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第52話 いつもの朝に


 気配を感じると意識が浮かび上がる。

 けれど……あぁ……まぁ、良いのか。

 気配の正体に気付いたままに眠っていると――ドンッ! と腹に衝撃が来た。

「っと」

「お父さん朝だよぉ」

「とうさんおきた~?」

「……あぁ。起きたよ。おはよう」

「「おはよーーー!!」」

 朝から元気な事は良い事だよ。

 ベットの上に身体を起こすと更に四人の子供達がベットに飛び乗ってきている。

 皆笑顔で、今日も良い日だね。

「他のみんなはどうしたんだい?」

「んとねぇ」

 ん? どうやら子供達との会話は此処までらしい。

「あっ! ダーウェス様! 申し訳ございませんっ!」

「ふふ、良いさ。おはようミリー」

「おはよう御座います、ダーウェス様」

 子供達を追いかけて僕の部屋に訪れたのはミリーだ。

 彼女は今では僕の屋敷に住み、子供達の面倒を見てくれていた。

「ほら皆っ! 勝手にダーウェス様のお部屋に入っちゃダメだって言っているでしょうっ!」

「ええーーー。でもとうさん良いって言ってたもん」

「ミリーのケチンボお!」

「「「「そぉだそぉだあ! ケチンボォ」」」」

「ななななっ!!!」

「ははは、っと」

 いかんいかん。笑っては駄目だった。

「こぉらっ。ミリーにそんな事言っちゃ駄目だよ。彼女の言う事を聞かないと大変な事になるんだぞ」

 子供達が「大変な事って?」と首を傾げるが、う~ん……さてどうしようか。

「その日の昼から……」

「「「「「「昼から?」」」」」」

 だんだんとのめり込んでくるなぁ、って、ミリーまで真剣に成らなくても、ねぇ。


「ミーチが食べれなくなる」


「「「「「「っ!!!!」」」」」」

 まさに驚愕! と言った感じで僕とミリーを交互に見詰めると――

「「「「「「ごめんなさーーいっ!」」」」」」と走り去っていった。

「あ、こらっ! まちなさーいっ! すいませんダーウェス様あの」

「あぁ、良いから良いから。頑張ってね、ミリー」

「はい! って! 外に出る時は靴を履きなさいって言ってるでしょーーーっ!」

 そう言って追いかけるミリーも、まぁ裸足なんだが……

 つい微笑ましく眺めてしまう。

 この屋敷には多くの身寄りの無い子供と女性が暮らしている。

 この大森林において魔獣や魔物に襲われたり病で家族を亡くしたりと、生きていくには厳しい状態の人達だ。

 最初はゴブリンに浚われて行き場の無くなった女性を保護していただけだったんだけど、いつの間にか規模が大きくなってしまった。

 でも今では三十人にも増えた子供達にお父さんと呼ばれるのは嬉しい。

 嬉しい余りにどんどんと子供を引き受けてしまったのだが、そろそろ何らかの別案を用意しないと皆に呆れられてしまうなぁ。でも、なんだろう、もっと増やしても僕は構わないという気になってしまう。

