらうためだね」
「え? 良い物件を不動産屋さんは教えてくれるんじゃないの?」
「それは、不動産屋さんによるよ。最初から良い物件を教えてくれるところもあれば、最初は悪いところを紹介して、だんだんと良いものを見せてくるところもある。中には、条件の悪い物件を高値で買わせるところもあるんだ」
「そうなの?」
「そう。そこでさっきの言葉だよ」
「どういうこと?」
「もし、オテモ様が、今回1回限りの契約しか結ばないんだとしたら、不動産屋さんは、値段が高くて条件悪い物件を売ろうとしたかもしれない」
確かにその通りだ。
「でも、もし仮に、貴族で金持ちで愛人がいっぱいいるオテモ様お得意様になるのであれば、不動屋さんは、最初のうちは、条件の良い家を売ろうとする……ってことだよ」
「ねえ、覧、そこまで考えてたの?」
「当たり前だよ。ボク、一応、宅地宅建取引士の資格持ってるからね」
宅地宅建取引士は、貴族の心のうちや、不動産屋さんの心のうちまでは教えてはくれないと思うのだけど……
「ベッド1つっていうのは?」
「ほら、愛人が来るのに、シングルベッドたくさんだったら、不動産屋さんに疑われるかもしれないじゃない?」
「そっかー」
「まあ、びの君と同じベッドで一緒に寝たいってのもあるけど……」
「ん? なんか言った?」
「いや、こっちの話」




