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第49話 魔島の終焉へ向けて


「…………ん…………」

「…………ス様……ダーウェス様……」

 意識の奥底から浮かび上がる僕を……呼んでいるのは……


「……おはよう、ラビエラ」

「っ……おはよう御座います、ダーウェス様」

 目覚めた僕に安堵している様子が見える。

 それほど長い時間が掛かったとも思えないのだけれど。

「僕は……何日位、寝ていたのかな?」

「今日で、十日(とおか)になります」

「十日、か」

 思ったよりも時間が掛かったらしい。言われてみれば疲労も有るか。

 今の僕がこれだけの疲労……やはり難題だったって事だろうけれど、まぁ上手く行ったとは思うんだ。

「カカカ。して?」

「リーヴァス殿?」

首尾(しゅび)は如何に」

 やっぱり気になる? て言うか、なんか分かってそうだけど。

「リーヴァス殿の睨んだ通りでしたよ。この島の濃い魔素の原因は地底の霊脈が乱れたが故でしたよ」

「ふむ。三つの大陸と二つの(きょく)。全てを巡る幾条(いくじょう)の霊脈、やはり歪んでおったか」

「しかし霊脈が乱れたとあれば世界中の魔素や精霊にも影響が出てもおかしくは無いのに。なぜこの島だけに影響が及んだのでしょうか」

 霊脈とはこの世界を巡る力の奔流(ほんりゅう)

 全ての魔素・霊力の源であるその力の流れを指す。

 霊脈よりの力を以って大地も草木も存在し、その恩恵により精霊も魔力も存在している。

 このワグナスの放つ魔素が濃過ぎるが故に、この島には魔素を力の源として存在する魔物が多く存在する。

 力も強く、数も多く、そしてより強力な魔物も産まれ、惹かれ、集う。

「どうやら本来霊脈は極で一度集約してまた散る筈だったんだけどね、それがズレてこの島の真下で集約してしまったらしい」

「カカカ。それで過剰に溢れたかよ」

「何故リーヴァス様はお気付きに?」

 最初に疑問に思ったのはリーヴァスだった。

「巫女がこの島に転移してきた(ゆえ)な。本来であればこれ程の距離を埋める事など出来ぬのさ。それを成す程の素地が此方になければのう」

「確かに、私も意外ではありましたが」

「意外で済ませたのかい?」

「ダーウェス様にお会い出来たのですから何も問題は御座いません」

「あぁ~、うん。そうだね」

 ラビエラあたりはそうなんだろうねぇ。

「カカカ。巫女らしい。で? ダーウェス殿」

「うん。なんとか霊脈は元に()()()()()()()よ。もうワグナスの魔素は他の地と変わらない。生態系も徐々に落ち着いていくと思うよ」

 無論、急にとはいかないし、全てが元通りともいかないだろう。

 この島の生態系はある程度固まってしまったからね。

 でも冗談みたいな進化や変化はもう起こらないだろうさ。

「まさか霊脈まで動かせるとはのぅ。ダーウェス殿、お主またぞろ神に喧嘩でも売らぬか? 良い勝負も出来ようて」

「ダーウェス様がお望みであればわたくしに異存は御座いません。この命いつでも剣として」

「待って待って! その積もりは無いと最初に言ったよね? ラビエラ。僕は以前の僕とは違う、とね」

「畏まりました」

 どこか嬉しそうにしてくれるのが、僕も嬉しいよ。

 リーヴァスは……微妙だね。ま、信頼はしているけど。

「時間は掛かったけど問題の一つは解決した。と、言うか解決した問題は一つしか無いんだけどね」

 僕の問題は山積みで、解決の目処すら立たないなあ。

 まぁ一歩づつ、って感じか。


「僕が眠っている間、問題は?」

「ありません。屋敷に住まう子供も彼女達も、皆穏やかに暮らせております」

「人間もアマゾネスも、皆問題は無いの。人的被害も今のところは……まぁ、多くは出とらん」

「少しは?」

「此の大森林において十日で三人。儂の知る数百年の中で最小の記録なのだがの」

「……それでも犠牲は犠牲だよ。丁重に弔ってくれ」

「カカ。抜かりはない」

 失った人達の冥福を祈りながら、自分の部屋に戻る。

「風の矢筒より報せが参りました」

「向こうは?」

「はい。巨人族の説得には成功した様です。明日にでも向かう事が可能です」

「そうか、ありがとう」

 

 まずは大森林を収める。

 亜人種を纏める事は取り合えず出来た。

 さて、次なる一手は人外か。

 タイタンの方から接触してきてくれたのは僥倖かな。


「南の巨神、か」

 果たして如何なる神の末裔か……楽しみでも、あるんだけどなぁ。

 


 ◇ ◇ ◇



 そして僕はラビエラとリーヴァスと共に南の平原へとやって来たのだけれど、僕等を見張る様にあちらこちらで巨人族の姿を目にする。

 実際に見ると身長は大体平均で十メートルってところか?

 確かに大きい。

 それなりに集落も構えていれば文化もある様だね。

 服装も整っているし武具も持っている。普通に()()()()()()()()と言っていい。

 それだけに、敵にするのは厄介なのだけれど。


「敵意は感じられませんが、あまり歓迎もされていない様です」

「カカ。こやつ等は神に仕える信徒よ。神の意が全て。止めが入っておれば何も仕掛けてはこんさ」

「触れる事叶う神が同じ地に立っているのだから、まぁ妄信も否定は出来ないさ」

 ただ知識として知る神様なんかより、余程信じられるのだろう。

 その為の説得なんだろうけど、一体何を説き伏せたのかが気に成るところだ。

「どうやら、お待ちかねみたいだね」


 視線の先には胡坐(あぐら)をかいて座っている巨神の姿が見て取れる。

 いや、流石に――


「大きいな」

「……はい」

「カカカ、これは壮観」


 その巨大さ、おそらく身長は五十メートルは下らないだろう。

 その身体は簡素な鎧に身を包んでいるが、あれは何だ?

 ただの金属でも無い感じ。

 どうやら本当に神の一柱とでも言うのかな?


 僕等が近付いていくと、どうやら湖の傍の草場で待って居る様だ。

 だが近付いて我々を待っていたのは――


「やあ! 待っていたよ空を堕とし魔王」

「……君は?」


 岩に腰掛け、いや、()()()()()()()()のは快活そうな男の子だ。

 まるで腰から下が岩と一体化している様な彼は、僕に笑顔を見せ言い放った。



「僕は巨神タイタンの一柱、ギガスのリュクトス。リュクトスで良いよ、よろしくね魔王」

「はは。僕もダーウェスと呼んで貰いたいな。よろしく、リュクトス」

「うん!」


 思っていたのとは些か違う出会いになったなぁ。

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