覧、メイスを試着し、試しうちする
「じゃあ、ここの店、武器の能力を試せる?」
「人形、『タコ殴られ君』ならあるにゃ」
名前のセンス悪っ。
「その人形、一回このメイスで殴らせて」
『殴らせて』って、覧、怖いよ。言い方、気を付けよう。
「じゃあ、準備するから、ちょっと待ってるにゃ」
カウンターの奥へと向かうミドラさん。
「覧、メイスなんか使ったことあるの?」
「あるよ」
そうだよね……小学生がメイスなんか使ったこと……
「……あるの?」
「ん? 当然でしょ?」
今の小学生は進んでると話に聞くけど、メイスの使い方まで知ってるのか……
「ちなみに、どうして知ってるの?」
「拷問大図鑑に載ってたから、試作して、試し打ちした」
そっかー、拷問大図鑑かー……って、怖いよ。
何でそんなの読んでるの、覧さん。
「びの君にいつ拷問してもいいように読んでたんだ。拷問大図鑑」
いつもより可愛らしく言う覧。
そっかー、僕に拷問するためかー…………って、怖いよ。
語尾にハートがつきそうなくらい可愛く言っても、僕は誤魔化されないからね。
僕が覧様に慄いていると、準備を終えたミドラがやってくる。
「お待たせにゃ。このタコ殴られ君は、大人用に作ってあるから、覧様がどんなに力をいれても、壊れないにゃ。思いっきり、どつくといいにゃ」
ミドラさんが持って来た人形はタコの形をしていた。
うん、タコ殴られ君という名前あながち間違っていない。
ありがとうと覧は一言告げると、やーと叫びながら、人形をどついた。
「にゃ? これはどういうことにゃ?」
「……溶けてる……?」
僕は、自分の目を疑った。
加熱されたバターみたいに溶けているのだ。
メイスが。
「どういうことにゃ? なんで、金属製のメイスが溶けてるにゃ? こんなのはじめてにゃ」
ミドラさんも驚きを隠せない。
「なんで、メイスの方が溶けるの? 覧」
「メイスを装備しても、スクロールに反映されていないように、現実にも反映されてないってことだよ、びの君」
「それって……」
「多分、他の装備でも……」
覧は言葉を濁したが、同じことがおこると言いたいんだろう。
最悪だ。僕たちがどんな装備をしても、どんな攻撃をしても、攻撃した側の装備が溶けてしまうということだ。
「まだ、わからないじゃないか。とりあえず、弁償してもいいように、一番安い装備で試してみよう」
ミドラさんは、少し暗い顔をしながら、木刀を覧に渡した。
覧は、もう一度、タコ殴られ君に攻撃する。
どろっ
木刀は、タコ殴られ君に当たる前に確かに溶けていた。
木製なのに、溶けたバターのようだ。
「やっぱり、ボク達には武器を装備できないんだよ……」
「そんなことあるはずないじゃないか」
異世界に来て装備ができないなんて、聞いたことがない。
「びの君……」
「あ、わかった。このタコ殴られ君が壊れているんだよ」
そうだよ。そうに違いない。
「にゃ? ミドラお手製のタコ殴られ君を疑うのかにゃ?」
「そうだ、僕たちにたくさんの不良品を買い取りさせるために、攻撃されると装備が溶けるようにタコ殴られ君を……」
「びの君、びの君も自分で気付いてるでしょ? タコ殴られ君は悪くないよ」
「覧……」
これから、僕たちは、魔王達を倒していかないといけないのに、ステータスも低くて、ろくに装備もできないんじゃ、どうしたらいいんだ?
「とりあえず、防具も装備してみよう」
覧は、防具に一縷の望みをかけた様子で切り出した。
「うん、まあ、覧がそういうなら、ミドラさん、防具を見繕ってよ」
「いやにゃ。防具を薦めたくないにゃ」
え?




