びの、ジオフ世界のお金事情を知る
僕は、担いでいた鞄を揺らす。
じゃらじゃら……
うん、金貨は鞄の中に入っている。
「ちょっと、驚かさないでよ、覧」
「僕の通学カバンにちゃんと入っているじゃない」
まさか、すり替えられたとか? 僕は屑鉄を運んでいるとか?
念のため、鞄を開けて中を確認する。
中身はやっぱり金貨だった。
「金貨はあるじゃないか。びっくりさせないでよ、覧」
「うん、金貨はね。だから、スパゲッテイを食べるお金がないの」
「え? どういうこと?」
「さっき、武具店で、とても嫌な顔をされたの、覚えてないの?」
「え? 装備がドロドロになったから、ミドラさんが迷惑たってこと?」
「違うよ。支払いの時だよ」
「支払い?」
「メイスと木刀と旅人の外套の料金、金貨3枚と銅貨1枚を支払おうとしたとき、金貨4枚で払ったら、良い顔しないで、特別に金貨3枚でいいよって、言ってくれたじゃない」
ああ、そういえば、おまけしてくれてたな……
「それは、端数が1だったから、おまけしてくれたんだよ、きっと」
「おまけの理由は、おそらくほかにあるね」
「他に?」
「お釣りのお金が多すぎたから、良い顔しないで値引いてくれたんだよ」
「お釣りが多すぎる?」
「うん、もしも、ボクたちが金貨4枚で払っていたら、お釣りは……」
「銀貨9枚に銅貨9枚だよね?」
「うん、そう。でもね、ここの町、銅貨はたくさん流通してるんだけど、銀貨と金貨は少ししか流通してないみたいなんだ」
「少ししか流通していない?」
「銅貨は腐るほどあるのに、それに対して金貨と銀貨は少ないってこと」
「そうなるとどうなるの?」
「銀貨のおつりが足りなくなる」
「なんで銀貨だけ足りなくなるの? 金貨は?」
「びの君、金貨はそもそもお釣りにはなりえない」
「え? どうして?」
「びの君は、元の世界で一万円のお釣りをもらったことある?」
「そんなのあるわけないじゃないか。一万円より大きなお金なんてないもん……あ、そういうことか」
「そう。この国の一番大きなお金は金貨。だから……」
「金貨のお釣りはありえない」
「銀貨は、金貨のお釣りとして、かなり使われる」
「じゃあさ、最初から、金貨を両替して、銀貨をたくさん用意しておけばいいんじゃない?」
「この国では、金貨を銀貨に両替するのにもお金がかかるから……」
「え? 両替って、無料じゃないの?」
「ミドラさんの話だと、両替ギルドがあって、両替するにも手数料がかかるんだって」
そうか、元の世界では、一万円札を千円に両替しても、手数料はかからないけど、ここは異世界だから、両替するにも、手数料がかかるのか……
「じゃあ、銅貨でお釣りを出したらいいんじゃない?」
「びの君、いい着眼点だけど、今回の場合、びの君は、99枚の銅貨をもらうの? 銀貨があるのに? 日本で考えてみて、1000円札9枚あるのに、100円玉を90枚出されたらどう?」
「持ち運び面倒だね」
「お店の評価も落ちるんじゃないかな?」
「確かに」
「びの君、あの大きなお店でさえ、9枚の銀貨のお釣りを出すことを渋ったんだよ? もし、この小さな露店でボク達がここで金貨を出したら、どんな顔すると思う?」
「それは……」
絶対いい顔はされないかな……
「でもさ、1回だけでしょ? それならさ、旅の恥はかき捨てで……」
「ボクたちは観光しに来たんじゃないんだよ?」
「うん、まあ、それはそうなんだけど……」
「ここに何日逗留するかわからない。もしも、今日、ここで金貨を出して、嫌な顔されて、お客様として認められなくなったら……」
「認められなくなったら……」
「ここらへんの露店でお買い物ができなくなるかもしれない」
がーん。それは困る。
「……というわけで……」
…………
……




