びのと覧、ギルド登録の前の説明をうける
入り口のところには、魔法ギルドへようこそという立て看板があり、魔女のような帽子をかぶった暗い顔の女の子や、杖を持った暗い顔の老婆や、魔術書をもった暗い顔の女性など、暗い顔をした人が多く出入りしている。
「もう一度確認するけど、ここが、魔法ギルドなんだよね?」
「そう……みたいだね」
「ここに僕達入るの?」
陰気な人ばかりで、非情に入りづらいんだが……
「入らなければならないね……入りづらいけど」
まあ、こんなに、肩を落としたかのように暗い雰囲気で歩いている人たちばかりだったら、入るのためらうよな……
魔法ギルドっていうのは、暗い人たちの集まりなのだろうか?
そんなところに覧を所属させてもいいのだろうか?
覧までもが暗くなってしまったら、どうしよう?
不安に思いながらも、ギルド内へと入る。
「あらっ? あらあらあらっ? もしかしてー、このギルドはじめての方ですかっ?」
「はい」
覧が呆気にとられながら、元気はつらつとしたお姉さんの問いかけに頷く。
おー、受付の人は、陽気だな。
少し安心。
「はじめてということはっ、この由緒正しい魔法ギルドにご入会希望ということですねっ? いや、そうですよね? そうに決まってますよねっ?」
「はい、まあ」
明るいキャラは覧の苦手なタイプだろうけど、気圧されるな、頑張れ。
「新機ギルド会員っ、二名様っ、ごあんなーいっ」
受付の人がごあんなーいと叫ぶと、ギルドスタッフ全員が「ごあんなーいっ」と唱和する。
何? ここ? まるで居酒屋なんだけど。
表の暗い雰囲気とは裏腹に、ギルド内のスタッフは、滅茶苦茶明るい……
「あ、ギルドに入るのはボクだけなんだけど……」
「それはそれは、失礼いたしましたっ。二名様ではなく、一名様っ、ごあんなーいっ」
「ごあんなーいっ」
ギルドスタッフ全員が、またしても唱和する。
覧はこのテンションについていけないのか、僕の顔をじっと覗き込んでくる。
いや、僕だって、このテンションは厳しいよ……
「由緒正しき当魔法ギルドの説明を聞きますかっ? 聞きますよねっ? 聞いてくれますよねっ?」
「えっと、ボクそういった説明は……」
「そういった説明が大好きなんですね? わかります。魔法ギルドにいらっしゃる方は、みんなそうおっしゃるんですよ。やはり、魔法ギルドに導かれるかたは違いますよね」
覧は、ふるふると首を横に振る。
よし、覧。ここは、僕に任せて……
「あの、僕達ですね……」
僕が困った表情で、やんわりと断ろる旨を伝えようとすると、ギルドスタッフは僕の言葉をつづけた。
「はっ、その表情っ。何も言わなくていいですっ。言いたいことは分かってますっ」
おお。さすが、スタッフ。俺の表情で気持ちを汲み取ってくれるとは。
「私のお昼休憩の心配をなさってるとっ」
え?
「由緒正しき当魔法ギルドの説明は約1時間かかって、長くて大変だから、こんなお昼時に来てしまい、申し訳ないということですねっ?」
いや、全然わかってないよ。
「心配には及びませんっ。この説明が終えてから、休憩しますんで」
そもそも心配してないからね。
「まずは、魔法ギルドの沿革についてですねっ……」
うわー、なんか、つまんない上に難しい話してる……
開始5秒で、気絶しそうなんだけど……
このまま、気絶でもしようかな……
……って、気絶なんかできるか。
気絶したくない時に気絶して、気絶したい時に気絶できない。
人生ってままならないな……
「……ということなんですよっ、お兄さんっ。すごいですかっ? すごいですよねっ? すごいに決まってますよねっ?」
え、僕?
「はぁ」
適当に相槌を打つ。
「分かっていただけますかっ。さすが、お兄さんっ、それでですね……」
ちらっと覧を盗み見る。
覧は、なんとかしてと目で訴えてきた。
うん、わかったよ、覧。
「あのー、僕達ですね……」
僕が意を決して言葉を紡ぎ出そうとすると……
「……あ、この説明、難しかったですかっ、お兄さんっ。ここの説明は、わかりにくいですよねっ。わかりにくかったですよね? わかりにくいに決まってますよね?」
決めつけ。
「そんなこと……」
「そんなこと、ありますよねっ。あるんですよねっ。あるに決まってますよねっ」
こっちが何か言おうとしても、全然聞いてくれない。
ああ、分かったよ。うん、分かった。
僕には、この人を止めることは無理だということが。




