覧、情報収集の前にしなければならないことをびのに伝える
「情報収集も大切だけどね、その前にしておかなければいけないことがあるのだよ」
「しておかなければならないこと……それは?」
そんなことあるのかな?
「拠点を構えること」
「拠点?」
「今日一日でここでの生活は終わりじゃないでしょ? だから拠点が必要なんだよ」
拠点……つまり寝泊まりするところか……
「確かに、もし宿に泊まれなったら、野宿しなきゃいけないもんね」
そう考えると、拠点は必要だ。
「そう、拠点は必要不可欠なのだよ、びの君」
どこかの大学の博士のように解説する覧。
「それじゃあ、はやく予約をしに行こうよ」
「予約ってなんの?」
「宿屋?」
「え? 宿屋に泊まるの」
「違うの?」
「びの君、ボクたちには、装備を買おうとしたのに、全然使わなかった、たんまりの金貨があります」
金貨がたくさん……ってことは……
「超高層建てで、オーシャンビューのある高級ホテル?」
「まあ、それも良いんだけど、この世界にあるかな? 超高層建ての高級ホテル」
「貴族の家に居候する?」
「僕たちに貴族の知り合いなんかいないよね?」
確かに、そんな貴族は知り合いにはいない。
「じゃあ、王城で寝泊まりさせてもらう?」
「お金があるのに、なんで王城で寝泊まりするの?」
「それなら、どうするの?」
「家を買おう!!」
「え? 今なんて?」
もう一度聞き返す。
「家を買おう!!」
覧は、何を言っているのだろうか?
「家を買う?」
「そう、家を」
覧は、僕の言葉を繰り返した。
「家を? 誰が?」
「びの君が」
「僕が?」
「うん、そう」
…………
「いや、無理無理無理無理無理無理無理」
「なんで?」
「なんで……って、だって、家だよ? 家? 中学生が買えるものじゃないし」
「大丈夫、大丈夫。資金ならたんまりある」
「そもそも、中学生に売ってくれないと思うし」
「大丈夫、大丈夫。宅地宅建士の資格を持っている、ボクに任せて」
「宅地宅建士の資格は、家を買う資格じゃなかったよね? そもそも、元の世界の資格だよね? この世界の資格じゃないよね?」
「似たようなもんだよ」
いや、絶対似てない。この世界と絶対異なるはずだ。
「仮に、不動産屋さんがオッケー出したとしても、大工さんに新築を建ててもらってたら、1年くらい時間がかかるじゃないか。そんなに待てないよね?」
「お金に物を言わせれば大丈夫。ほら、秀吉もお金を賢く使って、一夜城を建てたって話もあるくらいだし」
「秀吉の作ったっていう城は、三日で農地になったんじゃないの? ほら、三日転化って授業で習ったし」
「『てんか』の意味が違うよ。三日天下は、明智光秀が豊臣秀吉に13日で滅ぼされたことを意味するし」
「僕が言いたいのは、新築には時間かかるってことだよ」
「交渉はボクに任せて、1日で家を建てさせちゃうよ」
「嫌だよ、1日で建てた家なんて」
突貫工事じゃないか。怖くて住めない。
「じゃあ、既にできているモデルハウスは?」
「高いと思うから却下」
「じゃあ、中古物件は?」
「まあ、それだったら、いいけど」
「いいんだね?」
「まあ、中古物件なら」
「びの君の言質、いただきました」
いいながら、覧は、突然立ち止まる。
「どうしたの、覧、急に立ち止まって」
覧は、じっと一点を見て立ち尽くしていた。
そのほうを見やると、不動産屋さん。
僕の顔をみつめ、にこにこする覧。
「ミドラさんから、良いお食事が食べられるところと、良い不動産屋さんを聞いておいたんだ。それじゃあ、びの君、お店の中に入ろうか」
覧の手の上で踊らされていたってことか……
なんか、今日一日、覧の買いものに付き合わされているようにしか思えないんだけど……




