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第54話 魔王の居城


 取り合えず…………ラルトス君には休養をしっかりと取って貰うとしよう。

 いや、この世界で過労死とかブラック過ぎるでしょう。

 まぁ今後は少しタイトなスケジュールは組み込まない様にはするとして、しかし近々(きんきん)に問題が出そうなのは――

「やっぱりグレイスは来るか……まぁ既定の路線ではあるのか」

 難民から聞いてる限りじゃあ酷い統治の様だし我慢した方ではあるのだろうが、民を巻き揉まれるのは業腹だ。

 事前の策が役に立ちそうで何よりか。


 

 僕が里を出て向かったのはラビエラとシェーラが戦った湖だ。


「……だいぶ綺麗になってきたなぁ」


 湖の中央には白亜の城が浮かんでいる。


 坂橋を渡れば正門が静かに開き、僕の入城を受け入れてくれた。



「お帰りなさいませ、ダーウェス様」

 一番手前のメイドが僕に告げると僕の道を空け左右に並んだメイド、吹き抜け二階廊下に並んだメイド達、総勢二百名が一斉に――お帰りなさいませ――と礼を発してくる。

「ただいま。ご苦労さん」

「いえ」

 入る僕の後に最初の一人が続き、残りは頭を下げて見送ってくれた。


 

 この城は僕がラビエラと邂逅を果たした目覚めた時に居た城だ。

 グレイス帝国と事を構えた時に、万が一にも連中が攻めて来た場合に大森林の人間を巻き込まない様に皆とは別に居を設けた。

 支配者っぽい城であれば向こうも居城だと勘違いしてくれるだろうし、態々襲いやすい場所に移して来たんだ。攻め込むならこちらを狙えと言う話だ。

 魔力を使って土や岩で組み立て様かとも考えたんだけど、そこで思い出したのが目覚めた時の廃城だった。

 初めから建てるより直す方が簡単だからね。

 東の果ての湖の島に建っていた廃城を、僕が此処まで移しこの湖に浮かべた。

 文字通り湖面から十メートル程の場所に()()()()()()訳だが、まぁ目立つから良いだろう。

 

 外観は僕がざっと直したんだが中は補修も維持も手間が掛かる。

 その為に僕が召喚したのが彼女達、シルキーだ。

 外見は皆、年若い女性の容姿をしているのだが、基本は精霊。

 向こうの世界の知識で確か家事をする妖精の話があったなぁと思って相談したのだが、こちらの世界でもそれは存在すると聞き呼び出した。

 もっとも、呼び出す者の魔力による影響を強く受けるらしい。

 僕の魔力で呼び出したからね。一般に知られるシルキーからは些か逸脱した精霊になってしまったらしいが、サリウの見立てでは働きに関しては問題は無いらしい。むしろ高性能と笑っていた。

 一番最初に呼んだ彼女、僕がマリアと名付けた彼女が纏め役となっている様だ。


「城内、大分綺麗にしてくれたようだね」

「はい。まだ完全では御座いませんが一両日には、いつ何時でもお客様をお迎え出来る体制が整うかと」

「ありがとう、マリア」

「勿体ないお言葉」

 それならば間に合うだろう。

 基本、僕はラクエルの里に住んで居るのだけれど、これから先は少し考えなければ駄目かもしれないとは思っている。

 僕等への用事や来訪が多くなり過ぎている感が否めない。

 血生臭い案件も少なくはないのだから、子供達の傍で話を進め続けるのも良くは無いだろうし、行政と生活区はやはり分けた方が良いのだろうとは思う。

 なにより闇討ちや襲撃の恐れも無い訳じゃないしね。

 それに此処まで動いてくれているメイド達にも、無人の城の整備を延々とさせるのもどうかとも思うのだけれど、それに関しては実の所あまり問題視はしていない。

 彼女達は好きでやっているんだよね。そこには理由も動機も無い。

 彼女達シルキーはそういう存在なのだという事だ。

 家事をするのが存在意義とでもいう存在らしい。

 そして僕の影響を受けている彼女達は、自分達の領域たるこの城に不当に侵入しようとする輩には容赦の無い鉄槌を下す。

 オーガ数人掛かりだろうがシルキー一人はソレを撃退してしまう。

 まぁ僕の魔力の所為でもあるのだけれどね。


 執務室の様な部屋の机に付いた僕にマリアが畏まる。

「ラビエラ様から連絡が入りました。今夕には此方に登城されるとの事です」

「そうか。リーヴァス殿は?」

「明日の登城になると先ほど使い魔が」

「彼も忙しいね」

 若干、呆れそうにもなるが、彼の貢献で此処まで大森林が治まっているのは事実だ。

 一度、マリアを注視する。

「そろそろ此方に拠点を移す時期かと思っている。君達には苦労を掛けるかと思うが今後も頼むよ」

「なにより本懐で御座います。一同、精勤に努めさせていただきます」

「ありがとう」

 

 まぁ此処に住む事になるのは僕とラビエラ、それにリーヴァスの三人だろう。

 あとはシルキー達だが、彼女達は生も死も無いし休息も必要としない。

 大森林内の情報は基本は伝令だ。

 そして緊急性のあるモノに関しては風の精霊を使って伝達しているのだが、本来が精霊のシルキーはその風の精霊との意思疎通が可能だ。

 例え僕等三人がこの城に籠っても問題無く大森林の情報が入るのは、そのシルキーの能力が大きい。

 僕等三人だけであれば、たとえドラゴンに強襲され様がまったく問題無く対処出来るだろう。

 正直、もっとも安全な状態であると言える。

 


「さぁて、次はどう出るか」

 机の上に置かれているワグナスの地図を眺める。


 グレイス帝国と西の覇者。


 このワグナスにおける懸念は残る二つとなった。

 喰うか喰われるかの話になるのか、共に歩める話となるのか。



「それが問題だ」




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