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「氷雅、あれ啓さんじゃねーの?」
「あ、本当だ」
帰り際、悠一に言われて正門前に目を向けると、日差しを浴びて青く輝くスポーツカーが停まっていた。下校時で生徒が多いせいかかなり注目を浴びてしまっているようで、満更でもないが少し恥ずかしいような気もする。
その窓から、俺に気づいた啓さんがひらひらと手を振っていた。
「今日、用事でもあった?」
「用事……? いや、何も言われてないと思う」
恭介の言葉に、そう答える。
何だろうな、と呟きかけて、啓さんの後ろに乗る2人の少女に気づいた。あの2人の存在について怜や恭介、悠一が知ったらあらぬ誤解を招きかねないうえに、本当のことを話すわけにはいかないので、できれば知られたくない。
「ま、まあ急に用事ができることもあるよな」
そう思った俺は少しだけ早口で誤魔化すように言いながら啓さんの車へ走り寄った。
「ん、氷雅またねー!」
手を振る怜に俺も手を振り返して、青いスポーツカーの助手席に座る。
「知られたくないだろうに来ちゃってすまないね。車、さっさと出した方がいいかな?」
気を利かせてそんなことを言う啓さんに、お願いしますと頷いた。
「了解。じゃあ行くよ」
そう言って彼は不敵に笑う。普段は穏やかなその瞳が、眼鏡の奥で鋭く光った。
次の瞬間、急加速。背中がシートに押し付けられる。後ろで、茜がひゅう、と口笛を吹いた。
「あ~、たまんないね! 最近全然休みが取れなくてさ、久しぶりなんだよ。目的地はすぐそこなんだけど、しばらく走らせてもいいかい?」
堪えきれないという風に歓声を上げて、啓さんはさらに速度を上げる。スピードメーターはとっくに法定速度をぶっちぎっていた。それでいいのかとは思ったが、スピードが速いのはこちらもそれなりに楽しいので何も言わないでおく。
「構いませんけど……」
そう言って後ろを振り返ると、凪が仏頂面のまま親指を立てていた。
「OK、なら決まりだね。飛ばすからちゃんと掴まってなよ!」
「啓さん……それ、言いたかっただけでしょ」
アクセルを踏む足はそのままに、バレちゃった? と彼は笑った。窓を開けると吹き込む風は突風と言っても差し支えなかったが、それくらいが気持ちいい。
「で。これにはどういう事情があるんですか?」
流れていく景色を眺めながら訊ねる。
「ん、ジュリーに聞かなかったかい? 僕がこの子らと知り合いなのは、すばるの親玉と何かと縁があるからでね」
「――すばる?」
聞き覚えのない名前に首を傾げると、啓さんは快く教えてくれた。
「あれ、聞いてなかったかい? すばるって言うのは、この子らの部隊の名前だよ」
続けていいかな、と聞かれて話の腰を折ってしまったことに気づく。
「そいつがどうにも氷雅について何か知ってるらしい。いや――正確に言えば、僕も多少は知ってるんだけど。そうは言っても深い事情にはあまり詳しくないから、直接聞いた方がいいだろうってことになったんだ。だからこれから行くのは、」
そこで一拍溜める。彼の眼鏡が、怪しく光った。
「〝特殊部隊:すばる〟の本拠地さ」




