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第26話 アマゾネスの族長シェーラ


 そのアマゾネスの印象を一言で言うのならば、獣、だった。

 背は高い。

 僕よりも少しだけ低い、190位はあるだろう。

 アマゾネスという種族は皆そうなのか? と思う程、官能的な雰囲気と魅惑的なシルエット。

 服装は露出が高く、長乗な布帯を身体に巻き巡らせ、そこかしから褐色の肌が露わになっていた。

 だが何よりも僕の目を引くのが、その炎を思わせる真紅の赤髪と、真っ直ぐに僕を見据える金色の瞳。


 シェーラと名乗ったアマゾネスは、金色の瞳で僕を見詰めながら、その舌で小さく舌なめずりをして見せる。


「で? かの有名な東の隠者様があたし達になんの用さ? まさかそっちから一戦仕掛けようってんじゃないんだろ?」


 せっかくだからゆっくり話でもしようじゃないか、と言った彼女はそのままその場で座り込み酒を飲みだした。

 結局僕等も丘の上に腰を下ろす。

 まさか青空会談になるとは思わなかったなぁ。


「カカカ。用が有るのは我ではない。こちらの御方よ」

「御方?」

 ピクリ、とシェーラの眉が動く。

「エストリアから聞いてたけど、あんた本当に下に就いたのか……」

「カカ、相応の相手であれば是非も無かろうて」

「怖いねぇ。で? 死神を従えた化け物の名前を聞いてもいいかい」

 美しい獣の視線が僕を射抜く。


「ダーウェスといいます。シェーラ様、でよろしいでしょうか?」

「はっ! よしとくれ気色悪い。シェーラでいいよ。こっちもダーウェスと呼ぶ。それでいいかい?」

「勿論、構わないよ。シェーラ」

 一応、握手しようと手を差し出したのだが、あっさりと酒を優先されてしまった。

 ラビエラが腰を浮かせたが目で制して僕も座り直す。

「今後、僕がこの大森林の中の人間を纏めていく事になりました。今日はそのご挨拶に伺ったに過ぎませんよ」

「ほう? 人間をねぇ」

「はい」

 どこか挑戦的な視線だ。

「纏めてどうするんだい? わたし達と一戦やらかそうってのかい?」

「まさか」

 さっきから随分と一戦が好きな女性だ。

「いい加減にしてください。戦いが目的ならば私達がこの場に到着した時点で終了しているでしょう。積りが無いから今貴女は生きている。そんな事も分からないのですか?」

 いやラビエラ、いきなりそんなにキレなくても。

「釣れないねぇ。あんた等にとってはわたし等は相手にもならないって訳だ」

「貴方達はかつてリーヴァス様に大敗を喫したのでしょう。それを覆すだけの力を持ったのであれば別ですが?」

「言うねぇ、あんた……上等だ」

「私がご指名ですか? 構いませんよ、私はそれでも」

「く、くくく……くははははっは!」

 あ、駄目だこれ。

 一気に殺気が膨れ上がった。

「ちょちょっ! ちょっと待ってください。僕等は戦いに来たんじゃないんですから。ラビエラ、少し落ち着いて」

「しかしダーウェス様、この者の無礼、もはや看過出来ません」

「いやいや、無礼も何も彼女は僕の臣下でもなんでもない。一戦始める程の事もないよ」

「っ! お許しになると言われるのですかっ!?」

 許すも許さずも無い。

 そもそも怒る理由もないだろう。

「君の気持はとても嬉しい。でも過ぎた忠義は害にも成り得るという事も覚えておいて欲しい」

「……畏まりました」

「でも……ありがとう、ラビエラ」

「っ! はいっ!」


 僕等のやり取りに毒気を抜かれたのか、シェーラはつまらなそうに酒を煽った。

 不意にリーヴァスが口火を切る。

「それにしてもお主等がエルフを囲うとはの」

「意外かい? 東の」

「カカ、戦力を増やしてどうする? またぞろ馬鹿騒ぎでも始め様というか?」

 脳裏によぎるのはリーヴァスの言葉。

 勝てない戦いに挑むアマゾネスの話。

「リーヴァス殿に伺いました。貴女達アマゾネスは時折ワグナスの四恐に挑んでいると」

「ふん、別に今すぐどうこうしようってんじゃないさ」

 一度、酒を置く。

「五年後だ」

 その真っ直ぐな視線は誰からも何からも逃げない。

「あたしが頭を張って十五年目の年、あたし等は四恐に挑む!」

「カカ、再び我とまみえるか?」

「ふん、あんたとは前回やったからね、今度は違うのにするさ」

 違うの、というからには他の三つになるが?

「例えば北でしょうか?」

 そこにはヒュドラが居ると聞く。

 数多の頭を持つ大蛇だ。

「あいつは駄目だ、面白くない」

「面白く?」

 シェーラの基準は面白いかどうかなのか?

「あれは魔物というより魔獣だからな。意思の疎通も出来ない奴との戦いは愉しくないじゃないか」

「そうですか。では南?」

 タイタンとは巨人族の中の古代種と聞いた。

 であれば意思の疎通も出来るだろうが。

「あいつんとこは少し前にやったんだよ」

「ほ? お主等が大打撃を受けたとは聞いてはおらんが?」

「あそこは取り巻きが面倒臭くてね。巨人族がタイタンの足元で集落作ってんのさ。で、あいつ等とやり合ってる間にタイタンはどっかに行っちまう。タイタンが行けば連中も行く。あたし等と逆さ」

「逆?」

「あたし等は戦えればいい。で連中はタイタンと在れればいい。まぁ趣味が合わないのさ」

「そんなものか……ってじゃあ」

 一番無いと思っていた相手かよ。


「そうさ、五年後、あたし等が挑むのは」


 彼女は旨そうに酒をあおり、その尖った犬歯を剥き出しにして哄笑する。



「ドラゴン狩りさ」



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