覧、旅人の外套を装備してみる
「メイキャップを買うかどうかは置いといて、この貸し出し用を使うにゃ」
「ありがとう」
覧は、メイキャップを被り、渡された旅人の外套を試着する。
「ステータスに反映はしないけど、装備をすること自体はできるみたい」
あとは、本当に守ってくれるかどうかだ。
「よし、僕が覧に軽く攻撃してみる。それで、覧を守ってくれるようなら、その装備品は合格だろ?」
僕は、側にあった木刀を手に取る。
「あ、ちょっと、びの君」
「え? あわわわわ」
木刀を持ったので、電気が走る。
「びの様は、武器を持つこともできないにゃ」
「そうでした」
「ミドラさん」
「何にゃ?」
覧はミドラさんを呼ぶと、耳打ちしてごにょごにょと伝える。
「え? そんなことしていいのかにゃ?」
「お願いします。ミドラさんにしか頼めないんです」
「分かったにゃ、覧様。ミドラがお相手するにゃ」
いいながら、覧と距離をとり、対峙するミドラ。
覧がよろしくといった瞬間、ミドラは右手を大きく振りかぶって何かを投げつけた。
あれは……針か?
針が当たったところだけ、外套に穴が開いた。
「どうやら、攻撃されたところが……溶けて穴が開くみたいだね」
「穴が開いたら意味ないんじゃ……」
「いや、そんなことないにゃ。そもそも、この針では、普通、旅人の外套に穴を開けることはできないからにゃ」
え、つまりは、本当に装備を買っても意味ないじゃないか。
「それに……体が……マヒしてきた……」
「ちょっと、待った。ミドラさん、何投げたの?」
「皮膚に刺さったら1分ほどマヒするしびれ針にゃ」
「なんで、覧にそんな危ないものを投げたの?」
「覧様がそうしろっていったにゃ。旅人の外套には、マヒ無効の効果が施されているからにゃ」
「防具の状態異常防備機能も試したってこと?」
「そうにゃ。覧様がそれをしないと分からないっていうからにゃ」
僕は覧を振り返ると、にこっと笑う覧。
「ごめん、びの君に……説明したら、危ないことは……やめろって、止められそうだった……から」
覧……
「覧、次からは、ちゃんと説明してからやってよ」
覧の回復を待っている途中、口を出さずにはいられなかった。
「うん、次からはそうするよ。でも、僕たちに装備はできないってことなのかな?」
「そうなのかもしれない……」
「あの、沈んだ空気の中失礼しますにゃ」
「どうしたんですか?」
「ちょっと、このフード付き青色白衣、羽織ってもいいですかにゃ?」
ミドラさんは、覧が先ほど、脱いでいた白衣が気になったようだ。
「かまいませんよ」
「うにゃ、これは、すごいにゃ。こんな生地、初めて見るにゃ」
「まあね。そのフード付き白衣……もといフード付き青衣は、現代の科学の結晶ですからね」
「それなら、実験に失敗しても青色にならないようにしとけばよかったのに」
「ちっちっちっ。びの君、わかってないな。これは、偶然の産物が創り出した、アートなのだよ、アート」
「分かりますよ、覧様、染め物をする時には、どんな色になるんだろうという感覚に似てますよね」
「分かってくれるのかい?」
「もちろんです」
「二人で意気投合してるところ悪いんだけど、装備、本当にどうするの?」
お金があっても、商品があっても、攻撃力も防御力もあがらないんじゃ意味ないんじゃないか。
「ミドラが思うに、この青衣なら、大抵のことに結構耐えられそうにゃ」
「え?」
「当然だよ。ボクの着ている白衣……いや、青衣は特注で、5トンまでの衝撃は吸収するし、防刃性、耐火性、耐寒性、耐電性、耐酸性があるんだから」
え? そんなにすごい白衣だったの?
「こっそり、びの君の制服も改造していて、ボクの実験が失敗して怪我させないように、衝撃吸収性、防刃性、耐火性、耐電性、耐寒性はあるんだよね」
「え? そうなの?」
「ついでに言うと、中学校で変な虫がつかないか調べるために、盗聴器もしこんであるんだよね……」
「ん? 今なんか言った?」
「なんでもないよ。こっちの話」
「この白衣なら、ミドラのお店で防具を新調しなくてもいいのではないかにゃ?」
「え、本当? ミドラさん」
「多分、大丈夫だと思うにゃ」
「じゃあ、この白衣と制服も同じように溶けてしまうのか調べてみよう」




