びの、ミドラさんに怒りを覚える
「何でさっ!? 僕ら、お客だよ? お客に装備品を売るのが君の仕事でしょ?」
僕はミドラさんにつっかからずにはいられなかった。
「びの君!!」
いさめたのは覧だった。
「ミドラさん、貴女の気持ち分かります。薦めた防具がどろどろに溶けてダメになるかもしれませんもんね」
「ダメになったら、僕たちで買い取ればいいじゃないか! お金はあるんだし」
「やっぱり、お客様に薦める防具はないにゃっ!!」
「なんだとっ!!」
頭にきた。
ミドラさんの態度、お客様にする態度じゃないよね。
「びの君、落ち着いて。お金じゃないんだよ」
「お金じゃない? どういうこと?」
「ここの製品は全て、丹精こめられて作られた手作り製品なんだよ。ボクが防具をダメにすることによって、職人さんの苦労が一瞬でなくなってしまうんだよ?」
「防具をどろどろにされた上、お金で買い取るから売れと言われるのは心穏やかじゃないよ……」
「それってどういうこと?」
僕は興奮がおさまらず、覧の言葉がなかなか頭に入ってこない。
「びの君、一度落ち着いて。ね?」
「うん」
覧の言葉で、少しクールダウンする。
「ボクが一生懸命作った発明品をびの君が売ったとしよう」
僕が、覧の発明品を売る……
「その発明品が、お客様の手によって、一瞬で壊されたら、びの君はどう思う?」
「それは、嫌な気持ちになるよ」
「しかも、お客はお金を持ってるんだから、他の発明品も売れよ……って言ってきたらどうする?」
「そんなお客、帰ってもらうよ」
「今、ミドラさんは、びの君と同じ気持ちを味わっているんだよ」
「あ……そうか」
僕は、お金があるということに気を取られ、そんなことにも気づかなかった。
「ごめんなさい、ミドラさんの気持ちを汲み取れなくて……」
「こちらこそ、ごめんなさい。あなたたちが特殊な体質で、わざとしているんじゃないというのは分かってるのに……」
いつしか、ミドラさんの目から一筋の涙が流れていた。
「装備品を大切に使いこんで、ぼろぼろになってしまったから買い替えるというのならわかる」
ミドラさんは呼吸を整えてから続けた。
「だけど……目の前で、新品のメイスと木刀がドロドロに溶けて、その上、私の作った人形まで疑われて、私が選んだ武器を不良品扱いまでして……あげく、紹介する防具までダメにされたらと思うと……」
ぽろぽろと涙を流すミドラさん。
「びの君、他のお店に行こうか」
「そうだね。これ以上、ミドラさんの心を傷つけるわけにはいかないし」
まったくもって、僕が悪かった。
「ごめんなさい。ミドラさんを傷つけるつもりではなかったんだ。現実をうけいれられなくて、ついミドラさんとミドラさんの紹介してくれた武器を疑ってしまった」
僕たちが、お店を出ようとしたその時だった。
「ダメにゃ、貴方達には、ここで防具を買ってもらうにゃ」
「……え? でも……」
「貴方達の商品を大切に思う気持ちと、店員を大切にする誠意は十分伝わったにゃ。ここで、びの様と覧様を他の店に奪われたとなったら、店の威厳に関わるにゃ」
「でも、防具品をダメにするかもしれないんだよ?」
「それなら、今、いいアイディアが浮かんだにゃ」
「いいアイディアって?」
「非正規品を買っていただけませんかにゃ?」
「非正規品?」
「ここに運搬されるさいに、破損や傷ができてしまい、標準価格で売ることができなくなってしまったものにゃ」
「いいの?」
「今みたいにバターになったら、心は痛むけど、結局処分しなきゃいけないから、1度使われたなら、1度も使われずに処分されていくより心が痛まないにゃ」
「「本当にありがとう」」
覧と僕、二人そろって感謝を伝える。
「そうと決まれば、早速持ってくるにゃ」
僕と覧は顔を見合わせ、微笑んだ。