 あと百人位なら良いんじゃないだろうか? うん、これはリーヴァスに応相談だな。ラビエラには……怖いから止めておこう。



 取り合えず、優しくとも効果的な目覚ましのおかげで目覚めは上々だ。

 着替えてリビングに降りていくと三人のメイドが僕を迎えてくれる。

「「「おはよう御座います、ダーウェス様」」」

「おはよう、アイリスさん、サミーサ、クリア」

 四十を少し越えているだろうアイリスさんは、何となくここのメイド長の様な感じになっている様だ。

 聞けば若い頃にこの大森林に家族で逃れて来た様で、それまでもメイドとして勤めていたらしい。道理で堂に入ってると思った。

 出された朝食を食べるが、うん。

「美味しいね。このパンは?」

「ミリーの実家から届けられました。会心のデキだとか。本日朝早くに駆け込んで来たのですよ」

「はは。それは有り難いね。彼には?」

「昨日届いたマンモスバジークの肉を戦士団の方々にお運び頂くようお願い致しました。もちろん、集落の方々全員に行き渡る量を考慮させて頂きました」

「ありがとう、アイリスさん」

「畏れ入ります」

 笑顔を絶やさない彼女に礼を言い、目の前の空席に目を移す。

 今日はラビエラも居ないのだったね。

「明日にはお戻りになられますよ」

「う~ん……寂しそうに見えるかな?」

 だとしたら問題だ……うん? いや、単に恥ずかしいのか。

「それはわたくしには計りかねますが、何か物足りなさそうにはお見えですよ」

「そうかも知れないね。彼女とは、ずっと一緒だったから」

 最近は、毎日会うという訳にも行かなくなってきているしね。



 僕が北のヒュドラを倒してから早くも半年が経っていた。

 その間には色々な整備に追われ、なかなか次なる段階には進めても居ないのだけれど、というか、ある意味次の段階に移行したとも言えるのか。

 リュクトスと巨人族が北に移り住み、南の平原にはオーガとアマゾネスが居を構える事になった。

 中央の森にはエルフが住まい、僕は東のラクエルの里に居を構えているのだけれど、話はそれでは終わらなかったんだよね。

 この大森林には、その実結構な数の人間の集落が点在している事が、徐々に判明して来た。

 それは単独で存在していたり、僕等とは別の繋がりを以って集合体を形成していたりと、その数は意外に馬鹿にならない程だ。

 どの集落も厳しい大森林の中で過酷な暮らしを続けている。

 僕等としては、それら全てに声を掛け、出来得るなら全ての人達と共に在りたいと思ってた。少なくとも、僕の庇護下であるのならば身の安全は与えてあげる事は出来る。

 槍を片手に現れたとしても勝てない相手に脅えて警戒し続ける必要は無いのだから。

 森はエルフにとっては庭だ。

 エルフ達は次々と人間の集落を僕等に報せ、僕等は逐一使者を送り交流を図っている。

 ラビエラやガリル老が頻繁に里を空けるのはその為だ。

 彼女達の苦労のかいあって、次々と僕等に合流する人々は増えて来ている。

 エルフの集落も更に三つほどあったのだが、元々交流はあったらしいし、何よりこの大森林では最長老であるサリウが絶対的な権限を持っているらしく、何の問題も無く僕等と共に動いてくれている。

 あとは逸れオーガの集まりも四つほど見つかったが、これはなんだか大変そうだった。

 とにかく力を示す事が前提なんだから困ったものだ。取り合えず立ち合い、それから付き合いを考えるを繰り返しているのだから、なんとも疲れる連中だ。

 偶にアマゾネスも加わっているらしいから、まぁあそこは勝手にやって貰おう。

 アマゾネスに限っては他の集団は居ないとの事だ。彼女達は古くから習慣を護っていたらしい。僕が無理矢理止めさせたのを偶に嫌味として零されるが、あの娘達に死なれるくらいなら嫌味くらい何ダース言われても構わないさ。


 食事を終わらせ席を立つと、三人の子供が待ち構えていたかの様に飛び付いてきた。

「終わった~?」

「あぁ、終わったよ」

「遊びいこーお父さん!」

「わたし今日髪結った~」

「うん、とても可愛いよ。さて、何をして遊ぶかな?」

「畏れ入りますが」

 子供等に急かされていると、アイリスが笑みを浮かべている。

「リーヴァス様がダーウェス様にお話があると仰っていましたが、いかがいたしましょうか」

「リーヴァス殿が?」

「はい」

 う~ん。さて何だろうか?

 てか、この大森林の事は殆どリーヴァスに丸投げだからなぁ。

 これは、うん。最優先だ!

「分かった。このまま行くよ」

「畏ま……このまま? で御座いますか?」

「ん? そうだよ?」

 う~ん? なにも問題はあるまいさ。


「さ、それじゃあリーヴァス殿のところに一緒に行こうか」

「「「は~い!」」」


 僕は一人を肩車し、一人を右腕に乗せ、一人を左腕に乗せ、意気揚々と三階へと向かうのだった。


 いや、最優先では向かうけどね? 子供達は……まぁ別でしょう。



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