びのと覧、会計を済ませる
「それじゃあ、さっきのようにいくにゃ」
ミドラさんは、先ほどと同じように、針を覧に投げつけた。
青衣を着た覧には刺さらず、床へと落ちる。
「溶けてるにゃ?」
「溶けてはないみたいだね」
覧は、自分の腕を確認する。
「皮膚のところを狙うとどうなるにゃ?」
「やってみよう」
ミドラさんは、覧の手のところにぷすりと針を刺した。
「痛っ、痛いよ、びの君」
覧は、上目遣いで甘えてくる。
「いや、ミドラさんは、針でちょこっとつついただけだろ。血も出てないみたいだし、我慢しようよ」
「拷問大図鑑が役に立つのは、今日かな?」
「痛かったですよね、大丈夫ですか、覧さん」
拷問大図鑑を出してくるのは、卑怯だぞ、覧。
「なるほどにゃ」
「何かわかりましたか? ミドラ先生」
お伺いを立てる僕。
「覧様の青衣は、おそらく、防具と普通の服の中間に位置するにゃ」
「防具と普通の服の中間?」
どういうことだ?
「防具は、普通、魔法の力が込められていて、肌が露出しているところも、ある程度は守ってくれるにゃ。加えて、魔法の力で耐久性も特化していて、ぼろぼろになったとしても、壊れたり切れたりすることもないにゃ」
便利だなー。さすが、異世界。
「でも、普通の服は、肌が露出しているところは守ってくれないにゃ。それに、普通の服は、耐久性がなくなるとすぐにずたぼろで、装備として意味をなさないにゃ」
それが、防具と普通の服との違い……
「覧様とびの様の白衣と制服には特殊加工されていて、耐久性がそこそこあるにゃ。普通の服と同じようにすぐにずたぼろにはならないにゃ」
「なるほど」
わかったような、わからないような……
「結局、ここで防具を買っても意味がないってことと、この青衣と制服は現時点でボクたちの最強防具だから、大切にしろってことが分かったね」
「そういうことにゃ」
そういいながら、ミドラさんはサムズアップをした。
「お会計は、金貨3枚と銅貨1枚にゃ」
「じゃあ、金貨4枚で」
ダメにしてしまったメイスと木刀、旅人の外套のお金をお店に払う。
「あ、金貨4枚でお支払いにゃ?」
眉間にしわを寄せるミドラさん。
「それなら、今回はおまけして、金貨3枚でいいにゃ」
「色々とごめんね、ミドラさん。せっかく装備選びを付き合ってもらったのに、結局、何も買わないで、弁償金だけなのに、おまけまでしてもらって」
「いやいや、お二人のおかげで、見聞が広まりましたにゃ」
たくましいな、ミドラさん。根が商人気質なのかもしれない。
まあ、異世界から来る客なんて、後にも先にも僕達くらいだけだと思うけど。
「最高装備を揃えるためにここでお金を湯水のようにじゃぶじゃぶ使おうと思ってたんだけど、計画倒れだねー」
「確かに。ステータスによって、装備できるものとできないものがあるとは夢にも思わなかったよ」
したかったな。最初から最強装備で、俺TUEEEEE―――。
「次はどこ行くの、覧」
「ギルド登録……かな?」
「待ってました!」
「今すぐに……って、言いたいところなんだけど……」
「どうしたの? 覧?」
「あのね……ちょっと……言いにくいんだけど……」
頬を赤らめ、もじもじする覧。
「はっきり言っていいよ、覧」
「……を足したいんだ……」
「え?」
「用を足したいんだ」
用? ああ、トイレか。
「それでね、ちょっと時間がかかるかもしれないから……」
「あ、じゃあ、僕、店の前で待ってる」
「ありがとう、びの君」
僕だけ先に武具屋を出る。
ギルドという言葉ににわくわくしながら、僕は覧を30分ほど待ち続けた。




