びのと覧、今後のことを話し合う
「美味しかったね、びの君」
「いやー、あんなに美味しいとは思わなかったよ」
「ボクもう、お腹いっぱいだよ」
「僕も」
お腹いっぱいに食べられるって、素晴らしいよね。
「それなら、お腹ごなしついでに、町を歩いて散策してみようか」
「それいいね」
僕と覧は、ふらふらと歩きはじめる。
「異世界に来たんだし、そろそろ、モンスター狩っちゃう?」
「びの君は、馬鹿なの? 死ぬの?」
「え? なんで?」
いや、死なないよ。馬鹿なのは認めるけど。
「まずは情報収集でしょ」
「情報収集? そんなの後でいいよ。異世界に来たんだから、やっぱりモンスター狩りをしなくちゃ」
「じゃあ、ボクの出す問題に、びの君が答えられたら、狩りをしよう。できなかったら、モンスター狩りを諦めてください」
「いいよ。どんな問題でもかかってこい」
「それでは、問題です。この町の近くにいるモンスターは?」
この町の近くにいるモンスター?
そんなの決まっているじゃないか。
「ゴブリン」
「ゴブリンだけなの?」
「えーっと……」
何か他にいるのかな?
「はい、答えに詰まった。びの君の負け」
「いや、これはその質問が悪いというか……この問題が難しいというか……」
「それでは、次の問題です」
「そうこなくっちゃ」
「この町の近くにいるモンスターは……」
ん? さっきと同じ問題?
「ゴブリン!!」
僕は、覧が問題を読み終える前に答える。
「……ゴブリンですが、そのゴブリンは、平均どれくらいのステータスでしょうか?」
「そんな問題、分かるはずないじゃない。ずるいよ、覧」
「そうだね。分かるはずないね。じゃあ、もし、ボクたちの前にゴブリンが現れたらどうするの?」
「どうするって……戦うよ」
「もしかしたら、そのゴブリンがレベル100で、ボクたちは何も抵抗できず、殺されてしまうかもしれないのに?」
「ゴブリンがそんなに強いはずないじゃないか。もし、そうだと知っていたなら、逃げればいい話だし……」
「びの君、そこだよ」
「そこってどこ?」
「びの君が今言った、『知っているなら』ってところ」
「ん?」
「『敵を知り、己を知らば、百戦危うからず』っていう、孫子の言葉知ってる?」
「敵の尻? 己の修羅場? 損死? 無駄死にってこと?」
全然分かんない。
「敵のことを知って、自分のことも知っていれば、どんな戦いでも怖くはない……っていう言葉で、孫子っていう人が言ったんだよ」
「もう、最初から、そう教えてくれればいいのに……」
「いや、この言葉は有名だから、知ってるかなって思ったんだよ」
無知ですみません。
「話が逸れたけど、ボクが言いたかったことは、敵のことを知らないで、戦いに行くのは得策じゃないよ。どんな敵がいるか分からないんだし」
「それもそうだね……じゃあどうするのさ?」
「時に、びの君。びの君は、RPGゲームで詰まった時、どうする?」
「どうするって? うーん、詰まったら、ゲームをやめて、積みゲーの仲間入りさせる」
「そっか、びの君はそうだよね……」
「ボクだったら、プログラミングをかえちゃうけどね」
「ん? もしかして、この町の周辺のモンスターをかえちゃうってこと?」
「いやいや、そんなこと、ボクにもできないよ」
「そうだよね」
いくら天才の覧でも、異世界のシステムをかえることなんかできない。
「せめて、攻略本があればいいんだろうけど、この世界には、そんなのないしね」
「もし、積みゲーにしないで諦めなかった時、びの君ならどうする?」
「それは……町の人に色々と訊いて……」
「「情報を集める」」
二人で声を揃えて言い、二人で笑いあった。




